ハウステンボス月額6%昇給 人材獲得競争激化か
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24日、大型リゾート施設ハウステンボスを運営するハウステンボス(株)(⻑崎県佐世保市、坂口克彦代表)は、7月に全グループ会社の給与改定を行い、平均6%の昇給を実施することを発表した。
賃上げの理由として原材料価格の高騰などによる家計の負担増を挙げ、給与改定によるスタッフの生活安定を図ることで社員の職場定着を促し、ひいては来場客へのサービス向上につなげる狙い。会社は「スタッフにとっても価値ある時間となる会社を目指す」としている。
対象者はグループ全体の正社員と契約社員、1,000人余り。賃上げは7年ぶりとなる。パート、アルバイトスタッフの昇給は実施済みであり今回の給与改定の対象には含まれない。
ハウステンボスは2010年に旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)が筆頭株主となり、九州電力(13.33%)、西部ガスHD(10%)、九電工(5.00%)、JR九州(3.33%)、西鉄(1.67%)もそれぞれ出資(カッコ内は保有株比率)し、経営再建が進められてきた。しかし、HISらは昨年9月、香港に拠点を置く投資会社「PAG」に全株式を売却し、ハウステンボスは「PAG」の傘下に入った。来場者数はコロナ禍で大きく落ち込んだものの、海外客を中心に回復傾向にあり、昨年9月期の決算は3年ぶりに黒字に転換した。
宿泊業・飲食サービス業の雇用環境の改善を
コロナにともなう行動規制が緩和され、訪日外国人観光客の受け入れ再開や、全国旅行支援の実施により国内の旅行者、宿泊者数は回復傾向にある。その一方で急激な需要回復に対して、業界への人材供給は追いつかず、人手不足に悩むホテルや旅館が増えているのが現状だ。その傾向は昨年すでに表れており、厚生労働省の22年11月の発表によると、全体の有効求人倍率(季節調整値)は1.35倍と10カ月連続で前月を上回っていた。なかでも、「全国旅行支援」に備えた22年9月は前年9月と比べて新規求人数が、宿泊業・飲食サービス業は29.5%増、生活関連サービス業・娯楽業では22.3%増と大幅に増えていた。
しかし、これは単に需要の急激な増加に対して供給が追い付いていないということ以上に、宿泊業・飲食サービス業における、労働者の雇用環境という構造的問題が原因としてある。同業界では、かねてより休日や賃金など待遇面が課題となっており、同時に非正規雇用の割合が多く、離職率が高い傾向にあった。コロナ禍をきっかけに宿泊業・飲食サービス業から離れた労働者が、改善されない労働環境をみて戻ることに二の足を踏んでいる状況となっている。
今回のハウステンボスの賃上げは、そうした人材の獲得競争が熾烈になった業界のなかで先手を打ったかたちだ。今後、同様に賃上げや待遇改善に踏み切る同業者が続くことが期待されるが、コロナ禍で厳しい経営を強いられ、なかなか改善に踏み切れない事業者は、働き手からの厳しい峻別に晒されることになる。コロナ禍を乗り越えた宿泊業・飲食サービス業が、今一度、働き手を呼び戻すためには、以前の状態に戻すのに留まることなく、労働者の待遇改善に乗り出すことが必要である。そのような積極的姿勢を持つ事業者にこそ、コロナ禍明けの再スタートを切る業界において、より多くのチャンスがあることは間違いない。
【寺村朋輝】
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