「麻薬」のような住宅政策~自治体間による子育て世代奪い合いのなかで
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4年に一度の統一地方選挙戦がスタートした。争点の1つとなっているのが少子高齢化と人口減少への対策の在り方。立候補者の多くがそれぞれの自治体において、子育ての世代の人口流入を促すことを意識した政策アピールが行われている。
彼らの流入と流出防止、定住によって、自治体の税収増につながるだけでなく、地域の活性化も期待できるからだ。ただ、受け入れるためには、それなりの基盤整備も求められる。
そこで気になる報道があった。『日本経済新聞』(3月24日付朝刊)「住宅規制 緩和続々 自治体、子育て世帯誘う」と題した記事だ。記事中では、宅地開発の規制を緩和し、従来よりも敷地面積が狭い宅地開発を可能にするといった政策をとる自治体の事例が紹介されている。そうすることで、分譲開発を活性化させ、若い世代を呼び込むのだという。
ただ、全国にある住宅戸数はすでに全世帯数を大幅に上回っており、空き家の増大が社会問題化し、自治体の魅力や健全性を損なう要因になっている。
空き家を増やす可能性がある住宅開発の規制緩和
このため、規制を緩和して住宅供給量を増やすというのは、ある意味、麻薬のようなものといえる。
一時的に人口や税収が増加するという「快楽」はあるが、空き家のさらなる増大という強烈な「苦難」を、将来的にもたらすとみられるからだ。ましてや、敷地面積が狭い住宅地の開発は、安かろう悪かろうの質の低い住宅を増やす可能性がある。
それらは、近い将来の空き家予備軍といえ、本来は供給に規制を強めるべき対象。空き家増加の抑制が求められるなか、わざわざ規制を緩和までして住宅供給を増やすのは、時代に逆行するものともいえる。
日経記事ではその一方で、低所得者向けの公営住宅の入居要件緩和により、子育て世帯の入居を容易にする富山市の取り組みなども紹介されている。既存の建物を活用するものであり、空き家抑制にもつながることから評価できる取り組みといえそうだ。
少子高齢化による人口減少は全国的な課題であり、自治体間で子育て世代を奪い合おうとする様子はいささか見苦しい。
中長期的かつ、より広域的な見地による政策も必要である。とはいえ、子育て世代向けの住宅政策1つをとっても、それが難しいのが現在の選挙制度でもあるのだが…。
【田中 直輝】
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