【中国総領事】「両会」から見た中国経済と中日協力のチャンス(前)
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中華人民共和国駐福岡総領事
律 桂軍 氏3月、中国で全国人民代表大会などの大型会議が開催され、今年の経済成長目標が5%と定められたほか、首相など経済運営を担う新たな体制が発表された。中国駐福岡総領事の律桂軍氏より、一連の会議で示された中国経済の目指す方向性およびそのなかでの日本・九州との協力の可能性に関する論考を寄稿していただいたので掲載する。
このほど、中国の全国人民代表大会と中国人民政治協商会議の2つの会議が成功裏に開催されました。会期中、習近平国家主席は重要な演説を行い、李強首相は記者会見に出席し、中国や外国の記者からの質問に答えました。この「両会」は、中国にとって大きなイベントであり、中国の近代化の道筋をより深く理解し、将来の発展に焦点を充てるための重要な窓口となりました。
大会からの重要なメッセージとは、中国が揺るぎなく質の高い発展を推進し、「人民第一」を常に堅持し、発展と安全をより良く調整し、人類運命共同体の構築の推進に努めるというものです。中国は高水準の対外開放をしっかりと推進し、平和、発展、協力、Win-Winの旗印を高く掲げ、開かれた世界経済の構築を推進し、グローバル発展イニシアティブとグローバル安全保障イニシアティブの実施を促進し、世界の平和的発展にさらなる安定と積極的エネルギーを加えていくでしょう。
1.中国の経済発展は多くの挑戦とチャンスに直面しています。世界の視点から見ると、今年の世界経済の状況は総じて楽観的ではなく、不安定・不確実・予測できない要素が多く、いかにして成長を安定させるかが世界各国の試練となっています。中国の視点から見ると、中国は巨大な市場、完全な産業システム、豊富な人的資源、強固な発展基盤、顕著な制度的優位性など、発展のための多くの利点と条件を備えています。
中国の「人口ボーナス」は消えておらず、「人材ボーナス」は加速度的に放出されています。中国の人口増加はプラスからマイナスに転じ、人口ボーナスが消滅するのではないかと心配する声もあります。つい先日、李首相は「人口ボーナスは総量だけでなく、質にも依存すべき」「人口だけでなく、人材にも依存すべき」と強調しました。9億人近い労働力人口と毎年1,500万人以上の新規労働者を抱える中国の豊富な人的資源は、依然として中国の優位性です。
さらに重要なことは、中国の高等教育を受けている人の数が2億4,000万人を超え、新しい労働力の平均教育年数も14年に達していることです。中国の「人口ボーナス」は消えておらず、「人材ボーナス」は具体化しつつあり、発展の勢いは依然として強いといえます。
もちろん、中国は多くの課題にも直面しています。今年、中国は経済成長率を5%前後とする目標を掲げました。中国経済の規模は、すでに120兆(約18兆米ドル)を突破しており、このような高い基礎条件の基で5%前後の成長を実現するのは容易ではありません。
困難に直面したとき、中国は安定優先の方針を堅持し、安定のなかで進歩を求め、経済の全体的な向上を促進していきます。安定のカギは成長、雇用、物価を安定させることであり、進歩のカギは質の高い発展で新たな進歩を遂げることであります。具体的な政策手段としては、第1にマクロ政策の組み合わせ、第2に需要拡大の組み合わせ、第3に改革・革新の組み合わせ、第4にリスクの予防・解消の組み合わせが挙げられます。
最近、中国の経済運営は安定と回復の傾向を示しており、一部の国際機関も今年の中国の経済成長に対する期待を高めており、中国経済の見通しが非常に明るいことを十分に示しています。
2.中国には今年やるべきことがたくさんありますが、そのなかでも次の2つの分野を取り上げたいと思います。
(1)質の高い発展の推進に力を入れていきます。会期中、習主席は江蘇省代表団の審議に出席した際、とくに「質の高い発展」という主要任務をしっかりと把握する必要性を強調しました。中国は経済と社会の発展において多大な成果を上げ、GDP総額は着実に世界第2位となりましたが、発展はまだ不均衡で不十分です。14億人を超える人口に発展の成果をおよぼすとなると、どの指標で測っても、成果は1人あたりの平均で見ると相対的に限られています。今、中国の発展は「しているかどうか」の問題でありますが、次のステップは「良いかどうか」の問題の解決にもっと注意を払うことです。とくに科学技術イノベーションの向上、現代産業システムの構築、発展のグリーン転換を推進することです。全体的に見ると、中国は新しい発展理念を完全に、正確に、全面的に貫徹し、新たな発展の枠組の構築を加速し、質の高い発展を推進するよう努力します。
(2)改革開放を揺るぎなく深化させます。今年は、中国の改革開放45周年です。改革開放は現代中国の運命を決めた重要な政策であり、中国式現代化を推進し、第2の100年目標を達成する歴史的なプロセスにおいて、社会主義市場経済の改革の方向を堅持し、高いレベルの対外開放を推進し、改革開放の深化で発展の勢いと活力を絶えず強化していきます。
対外開放は中国の基本的な国策であり、外部情勢がどのように変化しても、私たちは堅実に前進していきます。たとえば、昨年「中国国際輸入博覧会」が成功裏に開催されました。これは、中国が自国の市場を世界に開放し、発展のチャンスを共有するための大きな取り組みで、新型コロナが流行するなかでも中断することなく5回連続で開催され、昨年は127カ国・地域から2,800以上の企業が出展しました。博覧会は、大きく開かれた中国市場が、あらゆる国の企業の成長にとって絶好の機会であることを十分に示してきました。今年も、高水準の国際経済・貿易ルールに応じて、さらに開放を拡大していきます。
中国商務部が発表した最新の統計によると、今年1月の中国の実質外資利用額は1,276億9,000万元(約2兆4,400億円)、前年同期比14.5%増であり、規模は安定してかくだいしています。中国の開放の扉はますます広く開かれ、環境はますます良くなり、サービスはますます良くなります。開放的な中国は、日本企業を含む世界中の企業が中国に投資し、ビジネスを立ち上げることを歓迎します。
ここ数年、アメリカでは「デカップリング」論を取り上げる人がいます。中国の統計によると、昨年、中国と米国の貿易額は過去最高の約7,600億米ドル(約100兆円)に達し、中国と日本の貿易額は約3,574億米ドル(約47兆円)でありました。外国企業の大半は、中国の今後の発展を楽観視しており、日米企業を含む多くの企業が中国との協力によるWin-Winを望んでいます。22年、中国の外資実質利用額が過去最高の1,890億米ドル(約25兆円)以上となり、3年前の2019年から500億米ドル近くも増加しました。これは、中国が依然として世界の投資が多く集まる場所であることを示しています。これらのことは、中日、中米の協力には大きな潜在力があり、包囲、抑圧、デカップリングは誰にも良い影響を与えないことを示しています。
(つづく)
<プロフィール>
律 桂軍(りつ・けいぐん)
1967年生まれ。99年中華人民共和国駐日本国大使館アタッシェとして着任。以後、中国外交部アジア局処長(課長)、駐日本国大使館参事官、外交部アジア局参事官、駐シドニー総領事館副総領事、駐日本国大使館公使参事官を歴任。2020年6月、駐福岡総領事に着任。関連記事
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