七隈線、博多駅への延伸による効果と今後の課題(前)
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運輸評論家 堀内 重人
福岡市地下鉄七隈線の天神南~博多間が3月27日に開業した。これまでJRと七隈線の乗り換え利用者は、博多・天神間で空港線を利用し、さらに空港線と七隈線の間の天神・天神南駅間を徒歩で移動する必要があったが、七隈線が直接博多に乗り入れたことにより利便性が大幅に向上した。開業による天神地区・川端地区などの動きも含め、紹介したい。
地下鉄七隈線の概要
福岡市地下鉄七隈線は、福岡市交通局が運営する、福岡市西区の橋本駅から同市博多区の博多駅までを結ぶ13.6kmの路線であり、日本で4番目に開業した鉄輪式で走行するリニア駆動のミニ地下鉄である。
地下鉄七隈線が開業するまでは、福岡市西南部は軌道系交通がなく、同市の天神や博多などの都心部へ行く際は、西鉄の路線バスを利用するしか公共交通がないため、道路交通渋滞などに遭遇すると、時間を要し不便であった。
そこで福岡市西南部と都心部の天神や博多を結ぶ路線として、福岡市地下鉄の七隈線が計画され、2005年2月3日に橋本~天神南間が開業した。
だが博多や福岡空港へ行く際は、天神南駅で通路を歩いて福岡市地下鉄空港線への乗り換えが強いられるなど、不便さが残っていた。そんな中、悲願であった天神南~博多間が3月27日に開業して、博多へのアクセスだけでなく、福岡空港へ向かう人の乗り換えも便利になった。
都心部の六本松~天神南間は、かつて西鉄の軌道線(路面電車)である福岡市内線が、城南線や渡辺通り(福岡県道602号)を走行しており、地下鉄七隈線はそれらの道路の地下を通っている。
七隈線の沿線には、中村学園大学、福岡大学などの大学がある。朝のラッシュ時に都心へ向かう通勤客とは別に、反対方向にも通学客の需要が見込める路線である。それゆえ大学の講義の開始時だけでなく、終了時にも、七隈線の福大前~天神南間が混雑していたが、博多まで延伸開業したことで、さらなる利用者の増加が期待できる。
七隈線の設備など
車両は、急曲線・急勾配に対応した鉄輪式のリニア駆動を採用している(写真1)。ATO(Automatic Train Operation)による自動運転が採用されているため、形の上では乗務員は不要ではある。だが緊急事態が発生したときのため、運転装置が装備されている。
運転は、平日は朝のラッシュ時が4分間隔、昼間は7.5分間隔、夕方が6分間隔で、土曜・休日は終日7.5分間隔で、全列車が橋本~博多間を通して運転される。
七隈線が、天神南~橋本間で開業した時から、転落事故を防止するため、全駅にホームドアが設置されており、今回の延伸開業した区間も同様である。また券売機や改札機など駅の諸施設には徹底したユニバーサルデザインが取り入れられている。
ただし七隈線は、空港線や箱崎線と相互乗り入れができない。七隈線も空港線や箱崎線も、架線集電で直流1,500Vで電化されているが、七隈線のゲージは、1,435mmの標準軌を採用しているから、1,067mmゲージの空港線や箱崎線とは線路幅が異なる。それ以外にも七隈線は建設費を下げるため、小断面のトンネルやリニア駆動式の小型車両が採用され、最大の急勾配が40‰であり、最小曲線半径が100mでもあることも理由である。
陥没事故による開業延期や今後の延伸計画など
博多駅への延伸が実現したが、それ以外に福岡空港の国際線ターミナルまでの延伸計画がある。筆者個人としては、天神南駅から中洲川端駅を経て、国際センターなどがある築港方面を結ぶ路線も、必要ではないかと考えている。このエリアは、軌道系の公共交通へのアクセスが脆弱であり、路線バスや自家用車に依存しなければならないからである。
延伸計画は、11年11月7日に行われた福岡市の発表で、七隈線の延伸線はキャナルシティ博多付近を通り博多駅までの1.4kmとなった。途中駅である櫛田神社前駅は、キャナルシティ博多に近いはかた駅前通り下に、また七隈線博多駅は、JR博多駅の博多口前にある住吉通りと、はかた駅前通りの交差点の下付近に設けることとされた。
だが七隈線博多駅に関しては、地下の埋設物が多いことや空港線がすでに開通していることもあり、地下25mという深い場所に建設された。博多駅で七隈線に乗車するには、空港線のホームへ下りた後、さらにエスカレーターなどで下へ降りる必要がある(写真2)。
七隈線の博多延伸開業は、当初は20年の予定とされ、12年6月11日に鉄道事業の「許可」を取得して、14年2月12日に起工式が行われた。しかし、16年11月8日未明に発生した道路陥没事故の影響で開業は予定よりも大幅に遅れた。
また、福岡市の高島宗一郎市長は、22年11月に、七隈線を博多駅から福岡空港国際線ターミナルまで延伸する方向で検討している旨も明かした。ルートは、博多駅から筑紫通りを通って、山王地区に中間駅を設置し、きよみ通りを通って福岡空港国際線ターミナルまで延伸するルートである。この延伸が実現すると、国際線ターミナルビルからも山陽・九州新幹線やJRの在来線が乗り入れている博多駅まで約5分で移動可能となる。
(つづく)
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