脊振の自然に魅せられて2015(6)
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「脊振の自然を愛する会」(福岡市早良区)の池田友行代表は、背振の環境保全活動を行ないながら、美しい自然の数々をカメラに収め、写真集「脊振賛歌」を発行した。当連載ではフォトエッセイとして、背振の魅力を紹介する。ペンネームは「やまぼうし」。
撮影よもやま話(2) 昆虫や動物との出合い
テン夫婦との出合い
もう随分前になりますが、脊振山系へ脚を踏み入れるのはマニア(山屋)ぐらいしかいない頃になるでしょうか。
椎原バス停手前の湯の野から、小爪峠のルートへよく撮影に行きました。
林道開発も無く本当に自然豊かな渓谷沿いの登山道で、春にはヤブツバキやミツバツツジ、ワサビの花が咲く素敵な場所でした。きれいな小滝もあり、そこにヤブツバキの落花が見られ、スローシャターで何度も撮影をしたポイントも有ります。
早春だったと思いますが、一人で撮影に入り、山路を歩いているトコトコと小さな足音が聞こえました。振り向くと、2匹の真っ白な動物でした、胴体と尻尾の長さが同じくらいで、2匹は止まって私を見つめていました。『何しようと』とでも言いたげでした。私も2匹を見つめて『何しようと』と目で挨拶しました。その時間は10秒くらいでしたでしょうか。実に可愛い顔をしていました。その内、この2匹は『なんだ、撮影か』と納得して、山路を登って行きました。多分、テンの夫婦だったのでしょう。カメラを取り出す時間もない瞬間でした。脊振の自然に触れられた、すばらしい動物との出合いでした。猪家族との出合い
場所は脊振では有りませんが、20年前に広島に単身赴任の折り、春にカタクリの花の咲く冠山へよく出かけました。一人で山道を歩いていると20m先の笹薮の中にガサガサと音がしました。出たなー、猪の家族でした。母親が数匹の子供を連れていました。ここでも私と猪は見つめ遇いました。お互いにジーと見つめ遇った時間は20秒ほどでしたでしょうか。猪の母親は私を敵ではないと判ると、スーと家族と共に笹薮の中へ姿を消しました。
猪への恐怖は感じませんでした。廻りにはエンレイソウが咲いている静かな登山道での出合いでした。オオスズメバチとの遭遇
瑞梅寺の山小屋近くを歩いていた時だったと思いますが、ブーンと大きな羽音がして私の耳の直ぐそばを蜂が羽ばたいていました。日本で最大の凶暴なオオスメバチです。大きさは人差し指くらい有るでしょうか。蜂はしばらく私を観察していました。そのうち敵ではないと判ると蜂は去って行きました。この時、蜂を払うでもしたら敵と見なして仲間を呼びに行き集中攻撃をされていたでしょう。
数年前、ワンゲルの先輩Tさんが飯盛山周辺でスズメバチの巣の近くを歩いて太ももを刺されて象の脚みたいに腫れたそうで、その後同じ場所を歩いて2度も刺されたと言う事です。当然、医者で手当をしてとは思いますが。
まず、大騒ぎをして蜂を興奮させないこと、秋口には繁殖のため巣づくりが活発になるので、蜂が飛んでいる場所には近づかないことです。マムシとの遭遇
野河内渓谷に三脚を担いで撮影に入った夏のことです。沢が深くなり、泳がないとならない場所に来ました。濡らしてはならないカメラ機材をザックに入れています。薮漕ぎをし、高巻きをして、渕をやり過ごそうとピークに出た瞬間、シューと音がしました。見たらマムシが鎌首を上げて戦闘状態で私を威嚇し、開いた口から舌をペロペロとさせて鎌首を30㎝ほど持ち上げていました。尻尾は映画でみるガラガラ蛇の様に盛んに動かして音がしていました。完全に戦闘状態で私を威嚇していました。マムシも思わぬ出合いにビックリしたのだと思います。私は『あっちへ行けー』と思わず声を発しましたが、マムシには聞こえるはずが有りません。私はそこらにある木の枝で追い払いました。マムシは諦めて鎌首を降ろして消えて行きました。あー、ビックリした。
だけど、その後、素敵な出合いが待っていました。暗い林の中で一部だけ陽が当たっている場所がありました。まさにスポットライトです、そのスポットライトに照らされて大きなナナフシが大人しく止まっていました。子供の時以来の出合いでした。もちろん、撮影に時間を掛けたのは言うでも有りません。
鷹との出合い
夏に、脊振山頂駐車場から蛤岳へ歩いていた時でした。蛤岳近くになると、杉林が続く場所があります。杉は間伐しないままで痩せていますが、木もれ陽がとてもきれいな場所です。突然、鳥がバタバタと羽を広げて降りて来ました。
雉子かと思って見ていましたが、羽でも傷ついたのか、羽を広げてまま、私の10m先をグルグル廻っているのです。ハト程の大きさで、茶色の鳥でした。
両方の羽をいっぱいに広げ自身を大きく魅せて、どうも私を威嚇しているようでした。近くに雛を育てているのでしょうか。鳥が間近に来た時にポケットから小型のデジカメを取り出し何とか撮影しました。母鳥は必死に我が子を守ろうとしていたのでした。母鳥が安心したのか立ち去ったあと、雄が枝にスーと飛んで来ました。一応、私を確認したかったのでしょう。
帰宅して画像を確認すると嘴が鷲類に似ていました(ブレてはいましたが)。
母親の強さを知る事ができた数分間でした。
近頃の親が子供を殺める事件の多さをみると、動物たちを見習いたいものです。【やまぼうし】
<池田友行氏プロフィール>
福岡市早良区在住。1944年3月生まれ
西南学院大学ワンダーフォーゲル部OB。ソニーマーケティング(株)退職後、2008年より早良区と共働で、脊振山系道標設事業や脊振清掃登山に取り組み、中心的役割を果たす。
福岡市早良区の野河内渓谷整備に従事中。
「脊振の自然を愛する会」代表
早良区役所主宰の『早良みなみ塾』自然環境分科会代表
写真集『脊振讃歌』著者―やまぼうし関連記事
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