2024年11月24日( 日 )

総務省文書「捏造」発言で窮地の高市大臣が推進する産業版秘密保護法(後)

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 熱い思いを語った高市大臣に対して、約500人の参加者から拍手が沸き起こり、司会者もこんなエールを送った。「ロシアのウクライナ侵攻や中国の脅威など日本を取り巻く国際情勢が不安定ななか、安倍元総理が凶弾に倒れられました。深い悲しみのなか、私たち国民は高市先生のような新たな政治のリーダーを心待ちにしていました。私たちも先生と志を同じくして、活動をしてまいりたいと思います!」

 そして高市大臣に花束贈呈が行われた後、最後は万歳三唱だった。発声者が登壇して「祖国日本の繁栄と平和。皆さまのご多幸を祈願いたしまして「万歳」と叫ぶと、起立した参加者が「万歳」と呼応するやりとりが三回繰り返され、高揚感とともに集会は終了した。安倍元首相への絶対的服従が特徴のように見える高市大臣が銃撃事件後、その遺志を引き継ぐかたちでS・C創設に尽力するのは自然の流れなのかもしれない。

    岸田首相がSC法制化に動き始めたのは、集会から3日後の2月14日。官邸で経済安保推進会議が開かれ、S・C創設についての議論が行われ、岸田首相は「同志国との円滑な協力のために重要で、産業界の国際的なビジネス機会の確保・拡充につながる」と意義を強調、こんな指示を出した。

「SC制度の法整備などに向けた検討を進める必要がある。高市大臣は制度のニーズや論点などを専門的な見地から検討する有識者会議を立ち上げ、今後1年程度をめどに可能な限り速やかに検討作業を進めてください」

 産経新聞は同日、「機密資格で有識者会議設置 首相指示」と報じたが、高市大臣講演を聞いたばかりの私には「岸田首相が指示するように高市大臣が働きかけた」としか見えなかった。岸田首相から指示される前から高市大臣はすでに準備を始めており、昨年から説得を続けた結果、岸田首相がゴーサインを出したのが実情なのだ。

 岸田政権(首相)の実態が透けて見えてくる。弱小派閥出身の岸田首相は、自民党最大派閥の安倍派の神輿に担がれた“お飾り”にすぎず、イエスマンであり続けないと引きずり降ろされる宿命を背負っているといえるのだ。この党内力学に注目すれば、総裁選で勝利して首相の座を射止めたのに、高市政権誕生と同じような状況に陥っている“謎”が読み解ける。

 安保三文書(防衛費倍増や敵基地攻撃能力)や原発回帰(60年間の運転期間延長)など安倍元首相がやり残した課題(安倍派は「遺言」と位置づけている)を、岸田首相が具体化していくのは、安倍派の要求に「ノー」といえない“安倍背後霊内閣”の宿命といえるのだ。

 今回、岸田首相が安倍政権時代の放送法解釈変更を撤回しないのも、安倍元首相の指示に忠実だった高市大臣を更迭しないのも、死者の呪縛から逃れ切れていないことを物語るものに違いないのだ。

(了)

【ジャーナリスト/横田一】

(前)

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