2024年11月24日( 日 )

「パッチワーク史観」で奏功した安倍談話(後)

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各紙それぞれデコボコの評価

sinbun01 談話翌日の15日、筆者はコンビニに行って、朝日、毎日、読売、産経、東京、JAPANTIMESの各紙を買って来た。「安倍談話」に関する記事、論評を読み比べる。それぞれにデコボコの評価があるのはやむを得ない。

 コラムとして水準以下の論評もあった。それが朝日新聞論説主幹の「座標軸」だったのは驚きだった。かなり支離滅裂なのである。それでも1面に掲載。談話の文脈に即して、こき下ろした朝日の「社説」よりもレベルが低い。
 問題はコラムの核になる「戦後に誇りと敵意」以下の40行である。安倍談話と無関係な「自民党内から聞こえて来る東京裁判否定の声」とか「与党議員から聞こえて来た言葉」などを列記して、「旧体制になじみそうな価値観」と断罪した。これを読んだ読者としては「談話とは関係ない話が多すぎる」と言うしかない。
 これを書いた大野博人という人物のキャリア、これまでの論説の水準は知らないが、とても「日本を代表するリーディングペーパー」の論説主幹のコラムとは言いがたい。久しぶりに朝日新聞を読んでびっくりした。朝日に人材はいないのだろうか。

 テレビ「報道ステーション」での保阪正康氏(昭和史研究家)のコメントを含めて、テレビや新聞の報道は、従来の自説(報道)との関連で、「我田引水」による安倍演説批判が目立った。
 保阪さんが批判していた「子や孫に謝罪の宿命を負わせたくない」にしても、その後に「世代を超えて、過去の歴史に真正面から向き合わなければなりません。謙虚な気持ちで、過去を受け継ぎ、未来へと引き渡す責任があります」というフレーズがあることに、彼は言及しない。「国際秩序への挑戦者」の解釈にしても、それは「懇談会報告」に、しっかり書き込んである事柄だ。
 重箱の隅をほじくる割には、バランスが悪い。とくに「天皇のお言葉」との対比で、自己の安倍批判を展開する手法には感心しない。保阪さんの近著は「安倍首相の『歴史観』を問う」。自説にこだわりすぎて、政治家・安倍の柔軟性を黙殺している。

 安倍「パッチワーク談話」の出来が良かったか悪かったか、その評価は国民それぞれの史観次第だと。個人個人の史観が尊重される市民社会では、それでよいのだということを、批判者も自戒しておくべきだと思う。

(了)

<プロフィール>
shimokawa下川 正晴(しもかわ・まさはる)
1949年鹿児島県生まれ。毎日新聞ソウル、バンコク支局長、論説委員、韓国外国語大学客員教授を歴任。2007年4月から大分県立芸術文化短期大学教授(マスメディア論、現代韓国論)。

 
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