福岡県や県議会の高額な海外視察などの公金支出や、吉松源昭県議らの告発で明らかになった、正副議長就任時の自民県議団幹部に対する金銭授受疑惑が大きな問題となっている。
このほかにも県執行部による県議質問の作成代行や互助会組織「部課長会」による組織的パーティー券購入も発覚し、長年にわたる県当局と県議会の癒着関係が公となった。服部誠太郎知事が第三者委員会による調査を行うことや蔵内勇夫議長との関係性を見直すことを表明。自民党県議団会長の辞任にともなう交代も行われ、問題の是正が進んでいるように見える。
この間、当該問題の報道をリードしてきたのは西日本新聞だが、地元紙として長年、県議会と県当局の関係を知りつつ報じてこなかった。同紙は高額な海外視察出張の問題を皮切りに「歪んだ関係@福岡県政」とのワッペンをつけて大々的に報じているが、長年福岡県政をみてきた市民や県内の地方議員のなかから、同紙の報道姿勢に批判の声がある。
11日の西日本新聞は1面トップで「蔵内氏への追及ゼロ」と大見出しをつけ「みんな議長が怖い」「副議長選 自民以外逃げ腰」などの見出しで、自民以外の民主や公明など主要会派の動向や会派会長が交代した自民党県議団内部の声を伝えている。
各会派の思惑や内部の勢力争いが垣間見える記事ではあるが、同紙は社会面においても県議会問題を取り上げ、10日に自民党県議団の新会長に渡辺勝将氏が選出されたことについて、詳細を報じている。その左下に「八女市議会も意見書可決『歪な関係』」との見出しで報じたものの、県議団新会長選出と同日の意見書可決をベタ記事扱いとした。
八女市は蔵内議長の地元・筑後市に隣接し、同じ旧八女郡としてつながりが深い。当社が報じてきたが、八女市議会では県議会問題に対する意見書について、会派代表者会議や議会運営委員会などで反対意見が上がっていた。本来ならば、西日本新聞はこうした経緯を報じるべきであるが、ベタ記事扱いで、市民・県民には賛否の内幕は知らされないこととなった。
10日の臨時議会では、22人の市議のうち、議長席に座った副議長を除く18人が意見書に賛成したが、3人が反対した。保守系会派・新風の代表、堤康幸市議、同じく保守系会派・創生会の代表、牛島孝之市議、同会派所属の石橋義博市議の3人である。
10日の臨時議会は、西日本以外に、読売、NHK福岡放送局、テレビ西日本(TNC)、九州朝日放送(KBC)と当社の5社が取材にきていた。読売も西日本同様の報道だったが、議長のコメントを伝えている。NHKは賛成多数での可決を報じたほか、KBCは、同日夕方の情報番組「ぎゅっと」のなかで、8分以上にわたり県議会問題を取り上げ、そのなかで八女市議会の意見書可決を紹介した。
KBCは牛島・石橋両市議をインタビューし「県知事も議長も第三者委員会を立ち上げるとしたので、自浄作用にゆだねるべき」「県議会、自民党とも密接な関係にあったのだから(意見書について)丁寧な議論を行うべきだった」とのコメントを伝えたが、その内容は同社のYouTubeでも見ることができる。これにより賛否の存在と反対意見が部分的にせよ知られることになった。
反対した3人の市議はどういう立場に立つのか紹介しておきたい。いずれも保守系議員である。堤・牛島両市議は、自民党員でもあり、地元選出で元議長の桐明和久県議とも近い。石橋氏は、2020年11月の八女市長選に無所属で立候補し、当時の現職に敗れたが、そのしこりで自民党を離党し、保守系ではあるが、自民党員ではない。
八女市議会の22人のうち、自民党員であるのは、橋本正敏議長や高橋信広副議長をはじめ10人以上とされる。
共通しているのは、県議会や県との関係性を重視していることだ。24年11月の八女市長選で自民党が元副市長を推薦したなかで、現在の蓑原悠太朗八女市長を応援したが、政策面の相違から蓑原市長に批判的な立場に転じ、議会で厳しい質問を行っている。
八女市議会も意見書のなかで県議会を批判しているが、同市も長年、県議会同様、保守系と旧社会党系のオール与党により運営されてきた。3人の市議はこうした不明朗な慣習を改め、国や県とのパイプを強化して経済活性化を行うべきと主張してきた。
橋本正敏議長をはじめ大半の議員が賛成したなかで、3人の市議は蔵内氏への忖度や古い政治家と批判されることを覚悟のうえで反対した理由を問うと、中山間地域が多く、市財政の自主財源が乏しいなかで県や国との関係を重視する点と、現在のメディアによる蔵内氏など自民党や県議会へのバッシングに対する反発があるという。
牛島孝之市議は当社の取材に対し「意見書提出や議会改革に反対ではない」としたうえで「県議会の民主会派も金銭授受疑惑がある。民主の支持団体・自治労と当局の癒着は県だけでなく八女市でもある。一方的な批判はおかしい」「『歪な関係』を議運などで削除するよう求めたが聞き入れられなかった」と語り「大本営発表のようにメディアが同じ方向で特定の人を叩くことに疑問がある」との認識も述べた。
一方、採決では議長席に座った高橋信広副議長が「もう少し理解を得られるように丁寧に議論を深めるべきだった」とコメントした。
西日本新聞は、賛否のある案件に関してこうした地方議員の声を報じるのが地元紙としての役割ではないだろうか。
【近藤将勝】









