食安保、製造安保 両立の見本をみた(2)
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中国人の強さに学ぶ
1840年のアヘン戦争の敗北は清王朝の脆弱さを暴露した。その無様さを目撃した西欧列強=イギリス・フランス・ドイツ・ロシアは、一気呵成に強引に、植民地化を推進した。清王朝はアヘンそれ自体に敗れたのではない。アヘンを国内に拡販する役割を担った裏切り者の中国人に滅ぼされたのである。純粋の中国人からすれば、清王朝は侵略者であるのだから、それも当然だろう。しかし、そんな光景を目の当たりにしてなお、強かさを失わない中国人には舌を巻く。
TSMC(台湾積体電路製造)のオーナーも根っこは中国人である。台湾で基盤をつくり、人件費が安い中国市場に自社の将来を託して大陸進出を図った。この読みは的確に当たり、世界に君臨する企業となった。ところが習政権が長期におよぶようになって、TSMCの経営陣は「儲けすぎると押さえつけられるリスクが高まった」と判断した。さらに、米中が経済戦争に発展する近未来に「両方と仲良くする道は不可能。立場を鮮明にしないといけない。どちらの陣営を選択するべきか?」と自問自答したと思われる。
結果、「米国とスクラムを組んだ方が得」と判断した。「祖先は中国人だから中国と組む」という情緒的な勘案をすることは1%もない。「世界市場で活躍できる可能性はどちらと組んだ方が確実か」という動機しかないのである。米国では最先端工場の建設にも着手し始めた。投資額5兆円という説も流れている。習国家主席にいわせるなら「売国奴」となる。
TSMCだけではない。中国国内に進出していた台湾企業が他国へ移転する動きが目立つ。中国の経済発展の源は、「世界の工場」を引き受けたことにある。要するに安い人件費でモノを製造できていたからだが、このメリットが薄れた。台湾人(中国と同じ民族)経営者はドライ。儲からなくなったら引き上げることに、負い目はまったく感じない。この強かさを身につけないと、日本の未来はおぼつかない。
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