ギリシャの債務不履行、世界経済の行方は?(前)~韓国経済ウォッチ番外編
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
ギリシャ政府は6月29日、銀行からの預金流失を防ぐために、突然銀行を閉鎖した。その結果、1日に引き出せる現金は60ユーロまでとなり、市民の生活に一部混乱を招いている。銀行が閉鎖されたことで、銀行のATM(現金自動預け払い機)の前には、1日中、長蛇の列ができている。
さらにギリシャ政府は、30日にIMF(国際通貨基金)への2,000億ユーロの返済ができず、事実上の債務不履行に陥った。しかし、IMFでは、債務不履行という表現は使わず、延滞扱いになったと発表している。
IMFは、ギリシャが債務危機に陥った2010年と12年の2回にわたって、合計630億ユーロの資金をギリシャ政府に援助している。
今回の事実上の債務不履行の余波で、世界市場は動揺し、世界各地で株価は軒並み値を下げている。09年、ギリシャの財政赤字隠蔽に端を発するギリシャの債務危機は、EU(欧州連合)をも悩ませ続けてきた。なぜかというと、ギリシャの債務問題は、ギリシャだけの問題に終わらず、これが圏内の国々に飛び火する恐れがあるからだ。EU、ECB(欧州銀行)、IMFはギリシャの財政を立て直すために、巨額の資金を注ぎ込んだり、対策を立ててきたが、事態は一向に改善せず、むしろギリシャ国民生活はGDPが4分の1に縮小しているなど、悪化している。
今回は、ギリシャ債務危機の原因と推移、それからギリシャの債務問題が、今後、世界経済にどのような影響をおよぼすのかを考えてみたい。
債務問題はなぜ起こったのか
欧州単一通貨「ユーロ」は、1999年に導入され、紙幣やコインが発行されたのは、02年からである。
ユーロ導入の目的は、為替リスクをなくすこと、国境を越えた資金の流れを促進させること、競争促進による経済活性化と規模の経済の実現などである。
参加国は、財政赤字の単年度比率はGDPの3%以内に、それから累積債務残高はGDPの60%以内に抑える義務を負わされていた。ギリシャもこのような条件を呑んで欧州連合に加入することになる。ギリシャがユーロに加入する前は、国家の信用が低く、国債を発行する際、25%くらいの金利を払わないと国債を購入してもらえなかった。しかし、ユーロに加盟することにより、信用が高まり、3%の金利だけでもギリシャは国債が発行できるようになった。
低い金利で国債の発行が簡単にできるようになったギリシャは、世界中から投資を呼び集めることになる。豊富な資金は不動産のバブルを形成し、そのような状況は国の放漫な運営にもつながった。ところが、08年にリーマン・ショックに端を発した世界金融危機が発生し、その火種はヨーロッパにも飛び火する。
そのような状況のなかで、ギリシャでは政権交代が起こった。新しく政権についたパパンドレウ前首相は、財政赤字は3.7%ではなく、実際は12.5%であり、政府の債務が縮小されたことを明らかにする。これを受け、ギリシャ国債に対する信用が一気に落ち、ギリシャ国債は暴落し、債務危機に陥るようになった。
(つづく)
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