2024年07月17日( 水 )

与野党大逆転可能性が浮上

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のメルマガ記事を紹介する。今回は、「小沢一郎氏が野党候補一本化を推進、リベラル勢力が優位に立つ可能性がある」と論じる6月17日付の記事を紹介する。今回は全文を掲載している。

 立憲民主党は岸田首相が今国会で衆院解散をしないことを確認して内閣不信任決議案を提出した。
 岸田首相が解散の可能性を維持していれば内閣不信任案を提出しなかった可能性がある。完全に腰の引けた対応。これでは誰からも相手にされない。

 内閣不信任案に共産党は賛成したが国民民主党は反対した。維新も同じ。与党サイドに自公維国が位置する。立憲民主党内に内閣不信任案提出に反対する勢力が存在した。立憲民主党は政党の体をなしてない。これが日本政治停滞の最大要因だ。

 立憲民主党の迷走を誘導しているのが連合。連合を支配するのは6産別。電力、電機、自動車、鉄鋼、機械・金属、繊維・流通等の6つの産業別労働組合組織。かつての同盟の系譜を引く大企業御用組合が中心。同盟は1960年に創設された民社党の支援母体として創設された。

 民社党は革新勢力を分断するためにCIAの資金援助で創設された。民社党、同盟と深い関係を有したのが国際勝共連合だ。同盟系の富士社会教育センターに設置された富士政治大学校という研修機関。第二代理事長は松下正寿氏。松下正寿氏は立教大学教授を経て民社党参議院議員に当選。

 松下氏は世界平和統一家庭連合(旧・統一協会)関与団体の日韓トンネル研究会の呼びかけ人。また、旧統一協会創設者の文鮮明氏と深いかかわりをもった。松下氏は旧統一教会系の世界平和教授アカデミー初代会長、旧統一協会の機関誌「世界日報」論説委員を務めた。連合は旧総評、旧同盟などが合流して創設されたナショナルセンターだが、現在の実権は旧同盟系の6産別が握っている。

6産別に所属する芳野友子氏が現在の連合会長。芳野氏は富士政治大学校で反共理論を叩き込まれたと言われている。この連合が立憲民主党の右旋回を誘導した。2017年10月総選挙の際に創設された立憲民主党は旧民主党=旧民進党のリベラル勢力が純化したものと理解された。

 立憲民主党が野党第一党に躍進できた最大の要因は共産党の選挙協力にある。共産党を含む野党共闘が立憲民主党議席を伸長させた最大要因になった。共産党を含む野党共闘が強化されれば、2009年8月総選挙のように自公が野党転落する可能性が高まる。

 この事態を恐れて、野党陣営の分断工作が進められた。連合が立憲民主党に介入して共産党との選挙協力を攻撃した。2021年10月衆院総選挙で立憲民主党代表の枝野幸男氏は次のように述べた。

 「『野党共闘』というのは皆さんがいつもおっしゃっていますが、私の方からは使っていません。あくまでも国民民主党さんと2党間で連合さんを含めて政策協定を結び、一体となって選挙を戦う」

 野党共闘の対象から共産党、社民党、れいわ新選組を除外した。共闘の対象は国民民主党と連合であると明言した。この枝野発言で野党共闘支持の立憲民主党支持者が一斉離反した。その結果、立憲民主党は17年総選挙で惨敗。枝野氏は引責辞任したが、後任・泉健太氏は右旋回を加速させた。

 その結果、2022年参院選で立憲民主党はさらなる大惨敗を演じた。現在の執行部は自公維国の与党勢力に潜り込みたいと考えているのだろう。しかし、このスタンスが提示される限り、立憲民主党の再興はない。小沢一郎元民主党代表などが次期衆院総選挙に向けて「野党候補の一本化で政権交代を実現する有志の会」を立ち上げた。

 共産党を含む野党共闘再建を図るもの。立憲民主党はこれに賛同するグループとこれに賛同しないグループに分離されるべきだ。1つの政党内に水と油が同居してうまくゆくわけがない。小沢氏が立ち上げた運動が立憲民主党の創造的解体を誘導すべきだ。

 維新は総選挙で自公と選挙協力しない方針を示している。信用することはできないが、背後にCIAの思惑がうごめく。CIAは日本を自公と第二自公の二大勢力体制に移行させたいと考えていると見られる。自公と第二自公は大差のない勢力。

 共通するのは対米隷属、戦争推進、原発推進、消費税増税推進、新自由主義推進だ。二大政治勢力体制が自公と第二自公になれば、日本の対米隷属は揺らぐ可能性が遮断される。CIAの基本戦略はリベラル勢力を弱体化させると同時に維新に代表される「隠れ与党勢力」を大宣伝し続けること。

 維新が伸長した最大背景がメディア大宣伝。この背景があり、維新伸長が喧伝されているが、この戦術が成功するかどうかは未確定。小選挙区制度で維新が自公候補と競合する候補者を擁立することは大きな意味をもつ。

 ここにリベラル勢力がただ1人の候補者を擁立すると、リベラル勢力候補が優位に立つ可能性があるからだ。小選挙区制度は当選者をただ1人生み出す制度。自公維国から候補者を複数擁立すれば投票が分散する。

 このとき、リベラル勢力が候補者をただ1人に絞り込めば、リベラル勢力の候補者が勝利する可能性が高まる。千載一遇のチャンスになる。この点を私は強調してきた。このタイミングで小沢一郎氏が野党候補一本化を推進する有志の会を立ち上げた。

 もちろん、野党共闘の対象に共産党が含まれる。CIAが背後にいると見られる連合が誘導してきた「反共路線」=「勝共路線」は野党共闘再構築方針と相容れない。右旋回グループの現在の立憲民主党執行部を自公維国側に切り離して、野党共闘推進勢力が立憲民主党実権を握るのがあるべき方向。対米隷属勢力=隠れ与党勢力は自公維国グループに合流するのが適正だ。

 現在の状況で立憲民主党が再浮上する可能性は存在しない。「隠れ与党」路線を鮮明にするなら、立憲民主党が国民民主党と別の政党でいる必然性がない。両者は合流すべきだ。

 2017年10月総選挙で旧民主党=旧民進党が分裂したとき、立憲民主党がリベラル勢力、国民民主党が隠れ与党勢力とみなされ、隠れ与党勢力の国民民主党は弱小政党に転落した。この弱小国民民主党と一体の動きを示したのが連合。

 ところが、国民民主党が弱小になり、リベラル勢力としての立憲民主党が躍進したため、CIAは連合を動かして立憲民主党の右旋回を誘導したと考えられる。枝野幸男氏に何があったのかは不明だが、恐らく何かがあったのだと思われる。

 結果として2021年10月総選挙で枝野氏は野党共闘を否定し、明確に右旋回した。しかし、その結果として立憲民主党は完全凋落コースに嵌り込んだ。問題は、この状況下で立憲民主党内リベラル勢力の動きがよく見えないこと。立憲民主党はリベラルと隠れ与党に分離・分割されるべきだ。

 小沢一郎氏が掲げた野党候補一本化方針はリベラル勢力に支持され、隠れ与党勢力に支持されないだろう。このことが立憲民主党解体の原動力になる。解散が先送りされたことで戦術的対応の時間的余裕が生まれた。この時間をフルに活用すべきだ。

 自公維国サイドが複数候補擁立の動きを強めるなか、共産党を含む野党候補一本化の流れが強まれば、野党が一発大逆転勝利を得ることも不可能でなくなる。岸田首相の解散先送りが大どんでん返しにつながる可能性を注視する。そのために立憲民主党の創造的解体が必要不可欠だ。


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