製品で「実用」先端、セミナーで「最」先端!(1)
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公立大学法人名桜大学名誉教授 清水 則之 氏
外国からバイヤーが38,550人来場した
6月2日から6日の5日間、台湾の首都台北で、開幕式に馬英九総統を迎え、「COMPUTEX Taipei 2015」が開催された。今年で35回を数える同ICT(Information and Communication Technology)国際見本市は、中華民国対外貿易発展協会(「TAITRA」)と台北市コンピュータ同業協会(「TCA」)の共催で行われ、世界第2位、アジア最大級の規模を誇る。1,702社が5,072の展示ブースを構え、来場者は13万人、165カ国から38,550人(TAITRA速報)のバイヤーが来場した。国別の内訳は、中国本土、日本、アメリカが上位3位で、それぞれ約4,000人、以下、香港、韓国、シンガポール、マレーシア、ドイツ、タイ、インドと続く。UAE、インドネシア、バングラデシュなどのイスラム圏からも来場した。
このイベントの特徴の1つは外国からのバイヤーの数の多さである。例えば、よく並び称される日本のCEATEC(Combined Exhibition of Advanced Technologies)の場合、2014年実績で、入場者は約15万人で、外国からの参加者は約2,000人(海外登録来場者)である。では、「COMPUTEX Taipei」がこれほど多くの外国からのバイヤーを集める魅力は何か。同国際見本市への参加が今年で20回を数え、定点観測も行っている沖縄の公立大学法人名桜大学名誉教授 清水則之氏に聞いた。
製品は自社の台湾工場で製造している
――台北ではお世話になりました。先生は、「COMPUTEX Taipei」に20回も参加されているのですね。最初のご縁はどんなことですか。
清水則之氏(以下、清水) 今回取材を受けるにあたり、数えたら20回になっていました。きっかけは、今から25年以上前の私がまだ日本IBMの基礎研究所に勤務していた頃に遡ります。私はネットワークの構築が専門です。当時、PCが出て来てからはとくにですが、コンピュータ関係の展示会で最先端情報を求めたいと思うと、ラスベガスで開催されていた「COMDEX」(Computer Dealer's Exhibition)Fallが最も有名でした。新しい製品は「COMDEX」で発表されることが多かったのです。そこで、私も毎年のようにラスベガスなどに出かけて情報を得ていました。他の業界を含めても最大級の見本市であったように思います。
ある時、新製品を展示していたアメリカの複数の企業の製品説明を聞いていた際に、どの企業も、製品の製造は自社の台湾工場で作っているという話をしていることに気づきました。この時「台湾企業というのはすごい!」と感じたのが台湾企業に興味を持つようになった最初です。
台湾から、流暢な日本語で返事がきた
その後、私は当時14.4Kの高速モデムが必要になり、日本ではもちろん売っていませんでしたので、アメリカの通信販売で購入しました。しかし、このモデムは、説明書通りにやっても上手く作動しなかったのです。そこでアメリカの販売先企業に問い合わせをしました。アメリカ企業の製品をアメリカに問い合わせをしたので、当然アメリカから返事がくると思っていました。ところが、しばらくすると、台湾から、しかも流暢な日本語で返事が来て大変に驚きました。結果的に、トラブルは解決、その回答をしてくれた技術者は日本人で、そのモデムの会社のコンサルタントだったのです。彼は現在では、台湾における私の親しい友人の1人となっています。思えば、この時が「台湾企業というのはすごい!」と私が感じた2度目で、それ以降私はかなり深く台湾企業に興味を持っていくことになります。後日談ですが、私の購入したモデムは偶々トラブルがありましたが、同社の製品はとてもレベルが高く、その後日本IBMのパソコン通信部門(people)でも大量購入していくことになります。当時アメリカ帰りの博士が創立した小さな会社だったのですが、今では立派なビルを持つ企業に成長しています。
その技術を会社ごと、買っていたのです
このことが縁で、そのコンサルタントの日本人と仲良くなり、色々と聞いているうちに、台湾で製造された製品のほとんどがアメリカに運ばれていることがわかりました。アメリカで発売される新製品がその半年前には台湾で完成しているのです。それは、当然のことで、アメリカの企業は、台湾の企業の製品を買うのではなく、その技術を会社ごと買っていたのです。会社と言っても、研究者とその仲間が創立した小規模なものですが、とにかくアメリカの大きな企業の台湾工場、台湾研究所になっていました。
ちょうど今、ソフトウェア業界では似たようなことが行われているのはご存じの通りです。IT関連の欧米の大企業は、ハードからソフトへ軸足を移していこうとしておりますが、
ソフトウェアそのものについては、ほとんど開発していません。ソフト会社を次から次へ買収することによって、その事業を成り立たせています。大企業においてさえ、現在では製品研究所的なものはなくなりつつあります。この台湾で私のモデムのトラブルを解決してくれた台湾在住の日本人コンサルタントが縁となり、私は毎年決まって6月には「「COMPUTEX Taipei」に行くことになります。
(つづく)
【金木 亮憲】
<プロフィール>
清水 則之(しみず のりゆき)
公立大学法人名桜大学名誉教授、エドノール・インスティチュート代表。早稲田大学理工学部卒業後、1971年日本アイ・ビー・エム株式会社入社。IBMシステムセンター、IBM東京基礎研究所、IBMヨーロッパネットワーク研究所(ハイデルベルグ)、IBMパロアルト研究所(シリコンバレー)に勤務。在社時代は主に汎用コンピュータ導入前テスト、ネットワークプロトコルの研究、金融系ネットワークシステムの構築などに従事。2003年から2011年まで名桜大学教授・国際学群長。研究分野はネットワークプロトコル、ディスタンスラーニング、医療情報学。情報処理学会シニア会員。
著者・訳書として、『グループウェア』、『インターネット電話ツールキット』など多数。関連キーワード
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