2024年11月23日( 土 )

九州地域の人口減少が加速 今後約30年で4分の3に

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 2050年、九州地域全体(九州・沖縄・山口)の将来推計人口は、20年と比較して24.7%減の1,174万4,000人(20年:1,558万8,000人)にまで減少するという。(公財)九州経済調査協会(以下、九経調)は22年10月、このように国立社会保障・人口問題研究所(以下、社人研)の18年公表推計などの従来推計を上回るペースで人口減少が進むとの衝撃的な推計を公表した。その概要を紹介したい。また、調査を担当した九経調主任研究員・小栁真二氏にも話を聞いた。

福岡・沖縄も数年で減少に

 この推計は、九経調「2020年国勢調査に基づく2050年までの将来推計人口」『九州経済調査月報』(同発行、22年10月号、)において発表された。九経調はコロナ禍による婚姻減や出生減、テレワークの普及による地方への人口分散の影響を加味しており、社人研の『日本の地域将来推計人口(18年推計)』を上回るペースで人口減少が進むとの予測を示している。なお全国の将来人口について、コロナ前の推計であり単純に比較できるものではないが、50年の推計は1億192万3,000人(社人研『日本の将来推計人口(17年推計)』と、20年(1億2,614万6,000人、総務省統計局)から19.2%減となっている。

 調査方法については後述するとして、まず人口の推移の推計についてみていこう。九州地域全体の将来推計人口は、25年が1,515万1,000人、30年が1,455万7,000人、35年が1,388万6,000人、40年が1,315万7,000人、45年が1,244万4,000人、50年が1,174万4,000人となっており、人口増加が続いていた福岡県と沖縄県でも数年以内に減少に転じる見込みだという。

 県別に50年時点の推計人口をみていくと、20年と比較して最も減少率が大きいのは長崎県の36.3%減(20年:131万2,000人→50年:83万6,000人)だった。このほか30%以上の減少が見込まれているのは、山口県(35.5%減)、大分県(32.3%減)、宮崎県(31.9%減)、鹿児島県(31.8%減)。20%以上の減少が見込まれるのが熊本県(28.8%減)、佐賀県(28.4%減)。福岡県は16.9%減(20年:513万5,000人→50年:427万人)で、最も減少率が低かったのは沖縄県の5.9%減(20年:146万7,000人→50年:138万1,000人)だった。

 市区町村別では、30%超の減少が推計されている自治体が全体の6割に上っている。そのなかで50%超の減少が見込まれているのは23市町村に上り、福岡県では添田町が51.0%減、最も減少率が高いのは熊本県球磨村の83.6%減となっている。

 一方、増加が見込まれるのは福岡市博多区(4.6%増)、福岡市中央区(3.4%増)、福岡県福津市(19.2%増)、福岡県新宮町(1.1%増)、福岡県久山町(2.2%増)など、福岡県5市区町、熊本県1町、沖縄県10市町村の計16市区町村にとどまっており、福岡県と沖縄県を中心とした一部地域とその他の地域で明暗が分かれるかたちとなった。

 九経調は今調査での将来人口の推計にあたり、国立社会保障・人口問題研究所(以下、社人研)によるなどで、一般的に用いられるコーホート(同じ年に生まれた人々の集団を指す)要因法※を採用した。なお、転入・転出の仮定においては、従来一般的だった純移動率による手法ではなく、社人研の18年推計に準拠し、日本全体の転出者総数(プール)と転入者総数が一致するプールモデルを用いた。

※各コーホートについて、「自然増減」(出生と死亡)および「純移動」(転出入)という2つの「人口変動要因」それぞれについて将来値を仮定し、それに基づいて将来人口を推計する方法。

「2020年国勢調査に基づく2050年までの将来推計人口」を執筆した
(公財)九州経済調査協会事業開発部主任研究員・小栁真二氏に聞く

 ──2050年の九州の人口は20年比で24.7%減少するとのことですが、減少の要因としては何が考えられるのでしょう。

 小栁真二氏(以下、小栁) 最大の要因は出生数の減少です。日本の出生数は年々減少しており、21年は81万人、22年は80万人を割るといわれています。今後もこの流れは変わらないでしょう。

 ──福岡、熊本、沖縄の一部自治体のみが増加すると予測されています。

 小栁 福岡県を例に挙げますと福岡市博多区、中央区、糟屋郡新宮町、糟屋郡久山町、福津市といった福岡市中心部と周辺自治体が増加すると見込まれています。これらの地域に共通するのは、他地域からの転入によって若い人の数が多いという点です。若い人が少ない地域は、当然のことながら先細りしていくわけです。

 ──沖縄、熊本に関しては。

 小栁 沖縄の場合、出生率の高さに加え、流入が多いため社会増が見込まれるという背景があります。熊本は嘉島町のみです。しかし、22年4月に菊陽町で建設を開始したTSMCの工場のような個別の開発などは、今回の調査では加味しておりません。熊本県に関してはTSMCの新工場による人の流入が当然、予想されますので、それがプラスに作用することは間違いないでしょう。

 ──九州地域ならではの特徴といったものはありますか。

 小栁 九州はほかの地域と比べると出生率が比較的高く、進学や就職で福岡市に流入する傾向が強いのが特徴です。しかし、今後、若い人の数が減ってくると、必然的に福岡市に流入してくる人の数も減り、人口増加が続く福岡市といえども、いずれは減少に転じざるを得なくなります。そしてその時期は、従来想定されていたよりも早まるのではないかと考えています。

 ただ、他の地方都市に比べて有利な点が福岡市にはあります。それは東京や大阪などの巨大都市との地理的関係です。東北を例に挙げますと、東北には仙台市という大都市がありますが、東北の若者が進学・就職で仙台市に行くかというと、必ずしもそうではなく、仙台市を越えて東京へと向かう傾向があります。

 福岡市の場合は独自の経済圏「九州マーケット」を構築できており、そこは大きな強みでしょう。その相対的な優位性は今後も失われることはないと考えられますが、絶対的な人口増加のペースが鈍っているので、他の都市に比べて時期は遅いと思いますが、必ず人口が減少する時がやって来るでしょう。

 ──今回の調査を通じて感じたことは。

 小栁 社人研の『日本の地域別将来推計人口』は、15年実績を基に推計されているのですが、本推計は、それを下回っています。社人研はおそらく今年全国版の推計を、来年地域別の推計の最新版を公表すると思いますが、近年の出生数の減少などを加味し、下方修正されるのではないでしょうか。どれぐらい修正されるのかが気になるところですが、いずれにせよ、従来の想定よりもかなり速いペースで人口減少が進んでいるということはたしかです。

 巷では地方創生というと、東京一極集中の是正が取りざたされがちですが、出生率の引き上げにもっと注力すべきです。これは九州に限らず日本全国共通の課題だといえるでしょう。

<INFORMATION>
(公財)九州経済調査協会

理事長 :高木 直人
所在地 :福岡市中央区渡辺通2-1-82電気ビル共創館
創 立 :1946年10月
基本財産:6億円


 同協会では以下の事業を行っている。

○九州の地域経済・産業に関する調査研究の実施ならびに助成
○九州の地域経済の振興に関する事業の実施ならびに助成
○資料の収集・整理・利用促進ならびに地域経済の振興に資する情報交流の促進を促すための経済図書館の運営
○九州の地域経済・産業の振興に資する経済団体等の支援
○その他、九州の地域経済・産業の振興に必要な事業

  •  具体的には「自主研究」「シンクタンク業務」「BIZCOLI(経済図書館)の運営」を事業の柱に据えている。「自主研究」では、会員向けの定期刊行物(『九州経済調査月報』『図説九州経済』『九経調ニュースレター』)や「DATASALAD」※などのデジタル情報を配信する。「シンクタンク業務」では、自治体や国の出先機関から依頼を受けて各種調査を行う。「BIZCOLI(経済図書館)の運営」では、経済書・経営書、業界情報などの提供や、講演会やセミナーなどの実施、レファレンスサービスなどを行う。そのほかにも九州経済同友会の事務局機能を担うなど、経済団体の支援なども行っている。
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