2024年11月23日( 土 )

【企業研究】上場廃止を選択、FC死守へ正念場~プレナス

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(株)プレナス

 (株)プレナスが上場を廃止する。直営店削減で大鉈を振るった「ほっともっと」の復調でV字回復をはたすも、「やよい軒」など飲食部門が振るわない。中長期での競争力向上を目指すが、コスト増対策や人手不足、競合激化などに晒される。FCチェーンをつなぎ止められるか結果が問われる。

弁当事業で復調も飲食・海外事業で苦戦

 (株)プレナスの主力「ほっともっと」が全国に張りめぐらせる店舗数は2,472店舗(2022年8月末時点)。弁当・総菜販売など中食業界においては2位のカネ美食品(株)の2倍を売り上げる。それでもコロナ前に苦境に晒された。19年2月期には増収を遂げながらも5億100万円の営業赤字に沈んだ。粗利率が前年比3.2%低下したことに加え、人件費など販管費が増加した。

 FCへの移管が見込めない店舗の退店を加速。6億9,100万円だった固定資産の減損損失を一気に24億9,000万円計上し最終損益も大幅な赤字となった。20年2月期に閉鎖した直営店は190店舗に上り、21年2月期までの3年間で計上した固定資産の減損処理は累計で86億8,100万円に上った。これにともない最終赤字も累計84億円超となった。この間、粗利率改善を進める一方で経費削減を実施。22年2月期には前年比4.5倍の営業利益40億5,300万円を叩き出した。同年期には過去3期なみの減損処理29億8,000万円を実施してなお22億2,700万円の最終利益を確保した。業態別の「ほっともっと」に限れば約70億円の部門利益を出している。

要約貸借対照表

既往の業績

 しかし、定食・丼物の「やよい軒」が23億円の赤字、しゃぶしゃぶ店の「MKレストラン」、海外事業も赤字でグループの利益を押し下げられた。「やよい軒」の店舗数は19年2月の377から、22年8月には366に減少。MKレストランも同月段階で25店舗にとどまっており店舗展開が止まっている。コロナ禍があったとはいえ「ほっともっと」依存の構図となっている。

 ただし、海外事業には伸びしろを見出しており22年6月、海外事業本部を新設。店舗展開に本腰を入れる姿勢を示している。同社は06年のタイへの「やよい軒」の出店以来、シンガポール、オーストラリアなど進出エリアを広げてきた。とりわけタイの「やよい軒」は19年2月に187だった店舗数をコロナ後も増やし続け、22年8月には195店舗まで拡大。23年2月には200店舗を超える見込みとなっている。

店舗数推移

上場廃止でFCオーナー、従業員の支持得られるか

セグメント別売上構成比

    不採算店閉鎖により反転攻勢への準備を整えた22年、同社は上場廃止を選択した。創業家によるMBOを終えており今月にも上場廃止となる。投資ファンドら物いう株主の存在感が強まるなか、大株主のオーナー家でも排除される例もあるが、同社は目先の利益を犠牲にしてでも戦える組織改革に乗り出した。

 全国統一の店舗開発からエリアごとのマーケティングやドミナント戦略を打ち出す構えだが、求められるのはより魅力あるFCづくりだ。同社では直営店のFC化を進め、マーケティングや運営ノウハウ提供に集中する方針を打ってきた。18年2月に全体の約3割にあたる920店舗に上っていた直営店は22年8月に572店舗まで削減している。極論すればビジネスモデルを支える1,900店のFC店を守ることが同社の成長・発展の生命線となる。

 大胆なリストラ断行で営業赤字を1期で食い止めたが、一方で大量の直営店が競争力を失っていたことを示すことになった。新規FC開拓に向け既存店を引き継ぐ「ユニットFC」制度など選択しを増加させている。リストラを経たことで競争力のある店舗が残ったなか、「ユニットFC」は低資本で開始できるメリットもある。しかし、中食業界では後続企業に水を開けるものの、2位、4位はスーパー・コンビニ傘下企業で強力な開発力・販売網を有する。業界の市場拡大が見込まれるなか、さらなる競合激化は必至の状況だ。

 「ほっともっと」は競争力があり、全国に店を張る一方で新たな出店余地に乏しい。一本足打法からの脱却なしにFC拡大や長期的な成長発展は見込めない。新業態「ほっともっとグリル」は着実に店舗数を増やすが、現状40に満たない店舗数にとどまる。「ほっともっとグリル」の展開加速や飲食店を含めた新業態の開発が欠かせない。また、大量の雇用を要する業種にあって人件費負担増とFCの収益力向上のバランスで難しいかじ取りを迫られる。そして現在詳報している店舗数や店舗の業績推移など経営実績を非上場化後にどこまでFCオーナーに共有していくのか。FCフランチャイザーとしての正念場を迎える。

【鹿島 譲二】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:塩井 辰男
所在地:福岡市博多区上牟田1-19-21
設 立:1976年11月
資本金:34億6,113万円
業 種:弁当販売ほか
売上高:(22/2連結)1,430億3,600万円
仕入先:丸本、神明、
    日本ハムマーケティングほか
販売先:一般消費者
取引行:福岡(博多駅前)、
    西日本シティ(博多駅東)ほか

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