2024年11月24日( 日 )

川勝知事、岸田首相にリニア関連書簡 現行方式の破綻は必至(後)

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 ──検証しなくても(名古屋部分開業で)大赤字確実で、リニア計画が破綻するのではないか。

 川勝知事(以下、川勝) そうですね。思わぬコロナで財務が厳しくなっている。これも含めて、2010年5月にJR東海が国に言った自分たちの経営計画をぶち壊すような事態がコロナで起こっているわけです。だから当然、政府としては違う事態だから検証しないといけない。なぜしないのかと思っていたら、今回、一応、首相が「静岡県にとってメリットがあるのか」という言い方ではあったが、伊勢神宮の前で(年頭会見で)「これを夏までにちゃんとやる」と仰ったので、しっかりと守って欲しい。有言実行をしていただかないと困る。

 ──岸田さんが合理的な検証をすれば、一段階でやらないと無理だという結論になる可能性が高いと思うのが。

 川勝 (笑みを浮かべながら)それは楽しみにしましょう。私がいまいうことではない。

満面の笑みで囲み取材を終えた川勝知事
満面の笑みで囲み取材を終えた川勝知事

    笑顔で囲み取材を終えた川勝知事からは、「岸田首相のお手並み拝見」という余裕さえ感じられた。県民益の“人参”をぶら下げて懐柔を目論んだような岸田首相に対して、書簡でリニア計画の見直しを迫ったに等しい満足感に溢れているようにも見えた。しかも、相反する政策をほぼ同時に訴える岸田首相の支離滅裂ぶりも際立たせてもいた。1月24日の定例会見で川勝知事は、“岸田書簡”の核心部分を次のように読み上げたのだ。

 川勝 総理の構想(デジタル田園都市構想)は地域分散型の国土構想です。一方、リニアの目指す東京・名古屋・大阪を結ぶ)スーパーメガリージョン構想は大都市集中型の国土構想です。ベクトルが異なり、相反する国土構想をどう調和させるのかは、総理が国民に明らかにされるべき課題です。

 総理におかれましては約束通り、この夏までに上に記した本県のリニアのメリットにかかわる調査とともに、それを関連するリニア建設の二段階方式の妥当性、JR東海の長期債務残高の再評価など集中的に取り組んでいただけますよう要請いたします。本県は住民の公益性を判断基準にし、リニアと水資源、自然環境保全との両立のために、JR東海と議論を尽くしていくことを約束いたします。敬白。

 以上の手紙を今日の午前中、お届けしました。

 これを受けて静岡新聞の記者が「知事としては名古屋までの部分開業時点では本県へのメリットを見出すのは難しいと考えているのか」と聞くと、川勝知事は次のように答えた。

岸田首相    「印象ではそういう感がある」「この二段階方式が合理的なのか。体力がつけられるのか。現実的なのかどうかは十分に問うに値するので、ここはしっかりとやってもわないといけない。私の質問の大きなポイントは、東京から名古屋間のシミュレーション。もう出社率は6割を切っている。これだけオンラインの仕事が一般的になり、さらに広まる可能性があると、仮に田園都市国家構想が27年から年間1万人全国各地に移り、加速化されると、もう(東京・名古屋・大阪を結ぶ)6,000万、7,000万のスーパーメガリージョン構想は夢物語にさえ聞こえるということであるから、それはそれで考える必要がある。もともと(一段階方式で大阪まで)全線開通して意味があると言っているわけだから。

 従って二段階方式に意味があるのかどうかは、これだけJR東海が固執されている以上、それでも(大阪開業まで)向こう十数年間、その状態が続くということだから、そういう状態を続けて本当にペイするのか」(川勝知事)。

 川勝知事の主張は明確で首尾一貫でもあったが、一方で岸田首相の支離滅裂さは際立ち、合理的思考能力への疑問も膨らむ。

 「今夏に出す」と岸田首相が公言、川勝知事が書簡で注文をつけたシミュレーションがどんな結果になるのかが注目される。

(了)

【ジャーナリスト/横田 一】

(前)

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