2024年11月03日( 日 )

「九州はひとつ」 経済再生実現と幸福感の醸成に向けて(中)

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(一社)九州経済連合会
会長 倉富 純男 氏

 1961年に、九州・山口経済界の一体化を唱えて創立された(一社)九州経済連合会(以下、九経連)。「九州はひとつ」を掲げ、九州全体を視野に入れた議論や提案を行うほか、内外に向けて九州の魅力を発信している。倉富純男会長に今後の経済再生に向けた取り組み、九州の将来像について、話を聞いた。

九州の魅力を発信

 ──今年、「ツール・ド・九州」が開催されます。

 倉富 サイクルスポーツを通じて九州のすばらしい魅力を世界中に発信し、インバウンド誘客の起爆剤となる役割を期待されているのが、九州地域戦略会議が中心となり開催を決定した自転車レースの国際大会「ツール・ド・九州」です。その記念すべき第1回大会「ツール・ド・九州2023」が、10月6日から9日までの4日間、福岡、熊本、大分3県で開催されます。

ツール・ド・九州
ツール・ド・九州

    国際自転車競技連合(UCI)から正式にクラス1に認定されたことにより、ツール・ド・フランスなどにも出場するワールドチームの招聘が可能となりました。

 レースに先立ち、エキシビションとして小倉城を周回する「クリテリウム」で気運を高めた後、福岡、熊本(阿蘇)、大分(日田)と毎日場所を移していく転戦型のレースです。

 九経連では22年8月に環境省九州地方環境事務所と連携協定を結びましたが、国立公園を活用した地域活性化の項目で、「サイクルツーリズムを基軸とした観光振興の在り方」を検討していくことになりました。ツール・ド・九州の熊本ステージはまさにその舞台となります。単なるサイクルレースではなく、国立公園の維持と活用の推進に資するSDGsにも配慮した大会を目指していきます。

 大会まであと9カ月、安全で快適なレースができるよう、開催県をはじめ関係市町村、警察など各方面と連携を強化して計画を進めていきます。また、23年度には、年間通して海外と国内の一般の方向けに九州各地を自転車でめぐる旅行商品「ディスカバー九州」が発売される予定になっており、レースと併せて、九州の魅力を内外に発信する機会にしてければと思っています。

 ──MaaS(サービスとしてのモビリティ)について積極的に議論していますね。

 倉富 九州MaaSについて、22年8月に発足した九州MaaSプロジェクト研究会において九州・山口・沖縄の官民31団体、48者で現在活発な議論が行われています。年度末までに九州MaaSとしてのグランドデザインをとりまとめ、23年春の九州地域戦略会議にて諮る予定にしています。

 人口減少が進む九州は、公共交通の維持が深刻な問題です。MaaSの流れでシームレスな交通体系への強化を図れば、住民の利便性を高めることができます。

 また、九州を訪れる観光客の域内回遊の促進も期待でき、多言語対応化することで、水際対策の緩和で復活の兆しのあるインバウンドの九州域内の滞在時間増にも貢献できる可能性が高いと思っています。住民型、観光型両面での展開で公共交通の利用増につなげていきたいです。

 さらに、集積する移動データを他のデータと統合しながら、エビデンスに基づいた地域交通政策をブラッシュアップできる可能性も考えられます。国が進めるデジタル田園都市国家構想および九経連が進め、先日の九州地域戦略会議でもその推進が確認された九州スマートリージョン構想の文脈からも、九州という広域エリアでデジタルを活用した官民共助のビジネスモデルのわかりやすい事例として取り組みを推進していきます。

 ただし、デジタル分野だけの協力ではなくフィジカルな連携を強化しないと効果が半減してしまうので、総合的な交通事業者同士の連携を強化することが最も重要だと考えています。

 ──海外との経済往来が戻りつつあります。

 倉富 「アジアのなかの九州」というマクロの視点が大事であり、ビジネスマンも学生も積極的に海外に出て国際感覚を磨き、アジアとの関わりで活路を開くべきだと思います。
 20年11月、ベトナム・ハノイにプレオープンした「九州プロモーションセンター」が、23年3月7日、正式にグランドオープンします。九州のシンボルタワー・広報拠点として、自治体・企業の情報発信に加え、ベトナムの人たちに、「九州ドリーム」を抱いてもらえるよう、九州で働く魅力を発信していきたいと思います。

(つづく)

【茅野 雅弘】


<プロフィール>
倉富 純男
(くらとみ・すみお)
(一社)九州経済連合会 会長 倉富純男 氏1953年生まれ、福岡県うきは市出身。78年青山学院大学卒、西日本鉄道(株)入社。都市開発事業本部商業レジャー事業部長、取締役常務執行役員経営企画本部長などを経て、2013年6月に代表取締役社長就任。21年4月から代表取締役会長。同6月、九州経済連合会会長に就任。福岡県経営者協会会長、九州経営者協会会長も務める。

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