白紙撤回に追い込まれる東京五輪エンブレム
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NETIB NEWSでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介している。8月16日のブログでは、メディアがあまり取り上げない話題だと「勘違いされている」東京五輪エンブレム問題について論じている。メディアが取り上げないのではなく、政府が取り上げないのだ。
安倍政権が窮地に追い込まれ、メディアに対する締め付けを強化していると推察される。安倍政権は戦争法案を強行制定しようと、90日に及ぶ国会の会期延長を強行したのだから、休みなく精力的に活動しなければならない局面だ。
「集団的自衛権行使は憲法上許されない」とする政府見解が明示されて40年以上の時間が経過する。「法の安定性」を重視するなら、憲法改定なくし得集団的自衛権行使を容認することはできないはずである。そのできないはずのことを、安倍政権は押し通そうとしている。
敗戦から70年。戦争の記憶が風化されるなかで、戦争を推進する法制制定が強行されようとしている。
安倍晋三氏は、70年談話で「二度と戦争の惨禍を繰り返してはならない。事変、侵略、戦争。いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段としては、もう二度と用いてはならない」と述べた。
この発言が真意であるなら、戦争法案は完全なる矛盾である。法案を撤回するべきだ。
首相談話後の世論調査で支持率が上昇したというのは、真実であるかどうか疑わしい。安倍政権が政権末期の状況に陥るのを回避するために、人為的な操作を加えている可能性が高いと思われる。このなかで、速やかに対応策を示さなければならないのが、東京五輪エンブレム問題である。エンブレムデザインの考案者である佐野研二郎氏の作品について、数多くの疑惑が浮上している。
サントリーのトートバックデザインに採用された佐野研二郎氏の作品が「盗用」で取り下げられた。佐野氏の事務所は、スタッフが他人の作品をトレース=盗用したと説明しているが、責任転嫁も甚だしい。
食品の産地偽装が問題になったとして、「社員が偽装産地を表示していた」が正当な理由として通るわけがないのと同じである。他の作品での盗用が明白になり、当該エンブレムについても盗用との訴訟が提起されている現状を踏まえれば、エンブレムデザインの白紙撤回は免れない情勢である。国立競技場のデザイン差し替えについては、報道が拡大し、白紙撤回となったが、エンブレム問題については、メディア報道があまりなされていない。
私たちは、ものごとの因果関係を見誤る。「メディアの報道が大きくなって事態が動く」と判断してしまいやすい。エンブレム問題は、いまのところメディアの報道が大きくなっていない。だから、事態が動かないのではないか、と推察してしまう。ところが、真実の因果関係は違う。権力が国立競技場デザインの白紙撤回を決定することになったからメディア報道が拡大したのだ。
権力が方針を決定して、その決定に合うように報道が展開されているのである。
安保法制の強行採決の方針があった。これに対する世論の批判を和らげるために国立競技場デザインの白紙撤回が決定された。
これに合わせて、メディアが国立競技場問題を盛り上げたのである。そして、安保法制に向かう批判を和らげると同時に分散したのだ。
国立競技場に続き、エンブレムも撤回に追い込まれることは、安倍政権の大打撃である。文科相等の責任問題も免れなくなる。安倍政権支持率にもさらにマイナスの影響が生じるだろう。
このことから、安倍政権はエンブレムを変更せずに、押し通す方針を堅持している。
このために、エンブレム問題の報道が抑制されているのだ。ネットを通じる情報波及に大きな影響を与えるのが、いわゆるポータルサイトと呼ばれる、情報系のサイトである。グーグルやヤフーのポータルサイトがニュースとして、どのような取り扱いをするのかが極めて大きな役割を果たす。こうしたサイトに対する政治権力の影響力が増大していると推察されるのだ。
こうしたサイトにおいて、どのような序列でニュースを紹介するか。同種のニュースのなかで、どの記事を活字としてトップに掲げるか。
そこには「人為」の判断が働く。
ここに一種の「圧力」を加えることによって、情報空間における、各ニュースの取扱いを「操作」することが可能になる。五輪エンブレム問題に対するメディアの取扱いが小さいのは、安倍政権がまだ、エンブレム撤回の方針を固めていないからであると推察される。
※続きはメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1220号「白紙撤回に追い込まれる東京五輪エンブレム」で。
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