2024年11月22日( 金 )

福岡県議会の緑友会、大量落選で解散の危機(前)

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 今回の福岡県議会議員選挙は、各地で保守分裂となり、これまでの県政与党内の関係性に大きなしこりを残すこととなった。なかでも農政連系の会派、緑友会が会派存続の危機にあるという。現状をレポートする。

副議長内定者の落選

分裂 危機 イメージ    福岡県議会議員選挙から約2週間が経った。現在の県議会議員の任期満了により5月1日から新議員の任期となる。自民党県議団を筆頭会派とする県議会知事与党会派において、次期正副議長や各委員会正副委員長などの人事について水面下で話が固まりつつあるとみられる。

 今回の県議選で、会派所属議員が複数落選した緑友会は解散の可能性が取り沙汰されている。改選前、11人の議席を有した緑友会だが、4人の現職が落選した。

 会長代行を務める吉武邦彦氏(宗像市)、副幹事長・安部弘彦氏(遠賀郡)同じく副幹事長・小河誠嗣氏(うきは市)、田中大士氏(福岡市西区)の4人である。なかでも吉武氏は、民主県政県議団が緑友会に副議長ポストを譲ったことで、次期副議長ポストに就くことが内定していた。

 現有議席は11から7へと減らし、副議長に内定していた吉武氏が落選したことで会派内の求心力低下は明らかである。関係者によると同氏は会派のまとめ役であったという。

 もともと会派会長・井上忠敏氏(小郡市・三井郡)は、古賀誠自民党元幹事長の筆頭秘書を務めた人物で、緑友会に出向後も自民党福岡県連副会長の職にある。古賀氏と蔵内勇夫・県連常任相談役との確執のなかで、微妙な立場に置かれていた井上氏は緑友会に一時出向というかたちとなっていた。今回を最後に、次は出馬しないということで、自民党県議団への復帰が認められたという。

 緑友会は名称からわかるように、緑すなわち農業を意味し、JA(農協)の政治団体である農政連系の会派である。朝倉市長・林裕二氏や、2018年に逝去したみやま市長・西原親氏、八女市長・三田村統之氏も県議時代、緑友会に所属していた。ただ、緑友会は、県議会において、自民党員だが選挙区事情で自民党県議団に入れない議員が所属するいわばスポーツチームに例えるなら2軍の位置づけであった。

 今回の選挙で行橋市選挙区から立候補した元職の岡田博利氏は、現職時代、緑友会に在籍したが、旧ゼンセン同盟(現・UAゼンセン)の出身で、労働組合の連合に近い議員も在籍していた。

 また、今回も再選した柳川市選出の椛島徳博氏は、旧民主党の古賀一成元衆議院議員や現在、立憲民主党所属の参議院議員・野田国義氏の秘書も務めた経歴をもち、連合福岡南筑後地域協議会議員懇談会メンバーであり、自治労などの推薦も受けていた。

保守分裂選挙による自民党との確執

 福岡県議会においては、知事与党は、自民党県議団、公明党、それと立憲民主党と国民民主党と社民党からなる民主県政県議団、そして緑友会の4会派であり、議会運営に際して会派間の調整が行われるのが通例である。ところが、今回の県議選では、公明党が県南の筑後市・八女市八女郡・柳川市において推薦を出さず、対抗馬を推薦し応援したことに対して自民党県議団がかなり反発していることが伝わっている。

 なかでも県政の重鎮、蔵内勇夫氏は、過去20年の当選がいずれも無投票であったため、20年ぶりとなる今回の選挙戦では、一時、新人で筑後市元副市長・北島一雄氏に敗北する可能性すら噂された。公明党のみならず、古賀誠・元自民党幹事長も水面下で北島氏を後押ししたともいわれ、まさに生きるか死ぬかの負けられない選挙戦であり、筑後市を二分する大激戦となった。筑後市の隣、八女市八女郡選挙区(定数2)においては、三つ巴の戦いとなるなか、福岡県農政連が公認する栗原悠次氏を公明党が推薦し、古賀氏が後援会最高顧問として支援した。柳川市でも、公明党は自民党公認で元柳川市議の立花純氏ではなく、緑友会の椛島氏を推薦するなど、自民党を揺さぶる動きに出た。

 結果的に保守分裂選挙となった県南の八女市八女郡と柳川市における緑友会候補の動きが、意図せずにせよ会派存続の危機につながったことは間違いないだろう。

(つづく)

【近藤 将勝】

(後)

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