DHC買収と、唐津の名門ホテルに見る戦前日本のインバウンド対応(前)
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日本入国時の水際対策や、国内での行動制限も少しずつ緩和され、観光業の活気が少しずつ戻りつつある。そんな中、オリックスによるDHC買収は、佐賀県唐津市の観光業にも影響を与えることになるかもしれない。また、日本のインバウンド対応の歴史の一端がそこにはあった。
DHC傘下の唐津シーサイドホテル
オリックス(株)が化粧品や健康食品の販売を手がける(株)ディーエイチシー(以下、DHC)を事業承継のかたちで買収することを発表した。創業者で同社代表の吉田嘉明氏から株式を譲り受けて同社を子会社化する。買収総額は3,000億円程度に上る見通しだ。
吉田嘉明氏は佐賀県唐津市の出身であるが、それとは別に唐津市には、この買収劇により今後の展開が注目されるものがある。名門ホテルの唐津シーサイドホテルである。
唐津シーサイドホテルは、2015年にDHCが昭和グループ(福岡市中央区)から買収したものだ。買収後DHCはホテルのリニューアルを進め、まずは西館(全44室)を改修、温泉(深度1,300m、ナトリウム塩化物強塩泉、37.3度)を掘削し、さらに老朽化した東館を解体して、19年12月に新築オープン(地上8階、地下1階、全95室)した。エントランスは正面を砂浜まで吹き抜けにし、3階まである円柱が天井を支えて前面をガラス張りにするなど高級感のあるつくりである。1泊35万円を超える194m2の最上級スイートルームも話題になった。
しかし、高級リゾートを打ち出した目玉の東館オープンの直後に、新型コロナウイルスの大流行に見舞われた。また、DHCが買収してまもなく、改修された西館1階にDHC直営店が開設されたが、唐津焼ギャラリーがなくなるなど、地域性の喪失を惜しむ声も聞かれていた。
DHCはさらに17年からは、唐津シーサイドホテルに隣接する国民宿舎「虹の松原ホテル」(現在は休業中)の指定管理者にもなっていた。しかし、これは突然の指定管理者交代で、運営の準備不足は明らかだった。唐津市が公開している指定管理者の評価シートを見ると、16年度まで順調に利用者数を伸ばしていたものが、買収初年度の利用者実績は前年度の60%程度まで落ち込んでいる。続く18、19年度も宿泊者数は買収直前比で90%程度、飲食店利用者数は80%弱にとどまっていた。
今回の買収でDHCがオリックスグループに入るとなると、同グループでホテル運営を手がけるオリックス・ホテルマネジメント(株)との連携が予想される。インバウンド再到来において唐津観光の振興にどのような動きを見せるのか期待したいところだ。
ところで、唐津シーサイドホテルの歴史をひも解くと、戦前日本のインバウンド対応の歴史が垣間見えたので紹介したい。
(つづく)
【寺村 朋輝】
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