立地ポテンシャルを最大限に引き出し、持続可能なまちづくり進める古賀市
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古賀市長 田辺 一城 氏
交通の要衝の利を生かし、先人が尽力して発展
福岡都市圏の北東部に位置する古賀市は、市の西側エリアには住宅地が形成され、その真ん中あたりを南北にJR鹿児島本線が通って3つの駅があるほか、国道3号と国道495号、主要地方道・筑紫野古賀線などの幹線道路が走り、さらには九州自動車道の古賀ICもあります。こうした交通アクセスに恵まれた立地に加えて、海と山に挟まれて自然環境が豊かなこともあり、これまで古賀市はベッドタウンや工業団地、物流拠点などの多様な発展を遂げてきました。
なぜ、古賀市がこのような状況になっているのかを一言でいうと、地勢的にラッキーだということです。ここに道がなぜできるのかというと、行き交うのに便利だからです。古賀市は古代から人が行き交う交通の要衝で、朝鮮半島との交流を示す国の史跡・船原古墳があるほか、江戸時代には唐津街道の青柳宿も置かれています。そして近代に入ると、国道3号が通り、国鉄が通り、九州自動車道のICまで置かれました。ここまでは、地勢的に行き交うのに便利だった場所だからということで、いわば偶然です。
ですが、この偶然を先人の皆さまがうまく生かし、都市計画をしっかりとつくって企業の皆さんが立地しやすい状況をつくることで、市内に工業団地が形成され、企業の集積がなされました。これは先人の皆さまの尽力のおかげであり、偶然の産物ではありません。
ですから、これから古賀市が持続可能なまちづくりを進めていくにあたっては、うちのまちが歴史的・文化的に交通の要衝であり、産業を基盤として発展し、働く場があるからここに住む人が出てきて、居住政策も展開しながら、今6万人規模のまちが形成されてきた―そうした経緯をきちんと認識したうえで、古賀市の特性を最大限に引き出していくこと、それが市長としての私の役割だと考えています。
市内各地で進む同時多発的な土地開発
古賀市は現在、市内各地で同時多発的な開発を進めている、かなり稀有な自治体になっています。というのも、都市計画の手続きには非常に時間がかかるのと、人口減少社会に突入している現在では、タイミングを逃してしまったら、もうチャンスが失われると思っています。もう今やらないと駄目だということで、継続的に開発を推し進めています。
例を挙げますと、まず今在家地区。ここでは、既存の工業団地である古賀工業団地を四半世紀ぶりに拡張する開発を進めていきます。その狙いは、隣接する工業団地が昭和の時代につくられたものですので、当然ながらその当時につくられた工場などは、老朽化していることが予想されます。すると、現在立地していただいている企業さんも建替えを検討されることが想定されますが、そうなってから土地を用意していては間に合いません。最悪、古賀市からの移転を選択するケースも考えられますので、そうならないよう先手を打って、受け皿となる土地を用意し続けることが行政として求められることだと考え、実行しています。この今在家地区は、そのなかで最も早くかたちが見えてくる場所で、2023年秋以降には造成工事に着手していく予定です。
続いて、筑紫野古賀線沿いの古賀グリーンパークの近くでは、物流団地の開発を想定している青柳大内田地区と、ピエトロさんの新工場ができる青柳釜田地区という2つの開発を進めています。いずれもすでに地区計画の決定を終えており、今後実際の開発が進んでいくエリアです。ほかに、古賀IC近くの新原高木地区や、今在家地区に近接する青柳迎田地区でも、開発に向けての検討を進めています。こうした開発を継続的に進めていくことで、企業誘致等の産業振興策を図り、ひいては移住・定住というところにつなげ、まちを持続可能なものにしていく──。こうしたことをしっかりと今やらないと、未来への責任が果たせないという思いで、これからもさまざまな取り組みを加速させていきます。
さらに、JR古賀駅の東口エリアを中心とした駅周辺の再開発を“一丁目一番地”に位置づけて市長就任直後から取り組んだ結果、最大の地権者であるニビシ醤油(株)さまと、19年11月に「JR古賀駅東口周辺地区における街づくりの検討に関する協力協定」を締結することができました。この協定締結をスタート地点とした中心市街地活性化に向けた具体的な動きは、今も続いています。
居住機能を強化し、住む場所の受け皿に
そして、これからの古賀市にとって一番重要なのは、何よりも居住機能の強化だと考えています。やはり福岡市近郊の都市圏に位置する自治体として、多くの方に「古賀市は暮らしやすい」「住みたい」「住み続けたい」と思っていただけるまちづくりを、さらに強化していかなければならないと思っています。
というのも、これまでは産業力強化の理念の下に企業誘致――つまり働く場の創出ということにとくに力を入れてきました。これから、各所で産業団地などの造成工事が始まり、働く場が形成されていきます。すると、職住近接を実現するため、古賀市内でも一定規模の都市開発による居住機能の強化が必要になってきます。中心市街地であるJR古賀駅周辺でも開発は進めていくのですが、ある程度の面的な、いわゆる住宅地の形成が必要だと考えており、古賀中学校の周辺にあたる新久保南地区での新たな開発を検討しています。地元地権者の皆さんのご理解・ご協力をきちんと得たうえで、国と県の理解も得て、25年度末までに、都市計画法などに基づく市街化区域の編入や地区計画の決定を終えたいと思っています。
なお現在、福岡市では「天神ビッグバン」や「博多コネクティッド」が進んでいますが、これから新たなオフィスが次々と誕生して働く場が形成されていくでしょう。そこで働く人々にとって、福岡市内に住む以外に、少し離れた古賀市に住むことも選択肢に入れてもらえるよう、しっかりと住む場所の受け皿になれるような環境整備も進めていきます。
こうした取り組みを進めていく一方で、今の古賀市を築いてきてくださった先人の皆さまのご尽力への感謝を忘れることなく、継ぐべきものは確実に継いで、そこに社会の価値観の変容を捉えた新たな発想を加え、持続可能性を高めながら古賀市を未来へとつないでいきたいと思います。
<プロフィール>
田辺 一城(たなべ・かずき)
1980年5月、古賀市出身。福岡県立福岡高等学校、慶応義塾大学法学部法律学科を卒業後、2003年に毎日新聞社入社。11年4月に福岡県議会議員に初当選し、2期務める。18年12月に古賀市長に初就任し、現在2期目。政治信条は「現場主義」と「対話」。みんなで共に進む「オール古賀」の市政運営でまちづくりを展開中。関連キーワード
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