日本株投資にベクトルが揃う23年春~新しい資本主義の好循環が始まる(後)
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NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
今回は4月13日発刊の第329号「日本株投資にベクトルが揃う23年春~新しい資本主義の好循環が始まる」を紹介する。(3)起動する「新しい資本主義」、アベノミクスの成果の上に
稼ぐ力の完全復活
上述のような好循環が今、期待できるのはアベノミクスにより稼ぐ力が完全復活したからである。2000年から2010年そしてアベノミクスが始まる2012年まで40兆円台で推移していた法人企業の経常利益は、アベノミクスが終わる2019年度に72兆円、2021年度には84兆円と倍増している。この稼ぐ力向上の上に立って2度にわたる消費税増税が可能となり、税収が顕著に増加した。2012年度の日本の一般会計税収は44兆円であったが2019年度は58兆円、2022年度の予算では65兆円と、10年前比5割増となっている。
次の課題は、企業所得を経済に還流させること、「新しい資本主義」の出番
内閣官房による新しい資本主義実現会議資料(2022年6月7日)では、「新しい資本主義においても、徹底して成長を追求していく。しかし、成長の果実が適切に分配され、それが次の成長への投資に回らなければ、さらなる成長は生まれない。分配はコストではなく、持続可能な成長への投資である。我が国においては、成長の果実が、地方や取引先に適切に分配されていない、さらには、次なる研究開発や設備投資、そして従業員給料に十分に回されていないといった「目詰まり」が存在する。その「目詰まり」が次なる成長を阻害している。待っていても、トリクルダウンは起きない。積極的な政策関与によって、「目詰まり」を解消していくことが必要である。」として、(1)賃金アップ、(2)スキルアップによる労働移動の円滑化、副業兼業の推進、(3)貯蓄から投資への「資産所得倍増プラン」策定、等の具体策を提示した。
なぜ、株価重視政策へシフトが正解なのか
この目詰まり解消の最も効果的方法こそ、株価重視への経済政策の転換である。岸田氏は当初の主張であるアベノミクス批判と見える分配重視の「新しい資本主義」の内容を換骨奪胎し、「成長と分配の好循環」というアベノミクス路線に回帰していった。端的にいえば、株価を軽視・無視していたスタンスから株価重視スタンスへの大転換を実行したのである。安倍元首相は2013年ニューヨークで外国人投資家を前に「Buy my Abenomics」と宣言し日本株高を謳ったが、岸田首相も2022年5月、それを真似て「Invest in Kishida」とロンドンの投資家に日本株式への投資を呼びかけた。この転換こそ、大正解であり、岸田長期政権化のカギとなるだろう。
今、米国はじめ先進国経済はまさに需要不足の淵にあると言ってよい。50年前のアメリカのリーディングカンパニーはGMやGEであるが、これら企業は儲かると工場を拡張し雇用を増加させ、次の経済拡大循環を引き起こしてきた。しかし、今のリーディングカンパニーであるアップルやGoogleは、儲かっても設備投資もしないし雇用もさほど増やさない。膨大な企業利益が需要創造と経済の拡大循環に結び付かないのである。その結果、企業の余剰は金融市場に滞留し、著しい低金利を引き起こしている。この企業の超過利潤と貯蓄余剰による低金利の趨勢は、今回のインフレと金融引き締めがあっても変わらない、とIMFは直近の『世界経済見通し』(2023年4月第2章)で分析している。
超過利潤還流の必須のチャンネル、株主還元
最も望ましい解決策は、生産性以上に労働賃金を引き上げ、家計消費を持続的に増加させることである。そのためには適度のインフレが必要であり、今の米国でそれが起きている。2015年くらいを底にして労働分配率が上昇し、またユニット・レーバーコストも上昇に転じている。こうした動きは、賃金上昇による消費の増加、格差の縮小、資本退蔵の解消という観点から望ましいことである。ここに高圧経済の必要性がある。しかし、賃金上昇を相当長きにわたって続けないと、この巨大なギャップは埋まらない。
ゆえに、しばらくは企業の超過利潤は、株主還元により実体経済に還流させるほかはないのである。米国の経済成長が先進国中で最も高いのは、株式市場を通じた企業の超過利潤還流のメカニズムがうまく機能しているからである。
岸田政権の株価重視政策へのシフトは、まさしく米国型の企業超過利潤の経済への還流を促すものであり、まったくもって結果オーライというべきである。
(了)
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