33期連続の増収増益で小売業界4位 「ドン・キホーテ」が勝ち続ける理由(前)
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「ドン・キホーテ」のパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)の2022年6月期の売上高は、前期比7.2%増の1兆8,312億円、営業利益は同9.2%増の886億円。1989年の1号店出店から、33期連続の増収増益で、小売業界4位にまで上り詰め、今期も第1四半期は、それぞれ6.3%増、48.4%増と好調だ。強さの源泉はどこにあるのか、さまざま角度から分析し解明する。
スポット商品が誘客 利益にも大きく貢献
ディスカントストアの安さだけではなく、店に足を運びたくなるアミューズメント性やエンターテインメント性を打ち出し、ある種のサブカルチャーとして若者の支持を集めてきた「ドン・キホーテ」。
その軌跡は1978年、創業者の安田隆夫氏が29歳のときに東京都杉並区に人を食ったような店名の「泥棒市場」をオープンしたときに遡る。メーカー、問屋の不良在庫に目を付け、正規のルートを通さずに仕入れた商品を安値で卸すバッタ屋ルートにも手を伸ばし、商品を二束三文の値段で仕入れ、後に「圧縮陳列」といわれるようになる商品を店内にうず高く積み上げ雑多に並べ、手書きのPOPを張り付けて超安値で販売、当時は珍しかった深夜営業も行い、超人気店となった。
こうした手法は「ドン・キホーテ」に受け継がれ、今でもかたちを変えながらも行われており、DNAとして色濃く残っている。ある意味唯一無二の業態として他店との差別化に成功しており、勝利の方程式として定着している。
そうしたなかで、常時品ぞろえする商品以外に、随時仕入れて販売する「スポット商品」が、誘客に貢献しており、利幅が大きく利益を生み出す源泉にもなっている。
「利は元にあり」と言われているように、小売業において仕入れは最も重要だが、「ドン・キホーテ」の定番品とスポット商品の黄金比率は6:4と決められている。
常に顧客が求める定番品で売上をコンスタントに確保しながら、スポット商品を投入することでプラスアルファの売上を生み出し、同時に売り場に目新しさを演出、鮮度感をアピールすることで再来店を促進する。必要性に迫られて店に足を運ぶだけではなく、売り場に行けば何か発見し新しいものと出会える楽しみを提供している。
スポット商品はメーカーや問屋の過剰在庫、不良在庫を大量に買い取るケースも多く、仕入れ価格を買い叩くことも可能で、結果的に利益率が高くなり収益面でも大きなメリットがある。このようにして仕入れた商品を「激安」「超安」、さらに「驚安」といったPOPを付けてそれぞれの売り場に大量陳列して積み上げ、なかでも最もお買い得の「驚安」の商品を集積しコーナー展開も行うことで、売上を増幅させる。
驚くほど安いという意味の「驚安」はドン・キホーテの造語だが、今では驚安の殿堂「ドン・キホーテ」と名乗っており、圧倒的安さを最大限にアピールしている。
地域最安値やPBでも安さをアピール
スポット商品による安さを打ち出すだけではなく、どこよりも安い価格を目指し、食品や日用消耗品の売れ筋を中心に、地域の最安値で提供している。「ドンキロープライス保証」のPOPが付いている商品は、他店より1円でも高かった場合、差額を返金する。
地域最安値の取り組みとしては、西友が他店のチラシをもっていくと同額保証するサービスを行っていたが、2022年3月末に終了している。ドン・キホーテはこの同額保証をいまも継続しており、そのために競合店の価格を調査する専任スタッフを各店に配置し、徹底的にリサーチし対応している。
PB(プライベートブランド)でも安さをアピールしている。安さを実現するため09年10月に誕生させた「情熱価格」は、食品から家庭雑貨、美容、衣料品、家電、インテリア・寝具、自転車、玩具・バラエティグッズなど多岐にわたり、3,900アイテムを超えている。
PB比率(OEM含む)は15.3%(22年6月期)に達し集客の武器の1つとなっており、25年6月期には25%まで引き上げる。
(つづく)
【西川 立一】
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