ウクライナで西側追随の岸田政権を鈴木宗男氏と佐藤優氏が批判(後)
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鈴木氏と佐藤氏の主張は侵攻直後から一貫していた。昨年3月23日の大地塾でも佐藤氏は「ロシアが間違っていることをしているのは自明」と指摘する一方、アメリカの対応にも疑問を投げかけていた。
「私は今のアメリカに戦略があるとは思えない。この戦争をできるだけ長引かせて、ロシア人が残虐なことをするのを示すことによって、ロシアの立ち位置を弱くする。それ以上の戦略はないと思う」(佐藤氏)。
今でもアメリカなど西側諸国は、ウクライナへの兵器提供で戦争を長期化させる対応を続けているが、両氏は早期停戦のために日本が仲介役をはたすべきと主張。と同時に、「ウクライナ侵攻で台湾有事の可能性が高まった。日本はアメリカとともに中国と戦えるように防衛力強化をすべき」という危険な言説に対して警告も発していた。
佐藤氏はこんな呼びかけもした。「戦後、与党も野党も平和が共通の土俵だったが、急速に崩れて与野党共に勇ましくなりすぎている。これを変えないといけない。そのためには、我々1人ひとりが微力かもしれないが、無力ではない、一歩一歩平和に向けた歩みを進めないといけない。平和のために戦うことだ。」
タレントのタモリ氏が「新しい戦前」と発言したように、勇ましい好戦論が大手を振って歩き始めた日本の状況はまさに第二次大戦前とよく似ているが、そんな大政翼賛会的な流れに抗すべく両氏は異議申立をしているように見えるのだ。
ただ違和感を抱いたのは、公明党と維新に期待していたことだ。12月15日に参院議員会館で開かれた「防衛力の抜本的強化を求める緊急集会」に公明党と維新も参加、賛同の挨拶をしていたからだ。主催者代表の櫻井よし子氏と、日本会議国会議員懇談会会長の古屋圭司衆院議員(自民党)に続いて各党幹部が次々と挨拶。そのなかには、公明党の佐藤茂樹衆院議員と維新の馬場伸幸代表もいたのだ。
そこで、質疑応答の際、筆者は佐藤氏に次のような質問をした。
「ウクライナを軍事支援するアメリカと西側諸国サイドに、日本がついてしまっていることが今回の安保3文書、防衛費倍増・敵基地攻撃能力保有の議論につながっているのではないかと思うが、そのへんの考えを聞きたい。また、12月15日の軍拡集会に、自民党はもちろん公明党や維新も加わっていたが、その状況をどう変えていけばいいのか。」
それに対して佐藤氏は次のように回答した。
「安保3文書の評価は、私と横田さんで違う可能性があると思うが、同時にもう1つ注目しないといけないのは、フランスの『フィガロ』(日刊紙)に歴史学者のエマニュエル・トッドさんの論考が出て、スペインとかロシアでも報道されて大きな話題になった。要するにフィガロに「トッドというのはフランスでは変わり者と見られている。一種の破壊論者と見られているが、日本ではトッドが受け入れられている。しかも『第3次世界大戦はもう始まっている』という衝撃的なタイトルの本が10万部以上、売れている」というふうに出ていた。これが横田さんに対する1つの回答になっていると思う。
政治エリートは表面上、「日米同盟を重視してアングロ・サクソンと一緒にやっていこう」と言っているのだが、体は政治エリートのいう通りに動いていない。なぜあんな文書(安保3文書)をつくっているのに、殺傷能力のある兵器を1つもウクライナに送らないのか。なぜ(ロシアの)海産物の輸入を日本は止めないのか。このちぐはぐな状態が出ていることがこの国の底流、民意、我々の集合的無意識ではないかと私は思っている。その集合的無意識から大きく乖離したところでは政治は動けない。
だから勇ましいスローガンを掲げたいろいろな講演会とかに、いろいろな人たちが義理で参加するのだが、それと同じ考え方をもっているのかと言ったら、そうではない。そこの構図が面白いところだと思う。
そうすると、メデイアの課題は何かというと、とくに横田さんがウクライナ戦争のなかでも初動の時期から日本全体がウクライナの戦争を支持しようと言ったときに、「いや、私は違う」というのではなくて、それと違う見解を、たとえば、「鈴木宗男が言っていた」「佐藤優が言っている」ということを丁寧に紹介してくれた。横田さんの発信から多様性が出てきたわけだ。
そういう多様性を担保したメディアとして今、個人が力を持っているのであって、そのネットワークがかつてないくらいの影響力をもつようになった。そうすると、先ほど私はインターネットにはネガティブな側面があって重視していないとも言ったが、これはインターネットがなければできなかったポジテイブな側面だ。そういったことを総合的に考えてみると、まだまだ、日本の民意と、民意に拘束されている政治エリートも捨てたものではない要素がある。だから、そのなかの『殺傷兵器をウクライナに提供しない』という部分をきちんと伸ばしていく。でも今、率直にいうと、不安がある。勢いに流されて一線を踏み越えてしまうのではないか、非常に心配だと感じている。」
つまり、私の違和感に対する佐藤氏の回答は、櫻井氏ら主催の“軍拡緊急集会”に公明党と維新が参加したのは義理にすぎず、同じ考え方をもっているわけではないというものだ。とすれば、西側諸国と足並みをそろえる岸田政権に対して異論を唱える可能性は十分にある。今後、両党の国会議員(とくに維新の鈴木宗男参院議員)の言動が注目される。
(了)
【ジャーナリスト/横田 一】
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