2024年12月23日( 月 )

日本株投資にベクトルが揃う23年春~新しい資本主義の好循環が始まる(中)

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 NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
 今回は4月13日発刊の第329号「日本株投資にベクトルが揃う23年春~新しい資本主義の好循環が始まる」を紹介する。

(2)株価本位に舵を切る政策(岸田首相、金融庁、東証)、外国人の熱い視線

投資の神様の日本に対するリスペクト

 これらの日本リスペクトの高まりは、すでに株式市場では織り込み済みである。投資の神様と尊敬されているウォーレン・バフェット氏は2020年5大商社に投資し、持ち分5%の筆頭株主になったが、今年さらに買い増し7.4%保有となった。過去70年間日本を素通りしてきたバフェット氏が日本株のウェイトを米国以外で最大にした。今週来日したバフェット氏は、「今後私は日本のすべての主要企業を観察する」と日本株に関心を示した。そればかりか「投資家というよりもビジネスパートナーとしてやっていきたい」と岡藤伊藤忠会長に語ったという。日本のビジネスモデルと企業そのものに対する最大限の敬意である。

図表4: バフェット氏購入後の5大商社株推移

株式市場は日本復活を織り込み済み

 世間に日本悲観論、日本卑下論が蔓延しているが、あらゆる事象の最先行指標である株式市場では10年前にそれらはすでに織り込み済みなのだ。日本株が最悪であったのは、バフェット氏が注目するよりもはるか前の震災直後民主党政権下の2012年末であり、以降日本株式は米国に次いで世界最高のパーフォーンス、2009年リーマン・ショック以降の株価上昇率も、2020年コロナショック直前の2019年末以降の株価上昇率も、主要国では米国に次ぎ2番手のパフォーマンスになっている。バックミラーを見ているメディア、学者・有識者の観測とは裏腹に、株式市場は極めて迅速かつ正確に日本の大復活を織り込んできているのである。

図表5: 主要国株価指数推移

ハゲタカの主張「株価が企業評価の絶対的尺度」に東証と金融庁が同調した

 「日本が資本主義になる」というコラムがFT電子版に掲載された(3月31日)。日本企業が株主価値の最大化に軸足をシフトさせ、株価上昇の期待が高まっている、という趣旨である。「日本企業は、(円高デフレという)困難ななかで、収益性を高めるという難しいことを成し遂げた。しかし、その利益を株主に還元するという簡単なことに手こずっている。日本企業の多くは、現金の山を抱えたまま、賃上げや自社株買いをほとんど行ってこなかった」が、それが劇的に変わるかもしれないというのである。

 まさしく、日本企業は儲けをため込み過ぎ、過剰貯蓄による資本効率の悪さが日本株安の原因となってきた。米国株のPBRが4倍前後へと上昇してきたのに対し、日本企業は1倍前後と世界最低で低迷している。アクティビストは日本の株価が割安なのは、経営者が株主の期待に応えていないからだと批判し、数々のTOB(企業買占め)を仕掛けてきた。実際、東証上場企業の自己資本比率はほぼ50%と、欧米の平均(30%前後)に比べて5割方高い。この過大な自己資本を自社株買いで株主還元すれば、自己資本利益率(ROE)が急上昇し株価が上がる。それだけで株主価値は大きく高まる。

図表6: 日本企業の自己資本比率推移/図表7: 日米欧上場企業負債資本倍率 D/Eレシオ/図表8: 主要国ROE推移/図表9: 主要国 PBR推移

 アクティビスト(通称ハゲタカ)のエリオット・マネジメントの圧力を受けた大日本印刷やシチズン時計が大規模な自社株買いを発表し、株価は3割以上高騰、PBR(株価/自己資本)は0.6倍前後からから0.9倍強へと大きく上昇した。次の自社株買い発表企業はどこかと世界の投資家は色めきたっている。

 このアクティビストの「株価を尺度とした企業経営」に東証と金融庁が同調した。東証は資本コストや株価を意識した経営を上場企業に求め、PBRが1倍以下の企業に対して、是正策を要求した。また鈴木金融大臣は、金融庁が株価評価の低い企業に対し、改善プランを求める方針であることを表明した(4月6日)。

株式市場が資金循環の要にある米国、日本も追随へ

 こうして余剰資金を自社株買いに振り向ける機運が急速に高まっている。自社株買いは2021年度8兆円、2022年度は10兆円に上ったとみられるが、2023年には15兆円規模まで飛躍し、最大の日本株買い主体になるかもしれない。米国ではリーマン・ショック以降の12年間で株価は7倍と急騰したが、この株高を唯一けん引したのが累計4.5兆ドルに上る企業の自社株買いである。米国企業は利益のすべてを配当と自社株買いで株主還元してきたが、それによる大幅な株価の値上がり益などで米国家計の純財産が90兆ドル(GDP比4倍強)も増え、それが米国の旺盛な消費を支えてきた。日本でも米国のように好循環が起きる可能性が濃厚になってきた。

図表10: 米国株式投資主体別累積投資額/図表11: 米国家計の資産、債務、純財産推移

日本株全員参加型投資ブームの予感

 岸田政権の資産所得倍増プラン「NISA」の改革で、個人資金の預金から株式への大きな資金シフトが始まっている。企業の自社株買い、家計の長期積み立て投資、機関投資家の債券から株へのシフトなど、日本人は全員参加型の株式投資に踏み出す前夜にあるといえる。日本株の出来高は、長らく外国人7割、日本人3割と、日本国内投資家不在の状態が続いてきた。これが変わるとなれば、外国人投資家が活気づくのも当然であろう。

図表12: 日本株式投資主体別累積投資額/図表13: 海外投資家日本株式累積投資額

(つづく)

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