2024年07月16日( 火 )

李強中国総理のチャレンジ、国務院は「執行役員」に

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人民大会堂 イメージ    中国の国務院は、李強新総理が誕生した後に機能や地位が変化している。これまでは、共産党総書記が党を、総理が政府を管理していたので、「二頭立て体制」とも言われた。江沢民総書記と朱鎔基氏総理のころは「江・朱体制」と呼ばれ、胡銷濤総書記と温家宝総理のころは「胡・温体制」と呼ばれていた。そして2012年、習近平氏が総書記になった後に13年に李克強氏が総理となり、「習・李体制」となったが、この呼び名はすぐに使われなくなり、習近平氏が共産党と国家の中心になった。しかし政府については基本的に李克強総理が担当しており、政策を決めて実行する際に、党と政府で意見が合わないという事態も発生した。

 習近平氏が浙江省の書記であったころに同省の秘書長を4年間務めた李強氏は、「習近平思想」の一番の理解者で実行者となった。それゆえに、今回の総理選出で18年ぶりのコンビ再結成となり、2人が中国のナンバー1、ナンバー2となったのである。

 李強氏はもちろん、「習近平氏を核心とする共産党中央がすべてを指導」との本筋をアピールするために国務院の地位を後退させる必要があることを知っていた。このため、李克強氏のころにつくられた「国務院活動規則」が先ごろ改訂された。

 2023年3月17日に行われた国務院の第1回全体会議で、改訂版の 「国務院活動規則」が採択された。2018年当時の64箇条か条から43箇条に削減されており、主な改訂内容は以下の通りである 

(1)、総則
 1、「国務院の活動の指導思想は、習近平同志を核心とする共産党中央の力強い指導のもと、中国の特色ある社会主義という偉大な旗を掲げ、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論、三つの代表という重要な思想、科学の発展観、習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想を指導とすることである」 

 この部分が、「国務院の活動は習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想を指導とし、共産党中央の権威や集中的に統一した指導を断固として維持し、第二十回共産党大会の精神や党中央の意思決定を全面的に徹底実行する」に改められた。

 2、「国務院の活動指針は、民のために政治をし、法に沿って行政をし、事実に即し、民主的に公開し、着実で清廉であること」が削除された。

 そして、「国務院の活動メンバーは旗印を鮮明にして政治を行い、習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想で頭を武装し、指導を実践し、活動し、『2つの大局』を胸に抱き、『国の大者』を胸に刻み、思想面、政治面、行動面で習近平同志を核心とする党中央と
の高度な一致を維持するよう努め、政治的判断力、政治的理解力、政治的執行力を常に高め、党の指導を政府の活動の全プロセス、各分野に徹底実行すること」が追加された。

 3、「政府機能を全面的に正しく履行する」が削除された。

国務院は習近平総書記の指示に対し、完全かつ忠実に従うこと

 そして、党の指導を堅持する2項目の「活動原則」が追加された。「党中央の意思決定や手配を全面的に実行する。党の指導する経済や社会の発展体制や仕組みを堅持、整備し、党中央の重大な意思決定や手配を実行する体制を整え、伺う報告制度を健全化し実行し、'重大な意思決定、重大事項、重要な状況は速やかに党中央に報告する」とされている。

 4、「国務院のメンバーは、各項の活動紀律を厳格に守り、党中央、国務院の決定を断固として実行し、党中央、国務院の決定に背く発言や行為をしてはならない。国務院の指導部が視察や調査をしたり、会議や活動に出席したりする際は、中央の規定や要求を厳格に実行し、同行者を減らし、接待活動を簡略化し、模範的なニュース報道をすること。国務院の指導部は、著作や演説の単行本を公開出版せず、お祝いの手紙やメッセージを送らず、記念の署名やタイトル書き、序文書きをせず、特別な場合は関連規定を厳格に守って届け出ること。国務院のメンバーが国務院を代表して演説や文章を発表する際、個人で署名文章を発表する際は、関連規定を厳格に守って実行すること」が追加された。

 改訂版の中身として、以下4つの特徴がある。

1、国務院は習近平総書記の指示に対し、完全かつ忠実に従うこと。
2、重大な意思決定、重大事項、重要な状況は速やかに党中央に報告する。
3、国務院指導者は著作や演説の単行本を公開出版しない。
4、国務院のメンバーは、党中央、国務院の決定に背く発言や行為をしてはならない。

 これらの特徴から、国務院はこれまでのような政府の最高管理機関ではなくなり、共産党中央の政策実行部門、つまり中国政府の「執行役員」に成り下がったことがわかる。

 共産党中央に対する国務院の地位が改まったことで、政策面で両者が一致しないという事態もなくなるだろう。中国の発展の事情を考えれば、決して悪いこととはいえない。


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