2024年11月28日( 木 )

「原発を止めた裁判長」が語る

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のメルマガ記事を抜粋して紹介する。今回は、「岸田政権が進める原発再稼働政策では、いつフクシマ原発事故が再現されてもおかしくない状況だ」と訴えた6月12日付の記事を紹介する。

 高齢のドライバーがブレーキとアクセルを踏み間違えて乗用車を暴走させる。歩道を歩行中の親子が犠牲になる。かけがえのない命が奪われる。平穏で幸福な家庭が一瞬にして破壊される。この高齢のドライバーが、事件についての責任処理もせずに、再び自動車運転を始めるとしたら人々はどう反応するのだろうか。

 2011年3月11日。東京電力福島第一原子力発電所が過酷事故を引き起こした。世界の原子力事故のなかで最悪の事故。

 国際原子力機関(IAEA)と経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)は1992年に国際原子力事象評価尺度(INES)の採用を各国に勧告した。このなかで、原子力施設等の異常事象や事故は、その深刻度に応じて7つのカテゴリーに分類された。各国は異常事象や事故をこの尺度を使って深刻度を判定して発表する。

 東京電力福島第一原子力発電所事故はその放射性物質の放出量から最も深刻な事故であることを示すレベル7と判断された。これに匹敵する原子力事故は1986年に発生したウクライナのチェルノブイリ原子力発電所事故のみだ。

 同尺度は0から7までの8段階に区分されており、レベル7は最悪の原子力事故を示す。フクシマ原発事故の原因は特定されていない。津波がフクシマ原発を襲ったことは事実だが、津波が原発を襲う前に地震の揺れで原発が損傷して電源を喪失した可能性も否定されていない。

 日本政府は2011年3月11日に原子力緊急事態を宣言した。この原子力緊急事態宣言の下で原発周辺では一般公衆に対する高線量被曝が強要されている。

 一般公衆の被曝上限は法律でどのように定められているか。ICRP(国際放射線防護委員会)は一般公衆の健康を守るための基準である公衆被ばくの線量限度を、年間で1ミリシーベルトにすることを勧告した。この勧告に基づき、日本では「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」に基づく「核原料物質又は核燃料物質の製錬の事業に関する規則」により、一般公衆の被曝上限を1ミリシーベルトと定めている。

 ところが、「原子力緊急事態宣言」を根拠に、この法律の適用が停止されている。日本政府が容認している一般公衆の被曝上限は、現在20ミリシーベルト。20ミリシーベルトの被曝を5年続けると累積線量は100ミリシーベルトに達する。100ミリシーベルトの被曝はがん死リスクを有意に0.5%高めることが科学的知見として確認されている。

 フクシマ原発事故から12年が経過した。年間20ミリシーベルトの被曝を受けていれば累積線量は240ミリシーベルトに達する。

※続きは6月12日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「「原発を止めた裁判長」が語る」で。


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植草一秀の『知られざる真実』

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