ギリシャ危機の打開策は?
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政治経済学者の植草一秀氏が7月6日、自身のブログとメールマガジンの記事で、ギリシャ財政危機をめぐって、EU(欧州連合)の財政緊縮策反対を示した国民投票に触れて、債権団とギリシャ政府の対立や債務問題解決の基本を解説した。NETIBでは、同記事の一部を抜粋して紹介する。
7月6日の日本時間午前8時から、FIFAワールドカップ女子サッカーの決勝戦がカナダのバンクーバーで行われ、日本は米国に5対2で敗れ、準優勝となった。
他方、ギリシャ国民投票で緊縮策受入れNOの結果が判明した。
週明けの日本は二つの大きなニュースに揺れ動いた。
ギリシャのチプラス政権は、IMF、EU、ECBの債権団(トロイカ)がギリシャに求めている財政緊縮策に対する賛否を国民投票にかけた。当初は、緊縮策への賛成が反対を上回るとの世論調査が優勢であったが、国民投票が近づくにつれて差が縮小し、実際の国民投票では反対が賛成を大幅に上回った。ギリシャに対する金融支援再開交渉が6月末で期限切れを迎えた。金融支援再開は決定されず、ギリシャのIMFへの返済は不履行の状況に留め置かれている。ギリシャ政府は交渉の大詰め段階で、7月5日の国民投票実施を決めた。債権団トロイカは金融支援継続を決めずに、国民投票期日を迎えた。
ギリシャのチプラス政権は、債権団の提示する緊縮策に合意できないと主張しており、ギリシャ国民に国民投票での反対を呼びかけた。賛成多数の結果が示された場合には、チプラス首相は辞任し、新しい政権が樹立されて、緊縮策を受け容れる可能性が高かったと考えられる。債権団はこちらのシナリオ実現を期待したと考えらえるが、結果はそうならなかった。6月30日付ブログ記事「ギリシャデフォルトリスク上昇責任は債権団にもある」にも記述したが、債権団とギリシャ政府との間には、経済政策運営に対する根本的な路線対立がある。
その対立を一言で表現すれば、「弱肉強食 対 共生」ということになるだろう。
チプラス首相は急進左派勢力SYRIZAの党首を務める40歳の人物である。チプラス政権は財政再建を実現するための手法として、法人課税の強化を提示しているが、これに対して債権団は、付加価値税の大幅引上げ、年金給付の削減、低所得者層への給付引下げ、を求めている。
経済政策の基本方向がまったく逆なのである。チプラス政権の目指す方向が「共生」であるのに対し、債権団の目指す方向は「弱肉強食」なのである。
また、債権団の提示する提案には、基本的に債務軽減が含まれていない。債務問題の解決のためには、常に、債権減免措置が必要である。資金の融通に際しては、第一に、「借り手責任」が問われなければならないが、これだけで問題は解決しない。「貸し手責任」の重要性も重視されるようになっている。「借りた方が悪い」だけではなく、「貸した方にも一定の責任がある」と考えるのが、債務問題解決のひとつの「鉄則」になっているのである。実際、3年前のギリシャ危機に際して、債権団は厳格な緊縮策をギリシャに求めた。ギリシャはこの緊縮策を忠実に履行したが、債権団が主張していたような経済成長は実現しなかった。
緊縮策は経済の悪化を招き、財政状況の一段の悪化を招く。
日本では、1997年度の経済政策、2000~2002年度の経済政策で、超緊縮財政政策を基軸とする、「改革」政策が強行実施されたが、この「改革」政策によって、財政赤字は激増した。1996年度に21.7兆円だった財政赤字は1999年度に37.5兆円に激増した。2001年度当初予算で28.3兆円に削減したはずの財政赤字が2002年度に35.0兆円に増加した。
経済成長を重視しない超緊縮財政は経済を悪化させ、税収を減少させて、財政赤字を逆に拡大させてしまうのである。
ギリシャの経済状況を踏まえれば、財政健全化を誘導する政策パッケージのなかに、一定の債務軽減策を盛り込むことが有効である。
1989年のメキシコ債務危機に際して採用されたブレイディ(米国財務長官)プラン以来、債務減免措置の積極活用が債務問題解決の基本に置かれてきた。
債権団がユーロの安定を守ることを最重視するのであれば、こうした対応策を念頭に入れる必要があると考えられる。※続きは、メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1186号「金融市場にとどまらないギリシャ危機の余波」で。
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