有田芳生氏の出馬で激戦となった山口4区補選(前)
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安倍晋三元首相の死去にともなう衆院山口4区補選(4月23日投開票)に11日の告示前からヒートアップしている。当初は、安倍後援会が推す自民党公認の吉田真次・前下関市議の勝利確実と見られていたが、統一教会問題を追い続けるジャーナリストの有田芳生・前参議員議員(立憲民主党公認)の出馬で状況は一変。吉田陣営が「立民は大変な候補者を出してきた」と危機感を募らせたのは、銃撃事件以降、テレビ出演が相次いだ有田氏に比べて、安倍派市議だった吉田氏は知名度で後れを取っているためだ。
知名度アップが至上命令となった吉田陣営は、「安倍昭恵夫人が吉田氏を連れて地元企業などを回り、『主人の代わりに立ってもらいますので応援をしてください』とお願いをしているそうです」(田辺よし子・元下関市議)。安倍元首相の後継候補と強調することで、浸透をはかろうとしているようだが、実際、5日に選挙事務所を訪ねて吉田氏の街宣日程を聞くと、「挨拶回りをしていて今日の街宣はありません」とスタッフは答えた。
もう1つの“武器”も安倍元首相の関連。事務所に置かれていた告示後の日程表を見ると、豪華メンバーが勢ぞろい。14日の総決起大会には菅義偉前首相と昭恵夫人、翌15日にも世耕弘成・参院幹事長、そして19日にもジャーナリストの櫻井よし子氏が応援に駆け付ける予定になっていた。“安倍応援団“がアベチルドレン候補を後押しするかたちで選挙戦を乗り切ろうとしていたのだ。
これに対して有田氏は、3月15日の出馬会見で「安倍政治の検証の必要性」を強調、統一教会問題・アベノミクス・拉致問題を三大争点と位置づけた。キャッチフレーズは「黙さず、闘う」。県議選が告示された3月31日には戸倉貴子県議の出陣式に出席、統一教会問題で連携する山口2区補選の予定候補・平岡秀夫・元法務大臣とともに挨拶。4月5日にも、2期目を目指す立民の酒本哲也県議(下関市選挙区)の個人演説会で挨拶。アベノミクスが所得増どころか物価高を招いている弊害を指摘、下関が統一教会ゆかりの地であることも紹介しながら、地元県議への支持を訴えた。県議選と補選の連動によって支持を広げようとしていたのだ。
そして、高杉晋作が結成して幕末史を変えた「奇兵隊」再決起を目指すべく、日本の政治を山口からただす「第三次奇兵隊」募集も開始。選挙活動資金の寄付やボランデイアの募集を呼び掛け、“安倍ブランド”を前面に出す吉田陣営に対抗しようとしているのだ。
自民党型組織選挙とは対照的な草の根選挙をスタートさせた有田氏が、出馬会見に臨んだのは3月15日。冒頭の挨拶では、出馬を決めた理由を次のように述べていった。
「この山口、下関・長門の地で今度補欠選挙が行われるということになりました。私は2つの理由で、自分が立候補しなければいけないという判断をしました。1つは安倍元総理がいなくなった、その後の議席を争う選挙で野党の候補者がいないということは絶対に避けなければいけない。有権者に選択肢を示さなければいけない。あえていえば、立憲民主党を含めて野党は闘わなければいけない。だから私は打診があったときに3日間考えましたけれども、立候補をする機会があるのであれば、闘わなければならないという判断をしました。それが第1点です。
2つ目の理由は、安倍元総理は非業の死を遂げられてから今年2月ですが、『回顧録』を出版されました。中曽根康弘元総理は自身の回顧録のなかで『政治家というものは歴史の審判を受けなければいけない』と書かれています。『安倍晋三回顧録』がある以上、私たちはこの補欠選挙を通じて、安倍元総理が行ってきた戦後最長の政治をどのように評価をするのか。これからの新しい政治をつくっていくために、どうしても検証していかなければならない。そのように思い、私は今度の補欠選挙に立候補することを決断しました」。
続いて有田氏は、統一教会問題・アベノミクス・拉致問題の三大争点について説明。
「私が考える争点は3つです。1つは統一教会問題です。いま『家庭連合』に名前を変えていますが、1954年に韓国で成立をしました。1958年から日本でもアメリカでも布教を開始しました。そして1968年には、韓国でそして日本で『国際勝共連合』という政治団体ができました。宗教の顔をもった統一教会が一方で政治団体をつくった。文鮮明教祖は韓国でも日本でもアメリカでも政治的な進出をしたいと考えていたのだけれども、韓国でもうまくいかなかった。アメリカでも失敗した。アメリカでは1970年代に、統一教会がアメリカの政治に影響を与えようとしているとして、フレーザー委員会がつくられて1978年11月1日には433ページもの英文のフレーザー委員会報告書が公表されました。アメリカでも韓国でもうまくいかなかった。だけど、この日本でだけ、統一教会、国際勝共連合は政治に深く深く浸透してきました。具体的にいえば、1986年の中曽根政権のときに統一教会は全国から女性信者を京都に集めて、国会議員の秘書養成講座を行った。結果的に1987年以降、今に至るまで自民党の国会議員の公設秘書、私設秘書のなかに信者たちが入り込んでいる。思想信条は自由ですから統一教会の信者が国会議員の秘書になることは悪いことではないと思う方もいるかも知れませんが、テレビではそういうコメントを発した人もいますが、そうではない。統一教会の組織というものは、すべて文鮮明教祖をはじめとした教団の意思で動きます。地下鉄サリン事件が起きて、それ以降、この30年間、統一教会はノーマークになってしまった。この空白の30年間で統一教会は政治家にさらに接近し、そして地方議会にも進出していった。この日本の政治を変えなければいけない。この山口県においても、統一教会の票をもらって当選した議員がいます。私は証拠ももっている。証言もある。そういう統一教会、日本の政治を歪めてきた。保守の立場の人からさえも認めてはいけない統一教会汚染を今度の選挙を通じて、徹底して打開をしていく。なくしていく。そのきっかけにしたい。それを私は、今度の選挙の第一の争点にしたいと思っています」。
(つづく)
【ジャーナリスト/横田 一】
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