統一教会の聖地・清平にて合同結婚式・新施設披露式典を取材
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世界平和統一家庭連合(旧・統一教会)が7日、教団の“聖地”である韓国京畿道清平(チョンピョン)で合同結婚式と新施設披露式典を開いた。世界各国から約2,600人が参加し、うち約550人が日本人。これに加えて、都内で約250人の日本人がリモートで参加したという。
ソウル中心部から約50㎞の最寄り駅「清平」から会場の「清心平和ワールドセンター」に向かうと、道の両脇に大型バスがずらりと並んでいる光景が現れた。すぐに会場に到着、敷地入口に歩いていくと、警備員が「日本のメディアは撮影できません」と取材規制(妨害)をしてきたが、「日本人信者は入っている」と主張して制止を突破。石造りの階段を駆け上がっていくと、そこが同センターだった。
統一教会問題を追い続けているジャーナリストで、韓国取材で一部行動を共にした鈴木エイト氏から「目をつけられると付けまわられる。先に湖畔の教団施設に行くといい」と聞いていたので、ここでは屋台が並んでいた会場周辺や眼下の人工湖(清平湖)の撮影だけに止め、会場内への突入や新郎新婦への声かけは封印した。
日本の報道関係者の取材を拒否する一方で教団は、合同結婚式の模様を信者向けサイトで配信。創始者・文鮮明の妻である韓鶴子総裁が「天一国が目指す理想の家庭を完成させることを約束しますか」と問いかけて参加者が「はい」と答える場面や、韓総裁自身がマイクを握って祝福の歌を披露する場面もあった。
会場内では取材不可だったため、まずは隣の教団関連病院や湖沿いのクルーズ船基地や関連施設を撮影し、湖畔周辺の山道をたどっていく巡礼コースも踏破し終えた後、取材規制(妨害)リスクの高い新郎新婦への直撃取材を開始した。タキシードとウェディングドレス姿の2人組を見つけては「合同結婚式の感想を一言」「日本では問題になっていますが」などと聞いていったのだが、意外なことに4組中3組が日本人同士のカップルだった。「合同結婚式に参加する日本人女性の9割が韓国人男性と結婚」という情報を得ていたので、今回の合同結婚式では日本人同士のカップルの割合が以前よりも激増した可能性が高いことを実感した。
帰りのソウル行きのバスがなかなか来ず、タクシーを相乗りした日本人の女子大生信者は次のように話す。「今日、合同結婚式をあげた私の姉も結婚相手は日本人です。『日本人女性の9割が韓国人男性と結婚』というのは一昔前の話ではないですか。合同結婚式のやり方は変わっています。いまは一定の交際期間を経て結婚していて、交際期間中に断ることができます。私の姉もいい出会いをしたと言っていました」。
そこで私は、カバンのなかから冠木結心著『カルトの花嫁――宗教二世 洗脳から抜け出すまでの20年』を取り出して概略を説明。暴力的で酒浸りの問題多き韓国人男性と2度合同結婚式をあげた後、耐えられずに子どもを連れて帰国した元日本人妻の話を紹介したところ、女子大生信者は「そういう話は最近聞いたことがありません」と反論した。
たしかに教団は「マッチングサポーター制度」に移行したと強調。現在は、まず信者である両親や教会の担当者が相手を紹介、家族ぐるみの交際をしたうえで、最終的に合同結婚式へ参加するか否かを決めるプロセスになっているとHPで説明している。
声かけをした3組の日本人カップルのうち、1組は「話すことはない」と取材拒否だったが、残り2組は「安倍元首相銃撃事件で統一教会問題が報道されましたが」などと聞いても、「合同結婚式に問題があるとは思っていません」と主張。「何が問題なのですか」と逆に質問をしてくる新郎もおり、後ろめたさを感じているようにはみえなかった。
1組だけ日本人女性と韓国人らしき男性とのカップルを見かけ、声をかけ質問をしたが、一言も答えてもらえなかった。
男性信者 おめでとうございます(英語)
韓国人らしき夫 ありがとうございます
同信者 マンセー(万歳)
カップル マンセー
同信者 報道の人だから気を付けてください──(横田)今日の結婚式について一言
カップル 無言のままバスに乗り込む
女性スタッフ ダメなのですけれども──感想をお聞きしたい
同スタッフ 行っていい(バスに乗り込んでいい)
──感想をお聞きできないですか
同スタッフ ここは私有地なので入ってもらったら困るのですが・・・
ただ、現在の合同結婚式では日本人女性と韓国人男性のカップルが激減し、以前のような問題がなくなったとしても、過去に合同結婚式をあげた日本人妻の人権問題(生活苦など)は残っていることはいうまでもない。
午前10時からの合同結婚式に続いて、午後から新施設「天苑宮」の奉納式(披露式典)が開かれた。坂道を歩いていくと、ここでは中年の女性信者が車に乗せてくれ、入口前に到着したが、ここでもスタッフの取材規制(妨害)に遭い、会場での取材はできなかった。
総工費500億円とされる天苑宮は、山中に現れる白い巨大な神殿。披露式典の様子は信者向けサイトで配信され、終了間際に打ちあがった花火は外にいても確認することができた。
5月3日からは関連団体「UPF(天宙平和連合)」主催の「ピースサミット」に開かれ、韓総裁が挨拶。世界各国の政治家ら約1,000人が参加したという。
トランプ前大統領がビデオメッセージで「多くの人々が政府ではなく全能の神から与えられた権利と自由、尊厳によって祝福された存在であることを信じています」と挨拶する映像が映し出される場面もあった。
さらに、トランプ政権で国務長官を務めたマイク・ポンペオ氏は現地で参加し、韓総裁を称賛したうえで、教団への批判を左翼思想の産物と述べたのだ。
「韓鶴子総裁の平和への取り組みは私をはじめたくさんの人々にとって大きな祝福になりました。韓鶴子総裁は宗教の自由のために常に戦ってこられました。世界の各地で多くの人々が韓総裁を誤解しています。左翼の思想のせいでたくさんの攻撃を受けています。日本で攻撃されています」(教団配信動画より)。
しかし、ここでも取材規制(妨害)は徹底していた。受付で会場内を取材したいと申し出ても「事前登録がないとダメ」と拒否された。日本語が話せるスタッフとの押し問答は以下の通りだ。
日本語が話せるスタッフ 悪い報道をするところは多分入れない
──良い報道をするところは入っているのですか
同スタッフ 分からない
合同結婚式の2日前(5日)、仁川空港で合同結婚式参加者がバスに乗り込んだ時の対応も同じだった。鈴木氏もいたが、露骨に撮影の妨害をしてきた。そして警察に通報されて取り調べを受けることにもなった。ここでの押し問題は以下の通り。
──(横田)合同結婚式で被害者が出ているじゃないですか。人権侵害問題でしょう。MBCの特集番組を見ていないのですか。合同結婚式で被害者が出ているじゃないですか
日本語が話せるスタッフ 無言
(警察に通報された後)
同スタッフ 警察官なのですけれども
警察官 (韓国語で聞き取れず)
横田 韓国語は分からない
日本語が話せるスタッフ いま撮影されているのは法律的にダメなので
幸い短時間で解放されたが、教団の取材規制(妨害)は一貫していた。過去を含めた合同結婚式被害者の調査や救済制度(相談窓口設置)や新施設の原資となったとみられる日本人信者の高額献金など、統一教会問題は消え去ったわけではない。今後も教団動向を追っていく必要がある。
【ジャーナリスト/横田 一】
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