2024年11月30日( 土 )

呆れる4人目の閣僚交代~秋葉復興相と杉田政務官更迭へ

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免れない首相の任命責任

 岸田文雄首相は、「政治とカネ」の疑惑を抱える秋葉賢也復興大臣を交代させる方針を固め、27日午後、秋葉氏は岸田首相と面会し、辞表を提出した。事実上の更迭である。後任に渡辺博道元復興大臣を起用する。

 岸田首相は、26日午前中の時点では「今いえるのは、通常国会に向けてしっかり準備を進めていかなければならない」とコメントしていたが、野党側は来年1月召集の通常国会でも追及を続ける構えで、このままでは乗り切れないと与党内からも交代論が強まっていた。

 10日に会期を終えた臨時国会では、秋葉氏は同氏の関連政治団体『秋葉けんや後援会』が、仙台市にある事務所の賃料として母親や妻に約1,400万円を支払っていたことや、昨年10月の衆院選において報酬を公設秘書2人に支払っていたことは公職選挙法違反にあたるという指摘を受け、さらには旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との関係も取りざたされていた。

 秋葉前復興相は、今月24日の地元紙「河北新報」のインタビューのなかで「人事は私が決めることではない。辞任を考えたことも一切ない。個人として違法行為はしていない。来年1月に開会する通常国会で追及されようとも、自信をもって説明する。」として辞任を否定していた。

 また、杉田水脈総務大臣政務官は、同27日午後辞表を提出した。政務官就任前の差別発言が原因で、こちらも事実上の更迭だ。これまで岸田首相は、杉田氏を起用したことについて「職責をはたすだけの能力をもった人物と判断した」と正当化していたが、任命権者としての見識が問われるかたちになる。

 杉田氏をめぐっては、2018年、LGBTQなどの性的少数者について「生産性がない」とする持論を月刊「新潮45」(現在は休刊)に寄稿し批判を浴びたが、撤回しないまま政務官に就任。ようやく謝罪・撤回したのは今月2日の参議院予算委員会であった。また16年には、ジュネーブで開催された国連女性差別撤廃委員会に出席した際「チマチョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場。完全に品格に問題があります」といった記述をウエブサイトに掲載していた。この他「女性はうそをつく」と発言するなど、たびたび物議を醸した。

共通する旧統一教会との接点

 秋葉氏と杉田氏の両者に共通するのは、(1)選挙区での当選ではない点、(2)旧統一教会関連団体との接点にある。

 秋葉氏は宮城県議会議員を経て、05年の宮城5区補欠選挙で初当選した。以来当選回数は7回を数えるが、21年10月の衆院選では立憲民主党の蒲田さゆり氏に571票差で敗れ、比例復活した。復興担当大臣への就任には、被災地選出ということもあり地元宮城県からの期待もあっただけに、政治不信を一層強める結果となった。

 秋葉氏と旧統一教会との接点は、8月の就任時点では「ない」と答えていたが、その後、教団の関連団体、世界平和連合や平和大使協議会への新聞購読料や会費名目の支出が明らかになった。また、関連団体のイベントに出席し挨拶した疑惑も指摘されている。

 杉田氏は西宮市役所職員を経て、12年12月の衆院選で兵庫6区に日本維新の会公認で立候補。小選挙区では落選となったものの、比例近畿ブロックで初当選した。14年の日本維新の会分党で結成された次世代の党に参加し、同年12月の衆院選では、最下位で落選。その後は前出の国連人権委員会の小委員会にあたる女性差別撤廃委員会に、保守系民間団体などとともに参加し、慰安婦問題などについてスピーチを行い、著述活動や講演などを行っていた。17年9月の衆院選で当時の安倍晋三首相(自民党総裁)が杉田氏の公認を強く推したことで比例中国ブロックの名簿に登場。比例単独候補としては最上位で優遇され、2期目の当選をはたした。当選後の所属派閥は細田派。安倍氏の推挙もあり、自民党山口県連に所属することとなった。昨年10月の衆院選で3期目の当選を果たし、総務大臣政務官に就任した。

 杉田氏と旧統一教会との関係については、本人は否定している。だが19年4月、旧統一教会の関連団体「熊本ピュアフォーラム」が、杉田氏の講演とパネルディスカッションを、同県益城町で開催した。同フォーラムの事務局長は、国際勝共連合熊本県本部代表を務めている人物。杉田氏は、熊本でのイベントについてツイッターで報告している。また同じく19年、旧統一教会の支援を受けて当選した北村経夫参議院議員(山口県選挙区)の選挙支援で、教団関係者が仕切っていたさいたま市での個人演説会に下村博文元文科相らと登壇し、応援演説を行っていた。

 わずか2カ月で4人目の閣僚交代。そして、過去の差別的言動で政務三役の一角である大臣政務官が更迭されるとは、まさに異常事態である。また両名共に旧統一教会との接点が指摘されていたことは、自民党と教団との根深い関係がうかがわれる。

選挙制度を見直すべき

 見逃してはいけないのは、秋葉氏も杉田氏も比例当選である点だ。選挙区で敗れても復活当選できるからこそ、政治家にとっては安心できるのだろうが、国民のことより自分の立場を優先してしまうことになるのではないか。

 秋葉氏はともかく、杉田氏は、選挙区では一度も当選したことがない。しかし、比例のみで3回当選だろうと代議士である。選挙区では勝てずとも、支持してくれる団体や支持層に受ける言動をしていれば、議員になれる。ここに問題の根本がある。もちろん、岸田首相の任命責任は免れないが、現行の選挙の仕組み自体を見直す時期がきているのではないだろうか。

【近藤 将勝】

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