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ビックリ仰天
年末から変な情報を耳にしていた。「T設計事務所が廃業するらしい」というものである。T事務所といえば福岡の老舗中の老舗。オヤジの時代は業界で権勢を誇っていたはずだ。設計業界は我が世の春を謳歌しているのに、会社を畳むとはびっくり仰天と考えていた。
T社の2代目とは長い交流がある。社交家ではあるが優柔不断なところに懸念を抱いていた。「何かトラブルがあったのだろうか? 若手に飛び出されたか」と考えをめぐらした。
ともかく本人に取材を掛けたところ、次のような説明を受けた。
「確かに廃業を決断した。継続の仕事が残っており最終的には来年3月には事務所を閉めます。しかし実質的に今年3月には新規の受注は終了して、前の事務所の2階だけを借りて営業しています。」
これだけでは店締めの経緯報告に過ぎない。取材を続けていくと敗因の大方が判明した。
(1) まず若手の人材が大手にスカウトされた。またやる気のある者は独立していった。この2つが主要因であった。よくあるケースである。
30歳までは実務経験を積む。そして業界に精通してくる(30歳前後)とスキルアップを求めて新たな仕事へ挑戦するのだ。
(2) さらに問題点が露わになる。2代目自身が資格をもたないのである。「辞めるのなら辞めてみろ!!俺が1人でもやって見せる!!」と啖呵を切れない弱みがあったのである。
(3) さらに追い打ちをかけたのは、設計監理の有資格者が退社することになったのが決定打であった。
廃業経緯を知るにつけ、打つ手はあったはずなのにと、たいへん悔やまれる。
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