大量空き家時代における住宅事業者の社会的責任(3)
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持続可能社会実現に強く影響
空き家のデメリットを改めて確認しておきたい。簡単にまとめると、景観や治安の悪化、防災上のリスクになり、それが地域の魅力や活力の喪失につながることが挙げられる。空き家は国や地域、自治体の持続可能性に悪影響を与える。
さて、持続可能社会の実現が重要な社会課題となり、人々がよりそれに敏感になっていくなかで、コストパフォーマンス重視型の狭小タイプや省エネ性能に優れない低質な住宅は、今後、消費者が所有に二の足を踏むことが多くなるだろう。
たとえ立地性に優れるなどという特徴があったとしてもだ。そのため、そんな住宅を供給し続ける住宅事業者には明るい未来はない。だだ、この問題は実は根深い。というのも、一般的に良質とみられる住宅を供給している事業者であっても、この消費者の変化は無縁ではないからだ。
具体的には今、空き家化防止策となる仕掛けを構築し、それを新築住宅供給の強みにしようとする深謀遠慮を持つ事業者が存在し始めているためだ。その仕組みをもたない事業者との差別化を図ろうとしているわけである。
それは一部の大手ハウスメーカーのことなのであるが、彼らが質の高い住宅を供給しているかはここではいったん置いておく。また、その仕掛けがどのようなものなのかは今後紹介する。
強調したいのは、SDGsやESGといった指針が浸透するなかで、新築であっても空き家対策を念頭に置くものに、消費者の志向、住宅市場が変わりつつあるということを、住宅事業者は強く認識すべきということだ。
ここで余談だが、注文住宅の営業現場では「お客さまの要望にすべて応えます」といったフレーズがよく使われる。しかし、実はこれはNG。よりハイレベルなのは、お客さまが気づいていない要望や困りごとを引き出しプランに反映、実現することで、これがあるべき姿勢であるからだ。
住宅大手が神経質になった理由とは
なぜこの話題を持ち出したかというと、新築時からの空き家対策は、「お客さまが気づいていない」、将来の困りごとに対応するものと位置づけられるから。このことは、あらゆる住宅事業者がそうであると知りながら、実は長く放置してきたことである。
大手ハウスメーカーはなぜ空き家問題に神経質になったのか──。
それは彼らが膨大なストックを有し、それが空き家化するのを放置すれば社会責任を問われると考えるようになったからに他ならない。その責任を問われればブランドイメージが低下。資金調達も難しくなり、持続的な成長が難しくなるといったことを恐れてのことだ。
ところで、空き家問題の深刻化と、その周知が広がりをみせるなかで、多くの国民が「もう多くの新築住宅を必要としない時代になっているのではないか」と考え始めている。それはリフォーム・リノベーション市場が以前より拡大傾向にあることからも分かる。
また、少子化による世帯数の減少、国力の減退にともなう住宅購買力の低下により、特に若い世代は新築住宅を購入する力がそれ以前の世代ほどなく、それゆえに彼らの住まいをみる目は厳しさを増している。
国民の住まいに関する価値観が今、大きく変わろうとしているのだ。ただでさえ厳しさが増す新築住宅市場で事業を継続するといった意味でも、持続可能性社会実現と結びつく空き家対策は、今水面下で重要度を増している。
(つづく)
【田中 直輝】
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