人類は2026年に絶滅? 残された時間はあと1年(後)

国際未来科学研究所
代表 浜田和幸 氏

 地球環境の悪化と人口爆発により、食糧危機が深刻化するなか、「GMOフィッシュ」や「昆虫食」、さらには「ゴキブリ・ミルク」など、未来の食が注目を集めている。だが、環境汚染と生物多様性の崩壊が進む現在、人類だけが生き残れるという保証はない。技術革新と倫理、そして地球全体の生命系にどう向き合うかが、私たちの未来を左右する分岐点となっている。

GMOフィッシュと食糧危機への序章

 日本では「GMOフィッシュ」の研究に拍車がかかっています。遺伝子組み換え技術を活用し、魚介類、とくに高級魚の身を増やす実験が成果を上げており、政府による承認が間もなく下りると思われます。実験段階では自然の魚と比べ身の量が50%も増えることが確認されており、漁獲量が減るなかで日本漁業の救世主かと期待が寄せられているのです。

 「環境を危惧する科学者の会」(UCSUSA)によれば、世界各国の1万人以上の気候変動の専門家が口をそろえて「このままでは人類は滅亡する」との警告を発しているのですが、日本ではほとんど無視されています。氷が溶け出している北極海の海底ではメタンガスが噴出し、海中で溶けることなく、大気中に放出されているのです。

 ウクライナでの戦争やイランとイスラエルの攻撃の激化が米ロの核兵器の応酬になりかねない事態も憂慮されますが、地球全体が人も魚も動物も住めない環境に突き進んでいることも気にすべきではないでしょうか。

 なぜなら、毎日、200種類の植物、鳥、動物、魚、昆虫などが絶滅しているからです。すでに2万6,000種類の生物が地上から姿を消しています。それだけ生物圏(地表、水、大気)が汚染され、破壊されてしまえば、人類だけが生き残れるということはあり得ない話でしょう。

ゴキブリ・ミルクと人工食の時代

 国連食糧農業機関(FAO)では「人類が生き残るためには地球環境に負荷の少ない食料、すなわち、昆虫食が望ましい」との報告書を公表。しかし、FAOが提唱する「昆虫食」ですが、肝心の昆虫そのものが絶滅の危機にひんしているのです。

 そこで登場してきたのが、ビル・ゲイツ氏です。食糧危機にかこつけて「代替肉(プラントベースミート)」の普及に本腰を入れています。要は、肉も魚も野菜もすべて人工的につくるという壮大な「人類救済計画」を打ち出したのです。彼が連携する「世界経済フォーラム」でも、そうした政策を推奨しています。

 日本は少子化傾向に歯止めがかかりませんが、世界では途上国を中心に人口爆発が続いており、今世紀中には80億人から100億人にまで膨らむと予測されています。当然、限られた食糧資源をめぐる争奪戦が激化する雲行きとなってきました。

 そんななか、注目を集めているのが「昆虫食」や「代替肉」です。その旗振り役を演じているのがゲイツ氏ですが、彼が推奨するのが、「ゴキブリ・ミルク」です。インドの科学者らが2016年から始めた研究によれば、「パシフィック・ビートル」と呼ばれるゴキブリから得られるミルクには牛乳より3倍も多い栄養分が含まれているとのこと。

 これにはゲイツ氏はじめ、世界の投資家もビックリ。現在、ゴキブリ酵母が抽出され、ゴキブリ・ミルクの大量生産への準備が始まっています。タンパク質、脂肪、糖分、アミノ酸など、栄養分が十分に確保できるため、ゴキブリ飼育を通じて、地球温暖化をもたらしている牛など家畜を減らせるという触れ込みです。

昆虫食ブームと虫の惑星の終焉

 同様に、コオロギへの関心も高まっています。すでに、カナダではコオロギから代替肉が生産され、一般のスーパーマーケットで発売中です。オンタリオの食品メーカーでは毎週5,000万匹のコオロギから小麦粉とよく似た粉末を製造し、食品やスナックに使っています。カナダ政府はこうした昆虫食を広めるために850万ドルの補助金を支給しているほどです。というのも、コオロギ食は鶏肉の2倍、豚肉の4倍、牛肉の12倍の効率の高さで生産が可能と分析されているのです。

 我々の食生活は歴史的な転換点を迎えつつあるといえます。言うまでもなく、そうした食糧には超小型のマイクロチップが埋め込まれることになるでしょう。人類のすべての行動を監視し、コントロールすることさえ意図しているように思えます。そんな非人間的な世界を拒否せねばなりません。今なら、まだ春夏秋冬、自然の恵みを思う存分に楽しめます。
 実は、地球は「虫の惑星」にほかなりません。極地を除けば、地球上にあまねく存在しているからです。日本だけでも10万種類を超える昆虫が生存しています。しかし、最近、その昆虫類にも絶滅の恐れが出てきたとの指摘が相次いでいます。というのも、熱帯雨林が毎日8万エーカーも消滅中のため、そこに生存してきた昆虫類の75%から90%が絶滅の危機にひんしているというのです。

 「人類の生き残りにとって切り札になる」と期待の高まってきた「昆虫食」ですが、決して楽観できる状況ではありません。前述の通り、生物圏(水、地表、大気)の崩壊が続けば、「人類だけが生き残れることはあり得ない」という悲観的な結論に至るのも当然かもしれません。であれば、昆虫の飼育を含め自給自足体制の確立が急務ということになります。

 改めて、人間が自然の一部であることに思いをいたし、今こそ日本的な「もったいない」の省エネ・ライフスタイルと「助け合い」の精神を発揮する時ではないでしょうか。

(了)


浜田和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月自民党を離党、無所属で総務大臣政務官に就任し震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。著作に『イーロン・マスク 次の標的』(祥伝社)、『封印されたノストラダムス』(ビジネス社)など。

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