2024年11月24日( 日 )

【中国総領事】「両会」から見た中国経済と中日協力のチャンス(後)

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中華人民共和国駐福岡総領事
律 桂軍 氏

 3月、中国で全国人民代表大会などの大型会議が開催され、今年の経済成長目標が5%と定められたほか、首相など経済運営を担う新たな体制が発表された。中国駐福岡総領事の律桂軍氏より、一連の会議で示された中国経済の目指す方向性およびそのなかでの日本・九州との協力の可能性に関する論考を寄稿していただいたので掲載する。

 3.新型コロナウイルス流行から3年、中国共産党の力強いリーターシップの下、中国人民は心を1つにして新型コロナと戦い、重大かつ決定的な勝利を収めました。この3年間、中国は常に人民第一と生命第一、科学的で精密な予防と管理を堅持し、状況に応じて予防と管理対策を最適化・調整してきました。ウイルスの病原性が強かった時期、中国は「B類(乙類)の感染でA類(甲類)の対策」を断固として実施し、人々の生命と健康を効果的に守り、ワクチンや医薬品の開発、ワクチン接種の普及のために貴重な時間を稼ぎました。ウイルスの病原性が弱まり、中国の予防・治療能力が向上したことで、中国は予防管理対策の最適化・調整を重ね、タイミングよく「B類の感染でB類の対策」に切り替えました。人口が多く、不均等な発展が存在する大国である中国が、2カ月以内に流行の予防と制御の円滑な移行を実現し、いち早く正常な経済・社会秩序を取り戻したのは容易なことではなく、奇跡だと言われています。

律 桂軍 中国駐福岡総領事

 4.中国との交流と協力の強固な基盤。九州は古くから中国との協力の玄関口です。中国は九州および日本にとって最大の貿易相手国であり、主要な投資先でもあります。双方の優位性を見据え、さまざまな分野で協力が期待されます。

 (1)ハイエンド製造業。九州は先端科学技術でとくに発展しており、たとえば自動車生産の日本全体に占めるシェアは上昇し続けています。一方、中国は有人宇宙飛行、月探査、深海・地球深部探査、スーパーコンピューター、衛星航法、量子情報、原子力技術、大型航空機製造、人工知能、生物医学などの分野でイノベーションが起きています。今後もイノベーションを起こすための発展戦略を深化させ、国際的な科学交流協力を推し進めます。

 (2)グリーン産業。九州は脱炭素ビジネスに取り込んでいます。太陽光発電、洋上風力発電と海洋エネルギー利用、水素エネルギー、蓄電池技術などエネルギー脱炭素が進み、各分野の省エネルギーを推進し、日本全国に先駆けています。中国はグリーン・低炭素型開発、省エネルギーと炭素削減を着実に推し進め、カーボンピークアウトとカーボンニュートラルを科学的かつ着実に推進します。

 (3)物流産業。九州は地勢的ポジションに優れ、中国、韓国などに近く高いポテンシャルを有します。博多港、北九州港などは国際物流の中枢としてますます重要な役割をはたしていくでしょう。一方、中国は「一帯一路」構想を着実に推し進め、「中欧班列」と呼ばれる中国と欧州を結んでユーラシア大陸を横断する貨物列車を開通し、新たな陸上・海上回廊の整備を促進し、強靭なサプライチェーンの構築に取り組んでいます。

 (4)農林水産業。九州は農業産出額で全国の約21%、海洋漁業・養殖業産出額で全国の27%を占め(19年)、日本の食糧供給基地として位置づけられます。食品産業が発達し、あまおう、辛子明太子など日本を代表する特産品が数多く挙げられ、中国でも広く知られています。一方、中国は農村活性化戦略を精力的に実施し、農業・農村の現代化を加速しています。そのなかで農村の特色ある産業を発展させ、農民が豊かになるノウハウを広げ、食料・重要農産物の安定生産・供給の強化に努めていきます。

 以上で挙げたように、九州と中国の間の将来の地域協力には大きな可能性が潜んでおります。九州経済界の皆さまが中国の発展のチャンスをのがさず、新時代の要請にふさわしい中日関係の構築に積極的に貢献することを期待します。

(了)


<プロフィール>
律 桂軍
(りつ・けいぐん)
1967年生まれ。99年中華人民共和国駐日本国大使館アタッシェとして着任。以後、中国外交部アジア局処長(課長)、駐日本国大使館参事官、外交部アジア局参事官、駐シドニー総領事館副総領事、駐日本国大使館公使参事官を歴任。2020年6月、駐福岡総領事に着任。

(前)

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