2024年12月22日( 日 )

中国でカルフールが存続危機に 半分の店舗を閉鎖

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北京市 街並み イメージ    グローバルに事業展開している小売業大手として初めて中国に進出したカルフール(中国語名は「家楽福」)。大型店舗をモデルとした10数年間の取り組みで、中国のスーパーマーケットチェーンの上位3社にも数えられた。カルフールは中国での知名度が高く、とくに上海や北京などの都市部では知らない者はいないほどだ。 

 中国は1992年、外国企業に対して一部地域で合弁での小売業参入を認め、その3年後に事業範囲をアパレルやデパートから食品やチェーン営業にまで広げて、本格的に門戸を開放した。ヨーロッパでトップ、世界で2番目のチェーン小売グループであるカルフールは、中国で初めて大型店舗というスタイルを打ち出し、外資系小売ブランドの一番乗りをはたしたのである。

 後にカルフールの強力なライバルとなり、対照ブランドとなったウォルマートや、小売チェーンの異色であるメトロが中国に進出したのは遅れること96年である。しかしカルフールの好況は続かず、食の安全問題や経営効率の低下を受けて、業績が伸びなくなっていった。  

 カルフールの収入源は、主に3つからなる。ます1つ目は、「フロント粗利」といわれる販売商品の売値と仕入れ値の差額。次に2つ目は、テナントや販売ブースの賃貸料。そして最後に3つ目は、仕入先から徴収する「進場費(出店料)」や「上架費(陳列料)」、販売手数料、宣伝広告費、販売員管理費などといった雑多な費用、いわゆる 「仕入先搾取」に当たる部分である。

 カルフールの絶大な集客力を目当てに仕入先は「出店させてください」と頭を下げお願いする立場にあるから、どんな費用でも払わざるを得ない。カルフールヘ出店・出品するだけでも非常な名誉であり、ブランドカを誇示する販促費と思えばやむなしといえる。一部の大手仕入先が抗議したり、ボイコットしたりして抵抗を試みたものの、いずれも抑えつけられ、「クーデター」は失敗に終わった。

 カルフールは2010年に中国の店舗数がウォルマートに抜かれ、その2年後には売上規模でも逆転された。業績は下り坂の一途で、19年にはチェーンスーパーのベスト10から陥落した。その後一気に挽回を図ろうと、同年には大規模店舗を85店も開設し、店舗数が4割近く増えた。

 しかしこの大胆な取り組みも挽回に至らず、逆に無理な投資で赤字に陥ってしまった。カルフール中国の収益は17年が11億元(約212億円)の赤字、2018年が5億7,800万元(約111億円)の赤字となった。カルフールだけでなくウォルマートもメトロも不振に陥ったほか、テスコ、オーシャンが買収され、ロッテマートやイーマートが撤退するなど、外資系小売業の閉店ラッシュが数年にわたり続いた。

 これらの理由として、大規模店によるコストや効率の悪さという社内要因と、Eコマースの台頭という社外要因が挙げられる。各種の商品を売り出し始めたアリババ系通販サイトや京東(JD)などの後塵を拝してしまった。

 19年6月末に中国の小売大手である蘇寧易購が、48億元(約926億円)でカルフール中国の株式80%を買収し、2年後には無条件で固定価格により残りの20%分も手に入れることになった。これによりカルフールの経営再建は蘇寧易購の創業者である張近東氏に委ねられることになった。

 ところがまた、蘇寧易購も事業の悪化や流動性の問題でスパイラルに陥り、カルフールの苦境を救うに至っていない。

 中国フランチャイズ協会によると、中国のカルフール店舗数は16年には321店舗を数えたが、20年には228店舗に減少。21年下半期だけで7つのハイパーマーケットを閉鎖し、同年のカルフール中国の営業利益は前年比で10%以上減少した。

 22年3月31日、北京市のカルフール中関村店は閉店した。04年にオープンした同店は面積1万6,000m2を誇り、「アジア最大のスーパー」と言われた。地元住民の住竹韓さんは「開店当時はとてもにぎやかだった」と振り返る。地下の賃貸エリアは多くの店舗が集まっていたが、近年は次々と店舗が変わっていった。ある衣料品店の店員は 「安い品物をそろえても売れ行きは良くならない」と明かした。

 近くの住民は「大きいスーパーは買い物に時間がかかる。たとえば、生鮮食品エリアと生活用品エリアはフロアが異なり、少しの買い物でも移動が必要となる。今はいろいろな方法でコスパの良い日用品を買うことができる」と話す。

 一時は321店もあったカルフールは、店舗数は減少の一途をたどり、22年6月末には半分以下の151店となり、残った店も経営が苦しくなっている。21年には33億3,700万元 (約644億円)、2022年上半期は6億6,200万元(約128億円)の赤字計上となっている。

 カルフールだけではなく、中国で大手スーパーの閉店が相次いでいる。推計によると21年以降、13社のスーパーで100軒を超える店舗が閉鎖。インターネットの時代となり、スーパーマーケットが必要とされなくなったわけではないが、一か所で多くの品物が買える従来型のスーパーは消費者にとって魅力でなくなり、カルフールは中国で最後の存続危機を迎えている。


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