3シーズン目のJ1の戦いに臨むアビスパ福岡 進化を続けてJ1定着、そして上位進出へ(前)
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アビスパ福岡(株)
代表取締役社長 川森 敬史 氏アビスパ福岡は2022年シーズンの最終節、アウェイの浦和戦で引き分け、2シーズン連続のJ1残留をはたした。コロナの陽性判定者が多数出て、ベンチメンバーわずか3人で試合に臨むことを余儀なくされるなど、試練のシーズンを戦い抜いたアビスパ福岡の川森敬史社長に22年シーズンの振り返りと23年シーズンの抱負などを聞いた。
最終節でJ1残留勝ち取る
──2022年シーズンを終えた感想をお聞かせください。
川森敬史氏(以下、川森) アビスパ福岡には、いわゆる「5年周期説」と呼ばれるジンクスがありました。4年間J2で過ごしてJ1に昇格、そして降格、これを繰り返すというものですが、J1昇格初年度の21年シーズンは8位という成績を残し、この5年周期説に終止符を打ちました。
22年シーズンはJ1に定着するための非常に難しいシーズンになるというのは、ある程度予想できていましたので、年始のチームミーティングにおいて「リアルでシビアな1年を戦い抜こう」と選手・スタッフに言ったのを覚えています。
夏にはコロナ禍でメンバーがそろわず、ベンチメンバーが3人しかいないといった文字通り「リアルでシビアな戦い」を強いられてしまいました。選手がコロナ感染後、政府が定めた隔離期間を終えてチームに合流しても、元のコンディションに戻るには、どうしても時間がかかってしまいます。コロナ陽性者が多数発生したため、チーム全体のコンディションが戻らずに約2カ月もの間、勝てない時期が続きました。振り返れば、あの時期が1番苦しかったですね。
──序盤は比較的好調だっただけに、あの時期が悔やまれます。
川森 シーズンが開幕してしばらくは10位前後に位置していましたが、夏を境に順位が下降していき、9月にはプレーオフ圏内の16位にまで後退してしまいました。それにともない、シーズン当初に掲げていた「8位以内」の目標を「残留」へと変更。チームと事業スタッフがベクトルを合わせて一丸となって戦った結果、最終節でJ1残留を勝ち取ることができました。J1のバトンを次のシーズンにつなげたという意味でも非常に価値のあるシーズンだったと思います。
──シーズンを通しての課題はどのような部分だったのでしょう。
川森 21年シーズン同様、堅い守りで失点を許さない戦いができていれば、もっと上位に食い込めていたはずです。しかし、コロナ感染者が発生した夏の時期から、守備にも綻びが生じてしまいました。
ただ、そうは言っても4失点、5失点などの大量失点を繰り返したわけではありません。どちらかというと1点が遠かったというケースのほうが多かったように感じます。開幕前から補強ポイントに得点力アップが挙がっていたので、さまざまな手を打ったわけですが、残念ながら、期待した結果を得ることはできませんでした。
チーム人件費の維持・向上を図る
──22年1月期の売上高は前年より4割近く上がりましたが、営業費用がかさんで3期連続の赤字を計上してしまいました。23年1月期の見通しはいかがでしょう。
川森 コロナ禍でのクラブライセンス判定における財務基準についてJリーグは、「債務超過解消でなくてもよいが、前年度より債務超過額が増加してはいけない」という基準を設けています。従って、現在は、その基準をクリアすべく増資やスポンサー獲得などの活動をしている最中です(取材は22年12月14日)。また、クラブイベントの商品化も計画しており、「新年感謝の集い」や、キャンプのパートナーを募っているところです。とにかく、Jリーグが定める財務基準をしっかりクリアしたうえで、事業計画をクリアするという戦いの真っ最中です。
──コロナの影響もあってか、観客動員という意味でも苦戦した印象を受けます。
川森 お客さまがコロナ前の水準にまで戻っていないのはJリーグ全体の課題です。ただ、アビスパ福岡はファンクラブの会員数や、シーズンチケット販売数などが、J1のなかでも下位に低迷しています。「J1だから」といって急にお客さまが来るようになるわけではないのです。
ファンの掘り起こしに関しては、まず、来場者に関するデータ分析を行っています。初めて観戦に来られた方の何%が2回目にきて、2回目にきた人の何%が3回目にくるかといったリピーターに関する分析で、現在アビスパはJリーグが掲げる目標数字をクリアしています。コロナ禍における施策の1つとして始めたのは「アビスパTV」の開設です。今後は有料の「アビスパTV」とYouTube動画「avispachannel」の両コンテンツをいかに有効活用していくかを検討しているところです。
Jリーグでは、Jリーグの各種サービスで利用可能な「JリーグID」を発行しています。まずは、この「JリーグID」のファン登録数を着実に増やしていくことが大事だと考えています。ファン登録数を増やすことで、まずは招待イベントにきていただく。そして、その次にチケットを購入、その後グッズも購入していただくといった段階を踏んでいく必要があります。
また、22年シーズンは法人の皆さまにチケットを団体購入してもらい、それを自社で利用する、またはそれを一般の方々にプレゼントしてもらったことで、入場料収入に関しては、事業計画をほぼ達成することができそうです。しかし、コロナが落ち着きを見せ始めた時期ではありますが、不安定な経済状況を反映して企業が広告予算に慎重になってきました。全体の広告収入自体は伸びていますが、チーム人件費を維持・向上を図っていくには、もう少し費用が必要なので、そのための活動を行っているところです。
(つづく)
【新貝 竜也】
<COMPANY INFORMATION>
代 表:川森 敬史
所在地:福岡市東区香椎浜ふ頭1-2-17
設 立:1994年9月
資本金:3億7,155万円
売上高:(22/1)21億3,200万円
URL:https://www.avispa.co.jp/
<プロフィール>
川森 敬史(かわもり・たかし)
1965年11月生まれ 、東京都出身。2015年3月、アビスパ福岡(株)代表取締役社長に就任。法人名
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