2024年12月23日( 月 )

半導体市場に活気をもたらすAI半導体(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

AI半導体の登場背景(つづき)

AI半導体 イメージ    AIが未来のIT産業の地形を変えるコア技術として注目が集まるにしたがい、AI半導体に各社から熱い視線が注がれるようになった。半導体企業であるクアルコム、エヌビディア、インテルはもちろん、Google、アマゾン、アップル、テスラなどのビックテック企業も、AI半導体の開発に積極的である。

 一部のビックテックは自社で専用チップを開発する方向で動いている。テスラが自律走行に特化したAIを開発している、というように。このような状況にあって、市場調査会社のガートナーは、AI半導体の市場規模は2023年に343億ドル、2026年には861億ドルに成長すると予測している。

AI半導体市場をリードするエヌビディア

 皆さんはエヌビディアという会社名を聞いたことがあるだろうか。インテルなら誰でも知っているだろうが、現在世界最大の半導体企業は実はエヌビディアである。

 エヌビディアはもともとゲームなどに多く使われるGPUの開発会社である。同社のGPUの世界市場シェアは69%だが、AI半導体の世界シェアは約90%にものぼる。昨年の後半から半導体市場が落ち込んでいるなか、チャットGPTのブームを受けて、エヌビディアの快進撃はとどまるところを知らない。

 同社の発表によれば、今年の第1四半期の売上高は71億9,000ドル。直前の四半期に比べ、売上高は19%伸びており、純利益も20億4,300万ドルで、前年同期比で26%も伸長している。エヌビディアは今後市場が大きく成長されることが予想されるAI分野に強みをもつ。半導体の性能だけではなく、エコシステムを構築できたことが成功の要因として挙げられている。

 チャットGTPの採用が増えれば増えるほど、エヌビディアの半導体の需要は伸びていくことになる。加えて自律走行の領域でもエヌビディアの半導体は欠かせないという。同社の顧客数は現在4万社以上に上り、同社の時価総額はサムスン電子の3倍以上の1兆ドルが目前である。ちなみに、時価総額が1兆ドルを上回っている企業といえば、アップル、マイクロソフト、Google、アマゾンなど。エヌビディアが1兆ドルを達成すれば、半導体企業としては初となる。

 エヌビディアは1993年に設立された企業であるが、たとえばチャットGPTには数千個のGPUが必要になるというのだから、同社の株価が右肩上がりになるのも納得が行く。そもそもAIは大量のデータ処理を前提するのだから、データセンターのサーバーへの需要も伸びていくのも間違いない。半導体業界は、景気の低迷と需要不足で在庫が増え続けていたところ、エヌビディアが牽引しているAIブームの到来で、これに密かに期待を寄せている。たとえば、サムスン電子は第一四半期末時点で約32兆ウォン(約3,200億円)の在庫を抱えていたが、最近の動向に在庫解消の光明を見出し、市場の推移に注目している。AIのデータには画像・動画といった非定型データも多いため、ストレージやサーバー需要も伸びていくことになるだろう。

 専門家はAI半導体が将来、半導体の需要の約3割を占めることになると予測している。AI半導体をめぐる競争は、今後激しさを増すと思われる。

(了)

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