2024年12月22日( 日 )

楽天モバイル、九州の孫請け企業救済に差別待遇?(前)

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工事代金未払いのあらましと、これまでの経緯

携帯電話基地局 イメージ    2022年8月に発覚した楽天モバイルの不正請求事件のあおりを受けて、九州・沖縄の5社が正当な工事代金を支払われずにいる問題は、いまだに解決のメドが立っていない。

 楽天モバイルが携帯電話基地局建設の業務を委託した(株)TRAIL(神奈川県相模原市、以下、トレイル)が、不正請求を行ったとして楽天モバイルから取引停止と口座の差し押さえを受けたため、トレイルからの委託で基地局工事を行った業者に対する工事代金が未払いとなっているという問題である。未払いが発生しているのは22年8月の支払い分から。より正確には、トレイルと下請業者との支払いサイトは月末締め翌々月払いとなっているため、22年6月の請求分からである。

 未払いを被っている5社のうち、福岡県内の2社は工事代金の支払いを求めて昨年12月にトレイルを提訴、今年3月上旬に2社の請求を認める判決が出た。ところが、トレイルは同月23日、東京地裁へ破産手続きの開始を申請し、29日、同地裁から破産手続開始の決定を受けたのである。

 資産の凍結を受けたトレイルからの、工事代金の支払いは実質的に難しいため、2社はトレイルへ工事を発注していた楽天モバイルに救済を求めている。

 しかし、楽天モバイルはといえば、トレイルの下請企業がトレイルから支払いを受けるべき工事代金についてはトレイルが自社に対して行った不正請求額に相当額が含まれるとして相殺を主張しつつ、トレイルに代わって工事費用の弁済を行うことに応じる姿勢を示してこなかった。

 2社による工事の成果を受領し、基地局として稼働可能なものはすでに稼働しているにもかかわらず、である。2社はその正当な対価を受け取ることができていないのである。

メディアに出た被害企業にのみ交渉をチラつかせる?

 ところがである。ここへきて、どうやら楽天モバイルは、救済を訴えている2社のうち1社に対してのみ救済に向けた交渉に臨む姿勢をチラつかせているらしいのだ。その1社とは、1億4,000万円の未払いに直面した1社(福岡県大野城市)で、代表が企業名を明かしてメディアに盛んに露出し窮状を訴えていた。その1社に対してのみ、楽天モバイルはアプローチをかけているというのである。

 メディアに企業名を出していない残りの4社としても、もちろんやましいことは何もない。だが、既存の取引先への影響などもあり、すべての会社がメディアに名前を出して被害を訴えることができるわけではない。楽天モバイルは、そのようにメディアに名前を出していない企業に限って、救済の求めを無視している様子なのである。

 これはいったいどういうことか。メディアに出た企業にだけ工事代金弁済の交渉に応じるというのは、メディアを介したさらなる訴えを抑え込み、自社イメージの毀損を防ぐための口封じではないのか?

合計約4,700万円の工事代金が未払いとなっているA社

 今回、楽天モバイルに救済を求めているものの、その訴えをまったく無視されている企業の1つ、北九州のA社が取材に応じてくれた。

 A社がトレイルに請求したにもかかわらず未払いとなっている代金は4,200万円弱。また、実質的に作業を行ったものの、トレイルとの契約で請求段階まで完成していないために未請求となっている金額は500万円弱。合わせて4,700万円弱である。

 A社とトレイルとの取引のあらましは以下の通りだ。

 A社がトレイルを通じて楽天モバイルの仕事を初めて請け負ったのは、20年末から21年。この初回取引については支払いを受けている。

 今回の未払い分に係る業務は22年1月に始まった。業務内容としては、楽天モバイルに指定されたエリアにおける、携帯電話基地局の設置場所の探索と地権者との交渉・契約、さらには、基地局の建設・監督までを請け負うことになっていた。

 A社はあくまでもトレイルの下請であるが、一連の業務に関してはトレイルの指示のみならず、同社を通じて楽天モバイルの指示確認を都度行い、設置場所の決定や地権者との契約可否などひとつひとつ同社の承認を得ながら業務を進めていた。1月に開始した一連の業務について、116局分の土地利用契約の締結が完了したのが6月のこと。この時点でようやく、A社は代金4,200万円弱の請求をトレイルへ上げることができたのである。支払いは翌々月末払い。つまり8月末に支払われる予定であった。

 ところが、8月半ばに不正請求事件が発覚、口座を差し押さえられたトレイルは支払いができなくなってしまった。

(つづく)

【寺村朋輝】

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