【北九州市長選】保守分裂回避なるか
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来年2月投開票となる北九州市長選をめぐって、保守分裂の可能性が高まっている。同市長選は、元厚生労働官僚の武内和久氏が今年8月に立候補を表明。現職の北橋健治市長の動向が注目されたが、10月に不出馬を表明。同市出身で元国土交通省官僚の津森洋介氏が同市議会自民系会派や旧民主系会派が擁立するかたちで、出馬の意向を固めた。
自民党所属の福岡県議会議員・中尾正幸氏も、10月31日に正式に立候補を表明した。中尾氏は「自民党は分裂になるが、それでも私は出たい。県連は必ず私を推薦してくれると信じている」と語った。中尾氏は2003年の県議選で初当選。県議会議長や自民党県連政調会長などを歴任。現在、自民党県議団幹事長を務める。このほか、北九州青年会議所の理事を務める清水宏晃氏も出馬の意向を示している。
保守系の北九州市議の一部には武内氏を推す動きもあり、このままいけば事実上の保守分裂選挙となる公算だが、分裂回避に向けて水面下で一本化の動きが模索されている。先月31日、自民党福岡県連において、県連幹部と北九州市議団との話し合いがもたれた。
中尾氏と、津森氏を推す同会派の鷹木研一郎市議会議長との会談において、出馬辞退を求める鷹木氏に対し、中尾氏は「気持ちは変わらない」として平行線に終わった。過去2回の市長選においても中尾氏は出馬の意向をもっていたが、県連の意向もあり、現職を支援した経緯がある。北橋市長は1日の定例記者会見において「党派を超えてまとまる候補者がふさわしい」として、分裂選挙になった場合も、津森氏を応援することを表明している。
何とか分裂を避けるべく、今月3日県議団とには市議団との間で会談が行われたが、県議団、市議団共に譲らず。最終的に「保守分裂は避けるべきということで、2人を会わせる」(松尾統章県連幹事長)として、中尾県議と、津森氏が直接話す場を設定することとなった。
市長選まで時間はあるとはいえ、北九州市長選をめぐり、自民党内で意見が分かれているのはなぜか。自民党県連は、県連会長はじめとした県連の主要な役職を県議団が担っており、「福岡県は自分たちが担っている」という自負が強いこともあるだろう。国会議員も県議出身者から多数輩出してきたのも事実だ。
ただ、国政こそ自民党が長く政権を担っているものの、地方選挙では自民党単独で首長を擁立しても必ずしもうまくいくとは限らない。保守層のみならず、公明党や職員労組が加盟する連合系の支持が不可欠となる。まして政令市は、一般の地方自治体と比較して、県の関与する範囲が少ない。市議団にしてみれば、「北九州のことは俺たちが良くわかっている」ということだろう。
現職の北橋健治市長は、東京大学在学中にヨーロッパの社会民主主義を研究するサークルを設立。卒業後は民社党本部に勤務し、1986年に衆議院議員初当選。以来、民社党から新進党、民主改革連合を経て、98年に民主党が結成されると合流し、当選6回を重ねた。2007年の市長選で、民主・社民・国民新党の推薦を受けて無所属で出馬し、政権与党だった自民・公明推薦の元国土交通省官僚を破り当選している。北九州市長に非自民系の市長が誕生したのはじつに40年ぶりであった。
経歴からわかるように、北橋市長は、リベラルな野党系のイメージが強かったが、15年の市長選では一転して自民党の単独推薦を受けて当選している。この時も民主党や公明党、議員時代からの支持母体である連合の地方組織から支援を受けているが、自民党は麻生太郎元首相(現・副総裁)が「独自候補を立てるべき」と発破をかけていた。
それまでのイメージを変えてまで、自民党が北橋市長の単独推薦に舵を切ったのはなぜか。国政与党として、政令市の北九州市長が野党系の首長では与党の面子が立たない。もちろん、不戦敗も避けたい。しかし、首長選挙はオール与党体制で勝つことがほとんどで、市議会側もオール与党体制でまとまりたい……という事情を収めるための方便が、自民党単独推薦だった。北橋氏にしても、オール与党体制を組めば議会との対立も回避できる。互いにメリットがあったからこその判断だったと言えるだろう。
保守分裂となるとみられる北九州市長選だが、自民党内の勢力争いだけに留まらず、北九州市民にとって市政はいかにあるべきかを堂々と政策で競い合うべきだろう。
北九州市は、1963年2月10日に、門司・小倉・若松・戸畑・八幡というそれぞれ異なる個性をもつ5つの市が対等合併して誕生した。今も福岡市に次ぐ九州第2の都市ではあるが、79年の107万人をピークに人口減少がとまらない。
2004年にそれまで小倉北区に本社機能をおいていた読売新聞が福岡市に全面移転するなど、大手企業や国の機関が次々に北九州から離れていった。
決して明るい話ばかりでない北九州市だが、官営八幡製鐵所の操業開始以降、日本の近代化を支えてきた北九州市は、公害も克服し、環境のまちづくりの先端地となった。都市としての底力は依然として大きなものがある。
北九州市は、23年2月、市制施行から60年の節目を迎える。福岡市一極集中のなか、未来への展望をいかに描くのか。市長選はそれが問われることになる。
【近藤 将勝】
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