2024年12月23日( 月 )

【インタビュー】旅行が人々に感動体験をもたらす コロナを経て「行けるありがたみ」を再認識

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(株)アドツーリスト
代表取締役社長 栗田 裕生 氏

 新型コロナウイルス感染症の蔓延で人流が抑制されたことにより、人の移動が前提であるツーリズム産業は大打撃を受けた。一方で、旅行機会の損失は「旅行に行く意味」について改めて考える契機となった。今回は、旅行の必要性、また旅行業界の置かれている状況と今後について、50年間にわたって旅行業に従事する(株)アドツーリストの栗田裕生社長に話を聞いた。

旅行業界は売り手市場へ

(株)アドツーリスト ​​​​​​​代表取締役社長 栗田 裕生 氏
(株)アドツーリスト
代表取締役社長 栗田 裕生 氏

    ──旅行業界は、現在どのような状況下にあるのでしょうか。

 栗田裕生氏(以下、栗田) ご存じの通り、新型コロナウイルスは旅行業界に甚大な影響を与えました。大手旅行会社や航空会社がコロナ禍で新規採用の中断、希望退職者の募集などの対策を講じたりしてきたことは、広く世間に知られていると思います。またこの間、多くの旅行関連業者が淘汰されてきました。

 しかしその影響も落ち着いつつあり、国内旅行者、インバウンドは急激に増加傾向にあります。そのため現在、深刻な人手不足に悩まされています。旅行者は増えているのに、受け入れられるホテルや旅館が減少している。宿泊できても、受け入れる宿舎が十分なケアを行うことができない。このような状況もあり、旅行業界はこれから2~3年ほど、超売り手市場になるでしょう。当社も2023年は新卒3名を迎えるなど、積極的に新卒を採用しているほか、経験者問わず中途社員の募集も並行して行っています。

 ──コロナ禍の受注数の変化を教えてください。

 栗田 コロナ禍に入ると、予約数は伸び悩みました。20年7月から「Go Toトラベル」が開始され、徐々に上向きになってきたと思ったのも束の間、緊急事態宣言などの措置が取られると、たちまち予約数は0になりますので受注数は一進一退という感じでした。近年はコロナが落ち着いてきたこともありますし、県別での「全国旅行支援」が22年10月に開始されました。年末年始は一時中断されていましたが、1月10日に再開されて以降、弊社の予約者数も右肩上がりで推移しています。

旅行が生み出す効果

 ──人々が旅行をする意味とは何だと思われますか。

 栗田 第一に「感動を味わいに行く」という目的があると思います。住んでいる場所から遠く離れ、普段とは違う文化や景観に触れることで、非日常空間を体験し多くの感動を得ることができます。私が実際に聞いた話では「自分をさらけ出すことができる」というものもありました。いつもとは違う場所で生活することで、世間体などにとらわれることなくオープンに楽しむことができるそうです。また、家族やパートナーとも、多くの感動体験や時間を共有することで、また違った関係性を築けるというのも、旅行が生み出す相乗効果の1つだと考えています。

 ──コロナ禍を経て、旅行自体に変化はありましたか。

 栗田 「旅行に行けない」という状況が、非日常の出来事でした。普段、買い物に行くためや、ちょっとリフレッシュするためとして気軽に旅行していた旅行者たちからは、「当たり前に行けていた場所も、『行けない状況』を脱して改めて訪問すると、初心に戻ったような、新鮮な気持ちで楽しむことができた」という声もありました。

 コロナ禍の3年間は旅行業者のサービスを完全に阻むものであり、相応の機会損失を余儀なくされました。それは旅行愛好家の方々も同じです。ただその経験を経て、旅行のありがたみを再認識できた方もおられるのではないでしょうか。

遠方の旅行がもっと身近に

 ──旅行の可能性と、貴社の将来展望についてお聞かせください。

 栗田 私が旅行業界に従事したのは今から約50年前のことです。その時代、福岡から東京に行くのは、所要時間が約15時間かかる旧国鉄が一般的でした。飛行機も飛んではいましたが、高価だったためなかなか手を出せるものではありませんでした。それが現在ではとても身近なものとなっています。ということは、科学の発展などに鑑みて、今から50年後には日本からヨーロッパやニューヨークまで、もっと手軽に赴けるような時代も訪れるかもしれません。自由に国境を越えて旅ができるようになったとき、その立役者となるのがまさに旅行業者です。

 近年は、インターネット上で手軽に旅行予約ができる時代になりました。しかし、その便利さとは裏腹に、予約後のトラブルやアフターフォローの不足感も散見されます。当社も自社国内旅行システム「スカイウィンドウ」を運営しています。自社が一貫して提供するシステムですので、困りごとがあれば直接お問い合わせいただき、即時サポートができる体制を整えています。

 当社は福岡・沖縄に引き続き、3拠点目となる東京営業所を3月に開設しました。旅行業界はこれからますます膨大な市場になると考えており、当社もこれから日本の主要都市、またニューヨークなど海外の拠点開設を視野に入れ、業容の拡大を図っています。

 一度きりの人生ですので、旅行を通して多くの感動を経験していただきたい。私たちはその案内役として、これからも魅力的なプランを提案していきます。

【立野 夏海】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:栗田 裕生
所在地:福岡市中央区天神4-9-10
設 立:1992年3月
資本金:2,500万円
売上高:(23/1)20億6,000万円


<PROFILE>
栗田 裕生
(くりた・ひろき)
1950年9月、福岡県鞍手郡鞍手町生まれ。73年鹿児島経済大学卒業。約20年間にわたる旅行業の経験を基に92年3月に(株)アドツーリストを設立し、2022年に設立30周年を迎えた。趣味は登山、家庭菜園。

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