溶けて溶けてどこへ行くの? 我々には覚悟はあるか(9)~巨星堕ちる・ソロン田原学氏(1)
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【弔辞】何故ALSに苦しめられねばならなかったのか 田原学氏、神の仕打ちは非情なり
偉人の寂しい最後の旅立ち
偉人の寂しい悲報が伝わってきた。3月28日のことである。故人は不動産業界で一世を風靡した(株)ソロンの田原学氏である。遺族は密葬を終えた後も公的な発言を控えているが、亡くなられたのは3月の第二週、7日前後である。1940年2月生まれであるから、故人は77歳の人生を終えたことになる。
この6年間、徳洲会の創業者徳田虎雄氏と同じ不治の病と言われる「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」に苦しめられてきた田原学氏が、ついに逝去されたのだ。覚悟していたとはいえ、関係者たちは訃報の前におろおろと立ち往生するしか術がない。また一方では神の仕打ちに激しい怒りを覚える人々も多い。「何故!故人をここまで痛めつける必要があったのか」と天に叫びたい。大型団地開発の草分け
1998年ごろであっただろうか。田原社長から「長崎稲佐山の裏口で600戸のマンションを売りだす」と聞いてびっくり仰天した。この稲佐山の裏というのは、寂しい集落であることはよく承知していた。田原社長は「トンネルと迂回道路ができて、長崎市街中心部への交通の便が良くなる」という情報をキャッチしての事業決断であった。とても地元の人ではかなわない発想を持っていたのである。
この大型団地が完成して4年後、稲佐山に登って裏口を見下ろしたことがある。600戸の団地が威風堂々と立ち並ぶ、まさに壮観といえる眺めであった。この田原流大型団地開発は同業者へ多大なるインパクトを与え、模倣する業者も数多く現れた。ソロンの最高供給数が、年間600戸を超えることもあった。業界公職でも尽くす
マンション業界には当時、業界団体として一般法人九州住宅宅地経営協会があった(現・九州住宅産業協会)。田原社長はこの協会の理事長として一心不乱に業界のレベルアップに貢献した。その業績が認められて、1999年11月に黄綬褒章を授けられた。この1999年が田原氏にとって人生の絶頂であったのではないか。
2009年あたりから「腰が痛い」という話を聞いていた。「庭いじりで段差を確認できずに腰を痛めた」ということを、故人から直接聞いたこともある。この当時にはもう、ALSが発症していたのであろう。病気が悪化の道をたどり闘病生活に入って6年間、故人もご家族も大変な御苦労であったと思う。壮絶な闘いであっただろう。
遺族のお気持ちも理解できるが、せめてお別れ会を実行していただきたいものだ。故人とお別したいと念じている方々は1,000人をはるかに超えるであろう。田原学社長!安らかに旅立たれてください。合掌。律儀に面倒を見る親分肌の一面を持つ
「田原氏の訃報であれば必ず連絡してくれるはずの高橋利彰氏だが、いまだに音沙汰がない。おかしい」と高橋氏の近況を探ったところ、現在闘病生活を送っていることがわかった。
同氏は故人と同年齢に当たる。ソロンで長い間、常務を担当して渉外・トラブル解決役をこなしてきた。高橋氏は福岡県警の出世頭であったが、40代になった矢先に退職した。就職先に苦労していた矢先に故人と知り合いソロンに入社の運びとなった。
高橋氏は筆者に会う度に「田原社長には一生かけて恩返しする」と強調していたが、これは口先ではなく、一心不乱に恩返しのための行動を繰り返していたのが印象的だ。後で触れるザ・クイーンズヒルゴルフクラブのゴルフ場会員権返還延長交渉でも、先頭に立って頭を下げて回っていたことを鮮明に記憶している。高橋氏の例だけではない。田原氏の親分肌に恩義を感じて立ち回りをしてくれる数多くの人たちの存在を知って、あらためて驚いたものだ。
<解説>田原学氏・徳田虎雄氏が侵された病気「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」とは
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、手足やのど、舌など人間が活動するために必要な筋肉がやせ衰えて力を失っていく病気である。よく知られている筋ジストロフィー症候群が筋肉そのものが障害される病気であるのに対し、ALSは筋肉を動かすための指令を送り、運動をつかさどる神経の病気。脳からの信号がうまく伝わらなくなることで運動に障害が起き、運動に使われなくなった筋肉がだんだんやせ細っていく。その一方で、触覚や味覚、視力や聴力などはすべて保たれたままである。
患者数
10万人あたり1~2.5人が、毎年新たにALSを発症するといわれている。平成25年度の特定疾患医療受給者数によれば、およそ9,000人がALSの患者である。発症するのは、50~70代前半が多いとされている。最多なのは65~69歳で、この傾向は日本でも欧米諸国でも同じである。男女比は男性1.5:女性1.0。日常生活で肉体的運動をしているかどうかにはかかわりなく、生活環境とは無関係に発症する。
原因
現在の医学では、原因ははっきりしていない。学説としては、アミノ酸代謝の異常、自己免疫疾患などいくつかの説がある。家族内発症した患者の一部には遺伝子異常がみられるが、これが原因とは断定されていない。
症状
およそ3/4の患者が、手足の動きに異常を覚えて来院し、診断を受けている。食事中に箸を使っていて気づく、重いものを持てなくなる、走りにくい、疲れやすいなどの運動面での自覚症状や、疲れやすい、手足の腫れ、筋肉の痛みやけいれんなどの筋肉のトラブルなどから発覚することも多い。これらの症状は、ALSに特徴的な運動障害の初期症状である。症状の進行とともに、手足の筋肉が痩せ始めていく。のどや舌の筋肉が弱まると、球麻痺の症状を興し、嚥下障害や発語障害を引き起こす。命にかかわるのはもちろん、生活の質(QOL)をも侵害する恐ろしい病気である。
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