2024年11月21日( 木 )

【福岡IR特別連載120】大阪IR、岸田政権、予想通りの政府承認(2)

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 筆者はこれまでに足掛け3年の歳月に亘り、福岡IR関連について可能な限りの事実を、また独自の視点で、具体的な調査を基に本論考を「特別連載」としてお伝えしてきた。それも今回で記念すべき“120回”を数えることになろうとは感慨深いものだ。

 そのように本件についてそれなりの取材・執筆を継続してきた筆者からすると、本日の西日本新聞見出し「大阪カジノIR認定へ、長崎見送りの公算…」(第1~2面)を含む各社マスコミの報道は、限りなく何かに遠慮しての伝え方であると勘繰らざるを得ない。

 ここ数十年、世界とは異なる日本特有の、また日本人全体に見られる、多種多様な事態に対処する"胆力の無さ"と"忖度"のし過ぎが、経済を中心として日本に衰退の一途をたどらせてきた。その日本人的特徴は報道機関、マスコミで働く人たちも同様であり、例外はない。

 ちなみに、地元長崎新聞などはいまだ本件を報道すらしていない。誠に嘆かわしいことだ。ペン先が鈍すぎてもうジャーナリストとはいえないであろう。

 繰り返しいうが、「長崎IR見送りの公算」とは、完全な「否決」を意味している。

ハウステンボス イメージ    筆者の手前味噌で恐縮だが、マスコミ各社は政府関係者のアナウンスをそのまま垂れ流すのではなく、各社独自の視点で調査報道すべきだ。要するに現状の「長崎見送り」という言い回しは、前回お伝えしたように、今月末の統一地方選挙後半の地元への影響を踏まえて、口を濁した言い回しをしているに過ぎないである。

 必要なら本論考を過去記事から遡ってつぶさに読んでいただきたい。一連の経緯を逐次、一目瞭然なかたちで具体的に解説してきた。

 長崎IR崩壊の原因は、基本的に当初から無茶苦茶なプランとその計画にあった。簡潔にいうと、現在のハウステンボス集客数約100万人という事実と、過去を遡っても同園の年間集客数が約300万人を超えたことは2度しかないのに、その3倍弱の数を本件申請の為の計画プランの逆算割出しに利用して、最終的な長崎IRの集客計画数を“670万人”(西日本新聞報道の840万人は当初計画で誤り)としたトンデモぶりなのである。

 これらは政治行政に対する"忖度"だらけの御用達アナリストがひねり出した数値を基に基本計画を作成したことから始まっている。自らの行動を反省修正することのない日本の政治行政機関とその取り巻きの行動様式は、現在も生き残って日本に巣食っているのである。

 福岡IRを打ち出す米国Bally'sが、昨年3月の記者会見で明らかにした"大都市圏福岡IR"の集客計画は、年間460万人で海外からの集客数はその5%未満というものなのに、長崎IRはそれをはるかに超える夢のような数値を並べていた。政府IR審議会のある程度のプロが見れば簡単に判断できる数字であって、長崎IRの計画はまことにお粗末とした言いようがない代物なのである。

 その後、米中覇権争いと日米経済安全保障などに鈍感な長崎県行政は、それらを考慮に入れることすらなく、中華系大手2社を公募し、あとから気付いて、止むなく恣意的にこれらを外し、経験値の低い小規模なカジノ・オーストリアに落札させたというのが本件の顛末である。これらの「出来レース」は今でも訴訟問題に発展しかねない。

 こういう具合であるから、長崎IR関連のこれまでの経緯における諸問題は枚挙にいとまがない。興味ある方は本論考の連載を遡って読んでいただきたい。

 要するに、地方の政治行政機関では、本件のような国際的巨大プロジェクトを実行することは無理があって、最初からその能力はないということを明らかにしている。また、地元民間企業にも、これに対応できる経験もなければ、能力的にも難しいというのが最大の理由であろう。

 ゆえに結論としては、本件の発端から昨年9月までのほぼすべて経緯において、人の良い、長崎県の政治行政関係者をならびに、その話を信じた民間組織の諸氏は、HIS澤田氏の「手のひら」に乗って踊らされ、最後は「寝首を掻かれ」るかたちで、中国習近平政権に近いPAG社にIR誘致可能性という付加価値がついた超高額な値段でハウステンボスが売却されただけの話しである。この時点で長崎IRは致命傷を負って、崩壊していたのだ。

 長崎IR計画とは、かつてない程の超高額な利回りによる「ハウステンボス転売」がコロナ禍で窮地に立った旅行業者HISを救い、結果として澤田氏個人の「1人勝ち」で終わっただけの茶番であり、長崎県の政治行政関係者のお粗末ぶりを晒しただけの話しである。

【青木 義彦】

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