2024年12月22日( 日 )

【BIS論壇No.407】ダボス会議の動向

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 NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
 今回は1月30日の記事を紹介する。

世界 経済 会議 イメージ    1月16~20日スイスの保養地ダボスで3年ぶりに対面開催された世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)は20日閉幕した。G7ではドイツのシュルツ首相のみが参加。また例年になく空席も目立ったとメディアは伝えている。

 一部では現下、世界的に最大の問題であるロシアのウクライナ侵攻、平和希求策についての十分な対話が行われなかったことに批判的な見方もある。ロシアのウクライナ侵攻もあり、本年のダボス会議はロシアや中国のビジネスマンの目立った参加もなく、例年のごとき活況はなかったと報じられている。それでも50カ国以上の首脳と経営者など約2,700人が参加した。

 中国からは劉鶴副首相が参加。ゼロコロナ政策の修正で2023年の中国のGDP経済成長率は正常な水準に戻ると発言した。それでも3%内外の成長で、22年末に人口で中国を抜き、世界一となった経済好調のインドはアジア開発銀行(ADB)の試算によると23年の実質成長率7.2%と、46カ国・地域で最高になると予測。IMFによれば、インドは22年GDPで旧宗主国の英国を抜き、世界5位に浮上。25年にドイツ、27年に日本を抜き、米中に次ぐ世界3位に躍り出るとみられている。ポストチャイナのインドの動向を今後、十二分にWatchすることが肝要だ。

 23年9月にG20首脳会議を議長国として開催するインドは、1月12~13日オンラインで準備会議を開催、約120カ国・地域が参加した。インド・モディ首相はとくに南半球の「グローバルサウス」諸国に対して、地政学上の緊張やインフレ、地球温暖化などの解決に向けて途上国代表として臨む姿勢を鮮明にした。

 米中対立やロシアのウクライナ侵攻で、世界の分断が加速化している現状下、サプライチェーン(供給網)再編や気候変動など、世界各国は地球規模の問題解決を模索中だ。脱中国の供給網構築、世界分断への対応策をめぐり、国家、グローバル企業ともに世界分断の先を目指し、世界経済での協力策を検討することが今こそ強く求められている。

 かかる現状から今回のダボス会議では「分断する世界での協力」を議題に討論が繰り広げられた。しかしながら民主主義陣営と強権国家の亀裂の深さが実感されたとの現地報道だ。コロナによる世界経済への甚大な悪影響や、気候変動や食糧問題、人口減、供給網再編など地球規模の課題は、世界が分断されている現状下での解決は困難だと思われる。とくに米中対立によって、最先端半導体の中国への機材を含む輸出禁止は厳しさを増しており、米国、オランダ、日本連合での中国向け禁輸が、サプライチェーン問題と並び、大きな影響を与えそうだ。

 中国は海南島、青島、大連などで中国版ダボス会議を開催している。日本でも市川周・一橋総研理事(BIS理事)が、白馬会議事務局代表として毎年秋に長野県白馬村で日本版ダボス会議を地道に開催しておられる。BISとしても今後、できる限りの応援をして、白馬ダボス会議の成功のために協力したいと念願している。


<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)

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