2024年12月23日( 月 )

【徹底告発/福岡大・朔学長の裏面史(27)】放漫財政篇5:学生確保はますます困難に〜「学部頼み」はもはや許されない

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 2019年12月の就任以来、栄えるのは医学部と病院部門だけで十分といわんばかりに、我田引水丸出しの施策に強権をふるってきた朔啓二郎・福岡大学長。今度は唐人町の旧福岡市立こども病院跡地での新病院開院を目論んでいるようだ。目論見通りに落札をはたすとして、これが福岡大の未来にプラスになるのだろうか。そもそも、いまの福岡大にそんな余力はあるのか。【徹底告発/福岡大・朔学長の裏面史】シーズン4となる本連載では、朔学長の舵取りの危うさ・無謀さを、財務状況から明らかにする。

 いずれにせよ、落札した場合、福岡大は積水とともにすみやかに福岡市などと事業実施に係る基本協定を締結し、土地代金の10%に相当する事業保証金を病院機構に支払う手続きに入る。その段階で、具体的な事業計画が公表されることになろう。福岡大に発生する費用は一体いくらに上るのか、大学役員たちですら「蓋を開けてみなければわからない」というが、朔執行部は真面目な話、資金をどう調達するつもりなのだろうか。

 全国の多くの大学法人がそうしてきたように、福岡大も近年、大学の経営環境の悪化に備えて有形固定資産比率を下げ、金融資産比率を高めてきた(【表14】)。21年度末時点における福岡大の金融資産は総資産の46.7%にあたる1,188億8,900万円。うち現金預金は147億3,100万円で、将来の施設設備取得のために義務づけられている積立金、すなわち第2号基本金は78億7,500万円、福岡大が設定している施設整備準備引当特定資産が256億3,800万円、設備整備準備引当特定資産が78億1,600万円ある。まずはこれらを取り崩していくと思われる。

【表14】福岡大 有形固定資産および金融資産の推移(過去7カ年)(単位:百万円)
【表14】
福岡大 有形固定資産および金融資産の推移(過去7カ年)
(単位:百万円)

 だが、大学資金の蓄えは医学部・病院部門のためだけにあるわけではない。数年以内には附属若葉高校の校舎新築工事が控えているという。大学本館やA棟といった、七隈地区(医学部・病院、スポーツ科学部以外の学部地区)の老朽化した建物の耐震工事も急がれる。

 19年12月に念願の学長就任をはたした朔医学部教授が、前執行部時代の16年に承認され基本設計の担当業者の選定まで完了していた「文系学部棟(仮称)」建設計画をいきなり白紙撤回したうえ、建設中の「福岡大学病院新本館(仮称)」に隣接する「多目的棟(仮称)」なる建物の建設計画を打ち出したことは既報の通りである。共通教育科目の授業もここで行えばよい、なにより文系学部棟なら80億円かかるところ、30億円で済むという触れ込みで押し切ったが、七隈地区の学生の移動のためにシャトルバスを導入するなど、費用がどんどん膨れ上がることは必至であることもすでに報じた。朔執行部は病院新本館建設を請け負っている清水建設との随意契約でこの建設計画を強行しようとしたが、それでは補助金が出ないことが判明、慌てて白紙に戻していたが、今年こそはやる気満々というではないか。そのうえもう1つ病院を建てるとなると、福岡大の財政はますます苦しくなり、教育・研究の質の低下を招きかねない。

「巨額のコロナ補助金のおかげとはいえ財政が“V字回復”したものですから、朔学長は妙な自信をつけて、気が大きくなっているのかもしれません。」(関係者談)

 たとえ経営がうまくいかなくとも、いつものように学部に尻拭いさせればよいと高をくくっているのかもしれない。だが、ここまで黒字を維持してきた学部も、いつまでも病院部門を支えられるとは限らない。学納金収入は2010年代から少しずつ、コンスタントに増加してきたが、在籍学生・生徒数は10年からの12年間で1,000人以上減少している(【表15】)。学部入学者数は何とか一定数を維持してきたものの、附属推薦・指定校推薦──大学側にとっては早い段階で入学者を確保することのできる、事実上無試験の入試枠──の割合はどんどん拡大。いまや5人に1人がこれによる入学者である。それでも21年度は入学定員充足率100%を割ってしまった(【図1】および【図2】)。

【表15】福岡大 在籍者数および学納金収入の推移(2010年度〜)
【表15】
福岡大 在籍者数および学納金収入の推移(2010年度〜)
【図1】福岡大 学部在籍者数・入学者数・入学定員充足率の推移(10年度〜)
【図1】
福岡大 学部在籍者数・入学者数・入学定員充足率の推移
(10年度〜)

(各年度の「学校法人福岡大学事業活動報告」記載データに基づき取材班作成)

【図2】福岡大 入試形態別入学者数比率の推移(10年度〜)(単位:%)
【図2】
福岡大 入試形態別入学者数比率の推移(10年度〜)
(単位:%)

(福岡大学教育開発支援機構「Fact Book <2022.03.31時点>」掲載データに基づき取材班作成)

 2000年代初頭をピークに平均世帯年収が減少の一途をたどる一方で、学費はますます高騰している(【表16】)。18歳人口の減少が加速的に進むなか、大学そのものの魅力を上げていかない限り、学生確保はますます困難になることは明らかだ。そのうえ、我々が昨年取り上げた朔学長の研究業績水増し提示問題で、福岡大は「恥ずかしい人物を学長にいただく大学」として全国ですっかり有名になってしまっている。大学としての釈明も朔氏への責任追及も一切ない、そんな大学に、いったい誰が高い学費を払ってわが子を託そうと思うだろう。

【表16】福岡大 1年次学費等納入金額(うち入学金)の推移(単位:円)
【表16】
福岡大 1年次学費等納入金額(うち入学金)の推移
(単位:円)

(つづく)

【特別取材班】

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