企業の「自己変革」支援を通して福岡の活力創出を後押し(後)
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福岡商工会議所 会頭 谷川 浩道 氏
新型コロナウイルスの収束はまだ見通せず、不安は尽きないものの、人流の回復、水際対策の緩和による海外との往来の再開など、福岡においても事業環境は徐々に戻ってきている。福岡商工会議所会員の要望も、コロナ禍での困窮を訴えるものから、事業再構築や生産性向上に関するものに変わってきているという。同会議所は2022年、経済と社会の再起を図るために、どんたくの3年ぶり開催などさまざまな事業に積極的に取り組んだ。23年の取り組みなどについて、谷川浩道会頭に話を聞いた。
コロナで変わるニーズ
──ウィズコロナでオンラインから対面への復帰が進む一方、両者を併用するかたちも見られます。そのなかで、貴所はどう対応されましたか。
谷川 コロナ流行以降の20、21年、対面で実施していた交流会、商談会等の多くの事業は、中止・延期やオンライン開催への切り替えを余儀なくされました。
しかし、22年は「社会・経済活動を止めない」「商工会議所が率先して経済を回していく」という強い想いのもと、先述の博多どんたく港まつりのほか、新年祝賀会や会員交流会、展示商談会等のほとんどを3年ぶりにリアルで開催しました。
人脈形成や情報交換の場としてニーズの高い会員交流会は、さまざまな業種から100名を超える方にご参加いただき、参加者からは「普段出会うことができない企業の方と交流ができた」といった声をいただきました。また、22年10月に開催した「Food EXPO Kyushu2022」には、206社が出展し、2日間で3,429人が来場されました。参加した事業者からは「やはりオンラインでの開催とは違う。良かった」との声をいただきました。
──オンラインを活用することで、貴所にとっての変化はありましたか。
谷川 コロナ禍がきっかけでオンラインを活用したことで、新たな発見もありました。当所では、販路拡大支援の一環として、以前から対面による個別商談会を実施していました。ところが、コロナ禍で対面による開催が難しい状況となり、オンラインの活用を始めました。すると、オンラインであれば、いつでもどこでも商談ができるというメリットに気づきました。21年には、オンライン上で年間を通じて商談ができる「商談マッチングシステム」を開発し、提供を開始しました。22年11月までに登録企業数は約460社に達し、システムを通じて200件を超える商談が行われました。
コロナ禍を機に、多くの企業で、テレワークはもちろん、キャッシュレス決済、オンライン商談、電子受発注、ECネット販売などさまざまな領域でデジタル化が進みました。コスト削減や業務効率化、生産性向上につながったという効果も表れています。当所でも、会員事業者のニーズに合わせ、オンラインをうまく活用しながら、さまざまな事業に取り組んでいきます。
──コロナ禍で会員数が増加しています。その理由についてどうみていますか。
谷川 商工会議所は、事業者の身近な相談・支援機関として、コロナ禍以降、多くのご相談に対応してきました。コロナ禍で、商工会議所には、国や自治体が準備した融資制度や支援金・補助金に関するご相談が多く寄せられました。制度の概要や申請方法、計画作成の仕方等がよくわからないという事業者に対して、経営指導員を中心に丁寧に対応してきました。その結果、コロナ前の20年度末に1万6,142社だった会員数は、21年度末で1万7,383社、22年11月末時点で1万9,608社と増加傾向にあり、会員数の増加は7年連続となっています。これも、コロナ対応にしっかりと取り組んできたことを評価いただいた結果だと認識しています。
今後は、会員事業所の皆さまに「商工会議所に入会して良かった」と実感していただけるよう、フォローを強化し、経営相談や交流会など当所事業を通じて、経営者の孤独感を少しでも和らげ、福岡経済を盛り上げる仲間としての意識醸成を図るべく努めていきます。
「歴史・文化を活かしたまちづくり」の推進を
──福岡のまちづくりについてどうお考えですか。
谷川 23年は、いよいよ3月に地下鉄七隈線の延伸部分が開業し、7月には待ちに待った世界水泳選手権(第19回FINA2022福岡大会)が開催されるなど、楽しみなことが控えています。
こうした明るい話題を原動力に、福岡商工会議所では、今後「歴史・文化を活かしたまちづくり」への取り組みを展開したいと考えています。
福岡市は「天神ビッグバン」や「博多コネクティッド」をはじめ、ハード面では順調に再開発が進んでいます。一方、福岡市を訪れた観光客が歴史や文化に触れる機会が少ないといった課題もあります。福岡市には古代から現代に至るまで魅力的で重層的な歴史・文化が多くありますが、市民でさえもあまり知らないように思います。
しかし、最近では福岡市に膨大な歴史資源があることに気づき、学び始める方が増えました。ただ、勉強したいと思っても、その受け皿や体制が整っていないのが現状です。先人たちが築いた福岡市が、世界のなかで魅力ある街となるよう、まずは、自分たち自身が住む街の歴史や文化に誇りをもち、郷土愛を育むようなまちづくりの在り方を考えていきたいと思っています。
これからさまざまな方々のご意見をうかがいながら、商工会議所からそういった機運を盛り上げていきたいと思っています。
会員の皆さまにとって、「頼りになる力強い商工会議所」、そして「行動する商工会議所」という姿を追求してまいりたいと考えています。
(了)
【茅野 雅弘】
<プロフィール>
谷川 浩道(たにがわ・ひろみち)
1953年福岡市生まれ。76年東京大学法学部卒、大蔵省入省。財務省横浜税関長、大臣官房審議官、(株)日本政策金融公庫常務取締役などを経て、2014年(株)西日本シティ銀行代表取締役頭取、16年西日本フィナンシャルホールディングス(FH)代表取締役社長に就任。21年6月、西日本シティ銀行代表取締役会長兼西日本FH代表取締役副会長、福岡商工会議所会頭に就任。法人名
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