2024年12月22日( 日 )

【第一交通】タクシー=ローカル事業で地域に貢献(後)

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 コロナ禍の影響を大きく受け、2期連続で最終赤字となっていた第一交通産業(株)だったが、5月に発表された2023年3月期決算ではついに黒字転換をはたし、最終利益は21億円を計上した。同期は燃料費高騰の影響を受けたものの、コロナ禍の行動制限が解除されたことで旅客需要が回復したことなどから、3期ぶりの黒字転換となった。今期は売上高1,000億円の大台復活を見込む同社の田中亮一郎社長に話を聞いた。

タクシー事業を通じて、地域を元気に

 ──全国一の保有台数を誇るタクシー事業についてはいかがですか。

 田中 タクシー事業は以前よりM&Aや事業譲渡などでエリアや規模の拡大を進めてきており、現在、全国34都道府県に約200カ所の営業所を構え、約8,200台のタクシーを保有しています(※バスなどを含めると約9,000台)。

 当社の営業所がないエリアに対して、M&Aではなく業務提携でカバーしていこうという「No.1タクシーネットワーク」も機能しています。このネットワークは現在、全国47都道府県・690社以上・約4万台まで拡大しており、加盟事業者とのチケット相互利用・配車協力、資材調達や条件共有、さらには車両の共同購入システムなどを行うことで、地域交通活性への取り組みをともに推進しています。さらに全国の71市町村・294路線(23年3月末現在)で「おでかけ乗合タクシー」を展開して交通空白地域の解消にも努めています。

 そもそもタクシー事業というのは、地域に密着したとてもローカルなものです。タクシー事業には、国交省が定める営業区域というものがあり、タクシー会社は原則として国交省から許可を受けた区域でしか営業はできません。つまり構造上、「北九州がうまくいかないから東京に行く」というわけにはいかず、各市町村が元気にならないことには、自分たちの事業も成り立たないということでもあります。そうした思いで、「ママサポートタクシー」や「子どもサポートタクシー」「救援事業・便利屋タクシー」「お墓参りサポートタクシー」などのタクシーを通じたさまざまな地域を元気にするサービス展開を通じて、自社の発展にもつなげていきたいと思います。

第一交通のタクシーによるサービス

福北連携も進めながら、北九州のポテンシャル生かす

 ──北九州商工会議所の副会頭も務めておられますが、福北連携についてはどのようにお考えですか。

 田中 私もよく津田純嗣会頭((株)安川電機・特別顧問)と話すのですが、北九州市と福岡市はもっと連携をしていければいいなと思っています。せっかくこれだけ近い距離に2つの政令市があるわけですから、福岡の良いところや良い仕組みを取り入れる一方で、北九州の良いところや良い仕組みを福岡にもっていく。そういう連携を図りながら、もっと福岡の人に北九州へきてもらいたいですし、北九州の人たちにももっと福岡へ行ってもらいたいですね。たとえば、少し前に話題になりましたが、福岡空港の“門限”を過ぎた旅客機を北九州空港に代替着陸させることも連携の1つでしょうし、高齢者の多い北九州の介護・福祉のノウハウなどを福岡にもっていくことも1つの手でしょう。新市政はまだ始まったばかりですので、政策として具体的なものは出ていないようですが、今後の展開に大いに期待しています。

 ──最後に、北九州のポテンシャルについての考えをお聞かせください。

 田中 当社は全国に営業所があるため、仕事柄いろいろなエリアを見てきましたが、北九州は決して元気がない都市だとは思いません。減少傾向とはいえ人口もまだ約92万人いますし、北九州商工会議所の会員数もここ10年は右肩上がりの状況で、今年3月には会員数が1万社を超えました。北九州空港の滑走路も3,000mに延長されますし、これから「下関北九州道路」も実現していけば、都市力はさらに上がっていくでしょう。

 たしかに全国平均と比べて高齢化は進んでいますが、ある意味で高齢化に対する知見やノウハウも全国に先駆けて蓄積しているわけです。そうしたポテンシャルをうまく活用できれば、北九州はもっともっと力を発揮していけるのではないでしょうか。

 今後は、先ほどの福北連携も進めながら、北九州にはもっと元気になっていってほしいですね。そして当社も、地域のお客さまのより快適な生活環境を支えるLANS(ローカル・エリア・ネットワーク・サービス)カンパニーとして、北九州のさらなる発展に貢献していきたいと思います。

(了)

【聞き手:永上 隼人/文・構成:坂田 憲治】


<プロフィール>
田中 亮一郎 (たなか・りょういちろう)

1959年4月、東京都出身。青山学院大学卒業後、82年4月に全国朝日放送(株)(現・テレビ朝日(株))に入社。94年7月に第一交通産業(株)に入社し、取締役、専務、副社長を経て、2001年6月に代表取締役社長に就任した。北九州商工会議所副会頭や全国ハイヤー・タクシー連合会副会長など数々の要職も務める。


<COMPANY INFORMATION>
第一交通産業(株)

代 表:田中 亮一郎
所在地:北九州市小倉北区馬借2-6-8
設 立:1960年6月
資本金:20億2,755万円
URL: https://www.daiichi-koutsu.co.jp

(前)

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