【東京五輪汚職】ADKHDの後任社長は電通出身、なぜ?(前)
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東京五輪・パラリンピック汚職事件で、電通元専務の高橋治之・大会組織委員会元理事は収賄で4度目の逮捕となった。贈賄で逮捕された広告大手のADKホールディグス(HD)の後任社長は、なんと電通出身者。「おやおや」である。
高橋元理事、4回目の逮捕
広告大手(株)ADKホールディングス(HD)は10月20日、東京五輪・パラリンピックをめぐる汚職事件で逮捕された社長の植野伸一容疑者(68)の退任を発表。後任には子会社(株)ADKマーケティング・ソリューションズ(MS)の大山俊哉社長(63)が就いた。
東京五輪・パラリンピック汚職事件で、東京地検特捜部は19日、ADKHDから約4,700万円、大会マスコットのぬいぐるみを販売した(株)サン・アローから約700万円の賄賂を受領したとして、受託容疑で(株)電通元専務の大会組織委員会元理事・高橋治之容疑者(78)を再逮捕した。逮捕は4回目。受領したとされる賄賂総額は約1億9,600万円に上る。
贈賄容疑でADKHDの植野伸一容疑者、同社元事業統括部長の久松茂治容疑者(63)、元部長補佐の多田俊明容疑者(60)の3人も逮捕した。逮捕を受けて、植野氏から取締役と代表取締役を辞任するとの申し出があった。
ADKHDの後任社長は電通からスカウトした人物
後任には、ADKHD子会社社長・大山俊哉氏が就任した。
大山氏は、早稲田大学理工学部卒、早稲田大学大学院(工学修士)修了。1984年に(株)電通に入社。同社ではプロモーション・プロデュース局長やダイレクトマーケティング・ビジネス局長を歴任し、2016年に新たに設立された(株)電通デジタルで初代最高経営責任者(CEO)となった。
大山氏はデジタル領域の知見を買われてヘッドハンティングされ、19年にADKHDに転じた。22年1月、ADKHDの傘下のADKマーケティング・ソリューションズ社長に就任。
大山氏をスカウトした植野社長が、東京五輪汚職で逮捕されたため、リリーフ投手として緊急登板することになった。
大手広告会社では異例のスカウト人事で招いた電通出身の大山氏が新社長に就いたことに、驚きの声が挙がる。東京五輪汚職でケチがついたとはいえ、広告業界に君臨する「電通パワー」を見せつけたのである。
アニメのアサツーとファッションのイチキが統合
ADKHDの歴史を振り返ってみよう。
1999年に業界3位の(株)旭通信社と業界7位の第一企画(株)が合併して(株)アサツーディ・ケイ(略称ADK)誕生した。Aは旭通信社、DKは第一企画のことだ。
第一企画は1951年の設立。ファッション業界に強い第一企画はファッション業界では「イチキ」と呼ばれていて、そのメインクライアントはシャネル(株)だったが、ADKになってもそれは受け継がれて現在に至っている。
旭通信社1956年の設立。創業者の(故)稲垣正夫氏は業界の有名人だ。「大手と同じことをしていてはダメだ」という方針のもと、子ども向け番組に特化。『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』など多くのアニメ作品の制作に携わり「アニメのアサツー」と呼ばれた。
「全員経営」を標榜し全社一丸の猛烈営業で急成長を遂げ、87年に広告会社として初めて株式を公開。旭通信社は98年英WPPと資本業務提携を結び、99年第一企画と合併。ADKを電通、(株)博報堂(現・(株)博報堂DYホールディングス)に次ぐ第3位の地位を盤石にした。
世界最大の広告会社の後ろ盾を得て攻勢に出ようとした矢先に、最大顧客の三菱自動車工業(株)を失った。リコール問題に揺れる三菱自動車は広告費を大幅に削減。ADKは01年主要広告会社から外された。ここからADKの苦難が始まる。
(つづく)
【森村 和男】
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