「九州はひとつ」 経済再生実現と幸福感の醸成に向けて(後)
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(一社)九州経済連合会
会長 倉富 純男 氏1961年に、九州・山口経済界の一体化を唱えて創立された(一社)九州経済連合会(以下、九経連)。「九州はひとつ」を掲げ、九州全体を視野に入れた議論や提案を行うほか、内外に向けて九州の魅力を発信している。倉富純男会長に今後の経済再生に向けた取り組み、九州の将来像について、話を聞いた。
幸福を感じられる地域へ
──九州将来ビジョン2030のなかで、「幸せコミュニティ」指標を打ち出していますね。
倉富 九州に暮らす人々は主観的には概して「幸せ」だと感じている人が多い一方で、「幸福感」の醸成につながるといわれる経済・社会・生活等の指標による客観的な評価からみると、必ずしも高いとはいえません。
私たちは理想的な姿としての「九州将来ビジョン2030」に加え、この主観的・客観的な「幸せ」のギャップを埋める仕組みと捉えるべく、今回、策定した「幸せコミュニティ」指標をビジョン達成の成果指標としても位置付けられないかと考えました。
九州の恵まれた環境・好条件を生かして、「九州将来ビジョン2030」と「幸せコミュニティ」指標に基づいて、新しい動き、良い成功事例をつくり、九経連のミッションである「九州から日本を動かす」の実行、実現につなげていきます。
九州地域が競争力とともに「幸福感」「幸福度」を高め、それぞれの立場から次世代が明るい可能性を感じるビジョンをもち、発信してもらえればと思っています。本指標が昨年のビジョンに続き、ローカルアドバンテージを引き出す戦略や将来像を描く上での議論の良い材料になればと願っています。
3年ごとに策定する中期事業計画の最終年度には、主観・客観両方の指標を公表し、「幸せコミュニティ」の進捗状況を報告します。
──九州・沖縄・山口ESG投融資方針にはどのような狙いがあるのでしょうか。
倉富 「九州・沖縄・山口ESG投融資方針」は、SDGsやパリ協定などの国際合意、我が国のESG関連政策との整合性に留意しつつ、九州・沖縄・山口地域における豊かな自然資本やクリーンエネルギーの強みなど地域特性や産業特性を重視した「九州の新しい成長戦略」です。
環境貢献度や社会貢献度の高い成長分野に、地域金融機関の投融資や民間設備投資、公共投資を誘導することにより、経済価値、環境価値、社会価値の3つの価値を同時に高め、50年のカーボンニュートラル社会の実現をはじめ、生物多様性保全、地域コミュニティの維持など、経済成長とサステナブルな地域づくりを同時に推進していくことを目的としています。
今後、本投融資方針の具現化にあたり、地元の金融機関をはじめ、会員企業や地元自治体へ広く浸透を図り、地域一丸となってESG投融資の推進に取り組んでいくための「官民連携プラットフォーム(仮称)」を、23年1月に設立します。
また、環境省九州地方環境事務所と22年8月に連携協定を締結してタッグを組み、「地域脱炭素の実現に向けた地方公共団体と企業のマッチングイベント」を福岡(11月)、沖縄(12月)の2カ所で開催しました。今後、脱炭素先行地域での太陽光発電やバイオマス発電、EVや蓄電池導入など、新たなプロジェクトと連携することで域内のESG投融資を拡大していく仕組みを構築していきたいと思っています。
「九州はひとつ」
──23年はどのような取り組みを優先的に行っていきますか。
倉富 人口減少が進む九州は、公共交通の維持が深刻な問題であり、22年6月の九州地域戦略会議で、全国でも類を見ない「九州MaaS」構築を提案しました。さらに、医療や防災などにテーマを広げ、九州版のデジタル田園都市国家構想となる、「九州スマートリージョン構想」を推進していきます。
Well-Beingの視点から、デジタルを最大限活用した広域連携の先進的なモデルをつくり、九州は良いぞというモデルを全国へ発信していきたいと思っています。
また、九州各地とのコミュニケーションを密にしながら、地域に根差した魅力ある九経連活動の強化をしていきます。九経連では、10年に8つの地域委員会を設置し、九州各地の生の声を九経連全体としての活動に反映することで、各地域経済の振興に努めてきました。コロナ禍での「集中から分散」や「価値観の多様化」などの社会変容を一過性のものとすることなく、各地域の特色・ポテンシャルを生かした地方創生、魅力づくりの取り組みを加速させていくことが重要です。
これまで以上に地域のリアルの情報を把握し課題解決に向き合うため、23年度には、各地の金融機関を中心とした現地担当者(地域参事)と、九経連事務局のなかに各県担当者を配置します。地域の課題を共有しつつ、そこに九州全体の戦略も共有化し、課題解決策の実行に力点を置いた活動を強化していきます。
さらに、各地域を代表する大学間コミュニケーションの橋渡し役を担いたいと思っています。地域課題の解決、そして地域を支える人材の育成・確保にあたり、「知」の拠点である大学・高専との連携強化は不可欠です。九経連には、43大学・8高等専門学校が加盟しています。
大学の研究シーズと企業が求める課題解決ニーズをうまく組み合せることによる、大学と企業がWIN-WINの関係を築く産学連携や、大学の生き残りという課題に対し、地域の大学が国公私の垣根を越えて連携し、リソースを共有し合い、地域の人材ニーズに応えるなどといった動きを、九経連として後押ししていきたいと思っています。
九州全体をまとめる動きをつくるのは九経連ならではの役割です。「九州はひとつ」の理念のもと、経済界・各県がまとまって、スピーディーな意思決定を行い、一緒に取り組める地域は、九州以外にないと自負しています。
(了)
【茅野 雅弘】
<プロフィール>
倉富 純男(くらとみ・すみお)
1953年生まれ、福岡県うきは市出身。78年青山学院大学卒、西日本鉄道(株)入社。都市開発事業本部商業レジャー事業部長、取締役常務執行役員経営企画本部長などを経て、2013年6月に代表取締役社長就任。21年4月から代表取締役会長。同6月、九州経済連合会会長に就任。福岡県経営者協会会長、九州経営者協会会長も務める。法人名
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