2024年07月17日( 水 )

自転車で探る福岡の魅力~約30年の首都圏居住経験者が見る福岡(2)

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 福岡のことをよく知らない──。

 30年以上を首都圏で過ごし、福岡に戻ってきた筆者にとって、このことは深い悩みであり弱みである。だから帰郷以来、ヒマを見つけては自転車(クロスバイク)に跨がり、福岡市内とその周辺各地をめぐるようにしてきた。あくまで県内の限られたエリアだが、以下ではそのなかで「これは!」と心を揺さぶられた場所をいくつか紹介しながら、感じたことを述べてみる。

火山(ひやま)から見た幣の浜 イメージ    まずは糸島市(糸島半島)の西部にある「火山」(高さ244m)。念のためだが、「かざん」ではなく「ひやま」と読む。頂上は自転車でたどり着くことができ、そこには展望台が設けられている。標高は低いが、「白砂青松100選」に選定されている「幣の浜」(にぎのはま)などを一望できる眺望で、頂上付近にはパラグライダー専用離陸場が設けられている。筆者が訪れた時も、そこからパラグライダーが飛び立つ様子を間近に見ることができた。筆者自身は強度の高所恐怖症であるため決してチャレンジしたいとは思わないが、天神から約22kmで自転車であれば約2時間、クルマであれば1時間弱で到着するという身近な場所にこうした特殊なレジャーを楽しめる場所があることに強い驚きを感じた。

 次は玄界島。周囲4kmの1時間半もあれば徒歩で一周することがきる小さな島である。博多湾の入り口に位置し、福岡市中心部や能古島、志賀島などを見渡せる。玄界島やその北側にある柱島には、新生代新第三紀(300~370万年前)の火山活動により噴出した玄武岩の柱状節理があり、島の成り立ちを目の当たりできる興味深いスポットがある。ベイサイドプレイス博多埠頭からフェリーで片道35分というアクセスのしやすい島でありながら、地球環境のダイナミックな営みを想像できる光景が広がっていることに、筆者は感動を覚えた。なお、この島は釣りがお好きな方には知名度が高いようだが、そうでなければ福岡在住者であっても馴染みが薄いようだ。もっと注目されてよいように感じられる。

 福岡市だけを見てもこのほか、志賀島、能古島、小呂島などフェリーで気軽に渡れる島がある。フェリーに自転車を載せて移動することにより、それぞれの名所をとても効率よく動くことも可能だ。これら各島々へのアクセスの良さも、首都圏など大都市にはない福岡の特色の1つと言えるのではないだろうか。

 余談になるが、筆者は「山シリーズ」、「島シリーズ」、「ダムシリーズ」などと勝手にカテゴリーを分けてFacebookで写真などを公開している。そのなかには「ダムシリーズ」というものもある。例えば、那珂川市にある「五ケ山ダム」(2018年竣工)は、その規模の大きさを含め、周辺自治体が治水対策にいかに頭を悩ませてきたかを確認できる。1970年代、小学生のころだったと記憶しているが、夏場の渇水でしばらくお風呂に入ることができないほど節水を強いられたことがある。現在はそうした状況が回避できるようになっているようだが、その理由をダムめぐりで理解できた。やはり、現地に足を運ぶことは何より大切だ。

 Googleマップによると福岡市の周辺には10カ所以上のダムがある。これほどの数のダムが市街地周辺部の近くに点在していることも、日本の大都市のなかでは珍しいことではないか。また、当然ながらダムは山のなかにあり、その周辺には森が広がっている。クワガタムシなどの昆虫はもちろんのこと、アナグマのような比較的大きな野生動物に遭遇するなど、ワイルドな体験をすることもできた。

 ところで、福岡市とその周辺部は中心市街地を抜けると、自転車乗りにはとても快適な道路環境が続いている。それも福岡の魅力の1つだと筆者は感じている。なかでも、海の中道から志賀島、糸島半島などは専用レーンが設けられており特に快適で、自転車乗りたちからの知名度が高いようだ。ただ、筆者の経験から難点を少しだけ指摘すると、市街地から遠出すればするほど、パンクなどのトラブル発生時に苦労するということがある。実はこれまでに、トラブルで自転車を押しながら10kmほど歩くなどという、それこそ途方に暮れざるを得ない出来事を経験した。これは、市街地が延々と広がっている首都圏などではないことだ。勝手なことを言うようで恐縮だが、自転車店を含めトラブル対応ができる施設が整備されるようだとより快適性が増すに違いない。

 自転車での移動は何より環境に優しい上、体力強化にも役立つ。実は30年ぶりくらいに本格的に自転車に乗るようになった「にわかチャリダー」に過ぎない筆者だが、コロナ禍の収束状況を見ながら、機会があれば自転車で福岡県内、さらには九州各地へとより広範囲に足を運びたいと考えている。

(つづく)

【住生活ジャーナリスト/田中直輝】

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