大量空き家時代における住宅事業者の社会的責任(2)
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低質な新築住宅が空き家予備軍であるわけ
新築される住宅のなかには一定数の低質な住宅がいまなお含まれており、それが空き家問題解決の足かせになっているという現実がある。
さて、住宅の質を表す指標の1つに断熱性能がある。それについては、2022年6月に公布された改正建築物省エネ法施行により、25年4月以降に供給されるすべての住宅について省エネ基準(現行基準)適合の義務化が決まった。
このことは、コストパフォーマンス重視型、いわゆるローコストビルダーと呼ばれる住宅事業者を中心に、現行基準を満たさない、断熱性能の低い住宅を供給し続けているということを表している。
やっかいなのは彼らが供給する住宅のなかに断熱性能だけでなく、耐久性や耐震性、可変性、安全性などの基本性能に何らか、あるいはすべてに問題を抱えるものが含まれること。例として、都市部を中心に供給されている狭小住宅がある。
このタイプの住宅供給では、注文・分譲に関わらず居住面積を有効活用することに重きが置かれる。そのために犠牲になりがちなのが階段スペースであり、その全体を小さくするために階段の踏み板が狭くなり、傾斜も急になるからである。
そうした階段であれば、郊外に建てられる居住面積に余裕がある住宅と比べて、昇降時に居住者が転倒するリスクが格段に高くなる。とくに高齢者になるとなおさらである。収納に関しても同じようなことが指摘できる。
新築時に十分な量があるようにみえても、家族構成やライフスタイルの変化にともないモノがどんどん増える。優れた断捨離の能力があるならまだしも、そうでない多くの居住者は収納量不足に慢性的に悩まされるようになる。
もちろん、階段・収納とも高度なプランニングによって不満解消に務めているケースもないわけではない。ただ、なかでも大量供給に熱心なパワービルダー、分譲住宅供給者にはそうした配慮に多くの期待はできない。
狭小住宅のうち、住宅密集度がとくに高い地域では2階、あるいは3階にLDKを配置されるケースもよくみられる。居住者が隣接する住宅や道路からの視線を気にせずに、開放感のある暮らしを楽しめるようにするための設計上の工夫だ。
一見するとよいプランに見えるが、毎日の生活で重い荷物をもって階段を上り下りするのは大変だ。人生100年時代といわれる世の中になった今、その住宅で長く生活を続けるには無理があるといわざるを得ない。
このプランは、その質について疑問視されることが多い狭小住宅を供給するパワービルダーのみならず、常日頃から高品質・高性能と自慢している有名ハウスメーカーであっても、無自覚に採用しているケースは見られ、問題はとても根深い。
長く快適に暮らせる住宅とするなら、本来は少なくとも3階建て以上ならホームエレベータは必須ではないだろうか。このように、都市型の住宅、なかでも狭小住宅は居住面積の狭さや、居住者への安全配慮が疎かになるといったさまざまな制約を受けるものだ。
それは将来の資産価値、ストック(中古・既存)住宅市場の流通性の点でも不利であり、空き家予備軍の資格を十分に有している。なかでも、狭い土地をさらに細分化するような分譲地開発には規制を強めるべきだ。
それを継続する事業者には今後、強烈なしっぺ返しが来ることが予想される。
(つづく)
【田中 直輝】
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